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隙間奇談 ~日常の「すきま」に潜む、奇妙な短編集~  作者: 空気人形


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「下山途中」

大学生の頃の年末、実家に帰省して友人たちと集まっていたときのこと。

免許を取りたての友人が、「岐阜の山奥にいい露天風呂がある。そこで年越ししない?」と言い出し、みんなで出かけることになった。


無事に露天風呂で年を越し、初詣に向かおうと深夜の山道を下っていたときだった。

ヘッドライトの光の先、山道を一人で下っていく女性の後姿が見えた。


まだ近くの民家まではかなりの距離がある。

一度はそのまま通り過ぎたものの、こんな雪の夜道に一人で歩いているのがどうしても気になり、誰かが声をかけた。


「戻って、あの人乗せてあげない?」

「そうだね、こんなとこ一人じゃ危ないし」


そう話し合い、雪道で慎重にUターンして先ほどの場所まで戻った。


だが、さっきまで歩いていたはずの女性の姿はどこにもなかった。


車を止め、あたりを見回してみる。

ふもとまでの一本道。逃げ込むような横道も陰もない。周囲は一面の新雪だったが、女性が歩いていたはずの場所には、人間の足跡どころか何かが通った痕跡すら残していなかった。


「……狸にでも化かされたかな」


誰ともなくそう苦笑いし合いながら、私たちは逃げるように初詣へと向かった。

『隙間奇談 ~日常の「すきま」に潜む、奇妙な短編集~』をお読みいただきありがとうございます!

毎日20時に更新しておりますので、明日もぜひお越しください。



また、別作品の中編ホラー『群青の嘘 ~港の廃屋と消えた少女~』も連載中です。


『隙間奇談』とは一味違う、じっくり魅せるホラーとなっておりますので、こちらもあわせてお楽しみいただけたら幸いです!


▼『群青の嘘』はこちらから

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