第九話 治安維持騎士団の変わり者
毎日午後5時に新エピソード公開です♪
今回は個性的な新キャラが来ます
いってらっしゃい!
と、その時だった。
ピピピーッと、鋭い笛の音が響き渡り、柱の影から誰かが飛び出してきた。帽子をかぶって紺色の制服を着た、小柄な女性だった。
「治安維持騎士団です!このサーカス小屋から異常な魔力量が検知されましたっ!」
頭の両側で高く巻かれた、華やかなピンク色のツインテールを揺らしながら、女性はどこか幼さの残る声で叫んだ。小鳥のようにせわしなく首を動かして周りを見渡したかと思うと、エルリックと目が合い、一直線に向かっていく。
犯人はエルリックだと思われている!と、ミノンはあわてて止めようとしたが、その必要はなかった。
「なんでここにいるんですかぁ!エルリック様♡ もう、キキに会いたいからってやりすぎですよぉ〜♡」
先程の態度が嘘のように、甘えた声を出す女性…キキというのだろうか。うきうきと弾む足取りが軽いワルツを刻んでいる。だが、すり寄られたエルリックは心底面倒くさそうな顔をしている。
「あぁ…うんそうだね、でもその異常な魔力量?の元凶は、ここの団長だよ…。」
「はっ!そうなのですか!」
キキがぴんっと背筋を伸ばし、エルリックから離れる。そして下手な咳払いをしてから、つかつかとジゼルに詰め寄った。
「またあなたですかぁ!?いい加減にしてくださいって言いましたよねぇ!?」
「えーっ、そんな細かいこといいじゃーん。」
ジゼルはブランコに座ったまま、頬を膨らませて足をぷらぷらさせている。
「ししょー。治安維持騎士団ってなんですか?騎士団なのに鎧じゃないんですね。」
こそっと耳打ちすると、エルリックは小声で教えてくれた。
「騎士団にもいろいろあってね。鎧を着てるのは防衛騎士団だよ。治安維持騎士団は街の見回りとか急なケンカの仲裁とかをする仕事なんだ。」
「へぇ。おまわりさんみたいな感じかな。…にしても変わった方ですね。」
「そうなんだよね…街に出るといつも見つかって、あんな感じになるから…。しかもジゼルとは犬猿の仲だから、きっと面倒くさいことになるんだよ…。」
うなだれるエルリックを気にせず、キキは犯人に向かって声を張り上げる。
「よくありませんっ!この前だって禁止されてる路上サーカスをやって、注意したばっかりじゃないですかぁ!」
「えー。逆に何で禁止なの?別に誰かに迷惑かけてるわけでもないんだしいいじゃん〜!」
言い返され、更に頭に血が上ったらしいキキはやけになって叫んだ。
「国が定めたルールだからですっ!そういう気持ちが犯罪につながるんですよ!!」
「へぇ?」
何を思ったか、ジゼルはにやりと意味深な笑みを浮かべた。そのまま自らキキとの距離を詰め、勝ったとばかりに言い放つ。
「じゃあストーカーは犯罪じゃないのかな?⭐︎」
「なっ!?!?わ、私がエルリック様をストーk…いいえ、つけて回っているのは犯罪とは違います!」
言い直したが内容は大して変わっていない。ミノンは哀れみの目でエルリックを見上げた。
「これはキキの任務!スーパーアイドル治安維持騎士であるこのキキ、エルリックさまに変な虫がつかないように護衛させていただいているのですよっ!!」
「変な虫って君みたいな?」
ジゼルが火に油を注ぐ発言をする。流石に耐えられなくなったキキは奥の手を出した。
「ああもうっ!うるさいですねぇっ!年齢バラしますよ!?」
「は?」
場が凍った。ジゼルの真顔がこんなに恐怖を掻き立てるものだなんて今まで知らなかった。そして声のトーンが低い。圧がとんでもない。これガチだ…ガチめに地雷踏んじゃったよ…
ミノンは天を仰ぎ、キキがなるべく早く折れてくれることを祈るばかりだった。
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「つっかれたぁぁぁ…」
エルリックの家に戻るなり、ミノンはソファに倒れこんだ。窓の外はもう暗い。新技を使ったこと、スキルを発動したこともそうだが、あの二人の修羅場が何よりミノンの神経をすり減らした。
あれから二人の喧嘩はしばらく続き、キキが隙あらばエルリックに抱きつこうとしてきたので、日が暮れる前にと早々に退散してきたのだ。
ローブを脱いだエルリックも、ふぅ〜と息をつきながら重そうな杖を置き、ミノンにマナポーションの瓶を手渡してくれた。お礼を言って受け取り、一気に飲み干す。最近気づいたのだがマナポーションは前の世界でよく飲んでいたエナジードリンクによく似た癖になる味がして、毎日でも飲みたいくらいだ。
「あ、飲み切っちゃった…。もう一本あります?」
「そんなジュース感覚で飲まないでよ、そんな安いものじゃないんだからね…?」
「ちぇ。」
すると、誰かの足音がしてドアが開いた。ソファから上半身を起こすと、目に入ってきたのは先に家にいたらしいアリアだった。
「あら、おかえりなさい。エルリックが急に家を飛び出していくものだからびっくりしたのよ。」
「あはは〜ごめんね。この杖の水晶玉が紫に光ったから…。」
エルリックの大杖は、先端が蛇の形になっており、水晶玉を抱え込んでいるようなデザインになっている。これが紫色に光ると、仲間の命の危機を知らせてくれるのだそうだ。
「ただいまアリア。」
そう言って彼女をよく見ると、綺麗な木綿のワンピースを着ていた。昨日まではぼろぼろの布切れ同然だったのに、いつのまにか着替えている。
「ししょー…エルリックさんに貰ったんですか?そんなところに気が使える人には見えませんでした。」
後ろでエルリックが物言いたげな顔をしてこちらを見ているのが分かったが、ミノンは無視した。
「ううん。ダリオン?とかいうおっさんがくれたわ。あの人、がさつそうに見えるけど、気がきくのね。そこの鈍感魔法使いとは違って。」
その鈍感魔法使いが複雑そうな顔をしてこちらを見ているのが分かったが、二人は無視した。
「ま、もう夜遅いし、ご飯を食べて早く寝ましょ。」
「そうだね!」
読んでくれてありがとう✨
マナポーション、一回飲んでみたいですね〜
次回もお楽しみに!




