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「霧の中の行進」
小学校の教員をしている友人の話。
宿泊学習の夜、肝試しの担当になった彼は、幽霊役として暗い山道で待機していた。
しばらくすると立ち込めてきた深い霧に、「危ないから中止になるかもな」と道路の端へ寄って様子を見ていたという。
やがて、深い霧の向こうから足音が近づいてきた。
かなり人数が多い。やはり中止になって全員で引き返してくるのだろうか。
——ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。
一糸乱れぬ足音と、ジャラ……ジャラ……と金属が擦れ合う異様な音が耳に届く。
驚かせようと息を潜めていた友人の前を、霧に包まれた『大勢の気配』だけが通り過ぎて行った。
風の音に混じって、どこか遠くで法螺笛のような低い音が響いていた気もする。
嵐のような気配が去り、しばらくすると潮が引くように霧が晴れていった。
直後、上方から「ワー!」「ギャー!」と賑やかな子供たちの声が聞こえ、何事もなかったかのように肝試しが再開された。
「あの年は生徒たちが全然驚いてくれなくて、肝試しは大失敗だったんだよね」
本物の怪異とすれ違ったことよりも、企画の失敗を心底悔しがっていた友人。
——そっち?
と、私は思った。




