「精が出ますね」
私は祖母の影響で、幼い頃からお経に親しんでいた。
そのかいもあって、お盆の墓参りではお寺の住職と一緒に読経をし、大人たちから「上手だね」とよく褒められたものだった。
大人になってからは親から役目を引き継ぎ、毎年お盆を迎える前の時期に、一人でお寺へ墓掃除へ行くのが恒例となっていた。
しかし、その年はどうしてもタイミングが合わず、お盆の直前に掃除へ行くことができなかった。
仕方なく「盆の入り」当日に、慌ただしくお墓の掃除へ向かった。
黙々と墓石を磨いていると、ふと後ろから声がした。
「精が出ますね」
振り返ると、そこには数年前に亡くなったはずの「先代住職」が穏やかな顔で立っていた。
(ああ、先代もお盆だから、こうして帰って来られたのだな)
怖さや驚きは全くなかった。私は静かに心の中で、幼い頃から体に染み付いているお経を唱えながら、再び墓石に向き直った。
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