「帰りの合図」
私が通っていたのは芸術系の大学だった。
私のいた学部はそれほどでもなかったが、学科によっては作品や技術の差に悩み、自ら人生をドロップアウトしてしまう人が定期的に出るような場所だった。
ある日の朝、登校すると校内の通路の一部が立ち入り禁止(通行止め)になっていた。
どうやら、とある校舎の屋上からダイブした人がいたらしい。
しばらくして警察の現場検証と片付けが終わり、通行止めは解除された。
だが、その日を境に奇妙なことが起き始めた。
夜遅くまで残ってアトリエで作品づくりをしていると、闇の中に「ドーーーン!」と、重く巨大なものが落ちたような音が響くのだ。
それ以来、落ちた現場の近くを通ると「見てはいけないものを見てしまう」という噂が流れるようになった。
見てしまっては堪らない。
それ以降、夜の作業中にあの「ドーーーン!」という音が響くと、私たちは黙って作業の手を止め、正面からは帰らず、そっと裏口から帰宅するのが暗黙のルールになった。
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