「歩いてくる」
中学校の部活で、グラウンドに出て指導をしていたときのことです。
練習の合間、一人の女子生徒が「トイレに行ってきます」と言うので、私は「気をつけてね」と送り出しました。彼女は元気に「すぐ戻ります!」と駆け出していきました。
しかし数分後――校舎から、耳をつんざくような悲鳴が響き渡りました。
「ギャーーーーッ!!」
驚いて振り返ると、先ほどの生徒が顔を真っ青にして、半ばパニック状態で戻ってきます。
「どうした!? 何があった!?」
慌てて駆け寄ると、彼女はガタガタと体を震わせながら、途切れ途切れに教えてくれました。
トイレに入り、ふと奥を見ると……一番奥の個室のドアがすうっと開き、膝から下しかない両足がぬっと出てきたのだそうです。そしてその足は、足音もなくゆっくりと、彼女の方へ歩いてきたと言うのです。
それ以来、そのトイレは「出る」と噂になり、生徒たちはしばらく誰もそのトイレに近寄らなくなってしまいました。
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