「煙のない火柱」
友人家族が旅行の帰り道、高速道路を走って帰路についていたときのこと。
ふと車窓から外を見ると、高速道路沿いにある企業の敷地内で、大きな火柱が勢いよく立ち上っていた。
「おい見て! あそこ、ヤバいんじゃないか!?」
思わず助手席の妻に声をかけると、妻も「うわ、凄い火事……危なくないの?」とショックを受けている。とはいえ、周りの車は何事もないように走り去っていく。巻き込まれるのも嫌なので、アクセルを踏み込んで急いでその場を走り去った。
無事に帰宅した後、気になってネットで「高速道路 火災」「〇〇市 火事」などと調べてみたが、ニュースにもSNSにも一切情報は上がっていない。旅の疲れもあったため、「まあ、明日になればニュースになるか」程度に思ってその日は眠りについた。
しかし、翌日になっても火災の情報はどこにも出てこなかった。
それからしばらくして、例の会社に勤めている知人に会う機会があった。
「そういえばこの前、おたくの会社で火事なかった? 高速道路から見えたんだけど、大丈夫だったの?」
心配して尋ねてみたものの、知人は首をかしげるばかり。
「え? いや、火事なんて起きてないよ。聞いたこともないけど……」
見間違いなどではない。絶対に大きな火柱が上がっていたはずなのだ。
狐につままれたような気持ちで当時の光景を思い返していて、ハッと息をのんだ。
そういえば――あんなに大きな炎が激しく上がっていたのに、黒煙ひとつ出ていなかった。
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