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隙間奇談 ~日常の「すきま」に潜む、奇妙な短編集~  作者: 空気人形


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「挨拶の相手」

先生をしている友人から聞いた話。

宿泊学習の夜、イベントの「肝試し」でお化け役に扮し、山道を下ってくる生徒たちを脅かすため、途中の暗闇に隠れて待っていた時のことだ。


しばらく待つと、暗闇の先から「ザッ……ザッ……」と足音が近づいてきた。

「よし、来たな」と息を殺して身を潜めていると、音が聞こえてきたのは生徒たちが降りてくるはずの「上」からではなく、山を登ってくる「下」からだった。


暗闇の中から姿を現したのは、一人の見知らぬおばさんだった。懐中電灯すら持っていない。

驚いていると、おばさんは通り際、静かに「こんばんは」と声をかけてきた。友人も思わず「あ、こんばんは」と挨拶を返した。


それからしばらくして、今度こそ上から「きゃー!」「怖い!」と騒ぎながら生徒たちが降りてきた。

友人が物陰からバッと飛び出すと、生徒たちは「うわあぁっ!」と大悲鳴。「先生どこに隠れてたの!? 全然わからなかった!」と大盛り上がりだった。


無事に肝試しが終わり、友人は生徒たちに聞いてみた。

「うるさくするのは良いけれど、途中でおばさんとすれ違っただろ? ちゃんと挨拶したか?」


生徒たちは首をかしげた。

「え? おばさんなんて誰もいませんでしたよ」


そこは山へと続く一本道で、脇道などどこにもない。

灯り一つ持たず、生徒たちとすれ違うこともなく、あのおばさんは夜の山道のどこへ消えて行ったのだろうか。

『隙間奇談 ~日常の「すきま」に潜む、奇妙な短編集~』をお読みいただきありがとうございます!

毎日20時に更新しておりますので、明日もぜひお越しください。


また、別作品の中編ホラー『群青の嘘 ~港の廃屋と消えた少女~』も連載中です。

『隙間奇談』とは一味違う、じっくり魅せるホラーとなっておりますので、こちらもあわせてお楽しみいただけたら幸いです!


▼『群青の嘘』はこちらから

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