「入居の条件」
友人Tの彼女、Fちゃんの下宿先の話。
駅からほど近く、建物もそれほど古くない。少し部屋は狭いが、一人暮らしの条件としては悪くない物件だ。
だが、そんな好条件にもかかわらず、その部屋は家賃が異様に安かった。
「やっぱり何か出るの? もしかして事故物件?」
尋ねてみると、Fちゃんはあっけらかんと答えた。
「たぶんね。部屋を借りる時、安くて良いところを探してもらったら『それならここですね』って紹介されたの」
「えっ、何があった場所なの? 何が出るの?」
「それは聞いてない。何かあったのは確かだし、何かが出るみたいだけど、怖いから『理由は教えないでください』って不動産屋さんに言ったの」
理由を知らないまま住むのも恐ろしいが、借りる際に一つだけ奇妙な“条件”を出されたという。
『夜21時以降は、絶対にベランダの窓を開けず、カーテンを閉め切ること。もし忘れて何か起きても、文句は言わないこと』
「……うわ、怪しすぎる。うっかり閉め忘れたことはないの?」
そう聞くと、Fちゃんはくすくすと笑いながら言った。
「一度もないよ。だってカーテンは年中閉めっぱなしだし、そもそも生活のほとんどはTの家だから。あの部屋、実質荷物置き場なんだよね」
彼女が避難していたおかげで、そのルールが破られた時に何が起きるのかは、わからないままだ。
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