「天井の落書き」
近所にある、古びた地下道。
以前、道路の高架工事のために一時的に作られたもので、工事が終わった今ではほとんど使う人もいない、半ば役割を終えた場所だ。
ある日、ふとした気まぐれでその地下道を通ってみることにした。
階段を降りると、そこには昼間だというのにひんやりとした静けさが広がっていた。人影はひとつもなく、自分の靴音だけが虚しく響く。
何の気なしに通り抜けようとした、その時。
ふと不自然な気配を感じて視線を上げると――頭上の天井に、落書きがあった。
拙く、震えるような子どもっぽい筆跡で、こう書かれていた。
『こんにちは』
大人の背でも届かないような天井に、なぜ、誰が、どうやって何のために書いたのか。
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