「押していない」
後輩のYちゃんの家は、親御さんがとても心配性だった。
不審者が入りにくいようにと、オートロック完備・女性専用マンションの、比較的上の階にある部屋を選んで住んでいた。
ある日、学校が終わって帰宅したYちゃんは、エントランスで鍵を開けて中に入った。
すると、いつの間にか後ろに知らない女性がついてきて、一緒にオートロックをくぐり抜けてきた。
「まあ、オートロックあるあるだしな……」と特に気にせずエレベーターに乗ると、その女性も一緒に乗り込んできた。
Yちゃんは自分の階のボタンを押した。
続いてその女性がボタンを押すかと思ったが、彼女は手も伸ばさず、ただじっと立っているだけだった。
エレベーターがスーッと上がり、Yちゃんの階に到着する。
(同じ階で降りたら嫌だな……)
恐る恐る降りたが、女性は降りてこない。そのまま扉が静かに閉まり、エレベーターは再び上に向かって動き出した。
「良かった、上の階の人だったんだ」
ほっと息を吐いた。
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