第七話 強くなるために!サーカス小屋へご招待!?
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今回はジゼルさんがかっこいいかも…
いってらっしゃい!
「…ミノンちゃんは、さ。」
ジゼルがいくぶん落ち着いた声で語りかける。
「勇者に、なりたい?」
「勇者、というのは。どういう職業…なんですか?」
ミノンがたずねると、ジゼルはどこか遠くを眺めるように斜め上を向いた。部屋の窓枠が風でかたんと小さく音を立てる。
「強い魔力、戦闘センス、そして『浄化』スキルで魔物を討伐する。人々を守る。それが勇者だよ。」
「……。」
分かってはいても、複雑な思いが胸の奥を渦巻く。大好きな曲が急に上手く弾けなくなったような、もどかしいようなやるせないような気持ち。うつむいたミノンの耳に入ってきたのは、黙っていたダリオンの声だった。
「だが。そりゃ一般論だろ?」
「そ。」
その通り、と言うようにジゼルが指をさす。
「割とさ、職業に縛られる人って多いんだよね。魔物と戦いたいから勇者になりたい。人を救いたいから薬師になりたい。お金持ちになりたいから商人になりたい…とか、ね。でも現実はそうもいかない。
だからこそ、自分がやりたいこと、なりたいものを目指していいと思うんだ、だってその方が楽しいでしょ?
「勇者は魔物を討伐する職業」だなんて、決めつけないで!ミノン。君は、その能力をもって何がしたい?」
「私は…私は。」
膝の上で、両手を握りしめる。
「救いたい!人も、魔物も。誰も苦しませたくない。」
心からの言葉。周りの反応から薄々分かっていた、勇者という職業は他とは一線を画す特別なもので、その責任も重大なものになるのだろうと。もしかしたら取り返しのつかないことになるかもしれない。これ以上は見放されるかもしれない。だからはっきりと言えなかった。でも。
「いいじゃん!!」
ジゼルがいたずらっ子のような表情で笑う。
「それ、ずっといい。最高。あたし、そういうの大好きだよ!」
ダリオンも、深く頷いた。
「お前なら、できるかもしれねぇな。平和なのが一番だ、オレも応援する。」
「…うんっ!ありがとう…ありがとうございます。」
こみ上げる気持ちを抑え、胸の前でぎゅっと手を組む。消えかけていた心の内の灯火が、熱く燃え上がるのを感じた。
「私、もっと強くなりたい。」
顔を上げてそう言うと、ジゼルは腕を組んで目配せをして、こう言った。
「それじゃああたしが稽古つけてあげちゃおっか?⭐︎」
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翌日。
ジゼルに指定された場所は、街のサーカス小屋だった。
「どうしてこんな場所なんだろう…。」
因みにダリオンは魔道具職人に会いに行く用事があるそうで、今日はいない。一人でサーカス小屋の前まで来たミノンは、辺りを見渡す。他に人はいないようだが…。
「ハーイ!ミノンちゃん!いらっしゃーい!」
すると、聞き覚えのある高い声がした。かと思うと、サーカス小屋の幕が一気に開いた。金管楽器の陽気な音楽が流れ、お祭りのような紙吹雪が舞う。自然と足取りが軽くなるような音楽の渦の中心に誘われるように、ミノンは小屋の中へと歩みを進めた。
「こっちだよー!」
声がした方を見上げると、驚くほど高い台上に人が立ち、こちらに向かって大きく手を振っているのが見えた。ジゼルだ。
しかし、その見た目は先ほどのものとは一変していた。きっちり結われていたはずの金髪は下ろされて、肩につく長さになっており、メガネも外していた。赤と黄色の絵の具をひっくり返したような派手な衣装。襞襟風のミニスカートに、背中には大きなリボンが結ばれている。まるで可愛いピエロのような格好にミノンは呆気に取られていた。
「ジゼルさん…!?」
「えへへ、びっくりしたー?あたしはギルド長兼、サーカス団長もやってるんだよー!」
確かに、彼女の底抜けに明るく疲れ知らずな性格には完璧といっていいほど合っているかもしれない。
「稽古、よろしくお願いします…!」
ぺこりと頭を下げると、ジゼルは嬉しそうにうなずき、ぴょんと台から跳ねるようにして足を踏み出した。
あんな高所から落ちたら堪ったものではない。危ない、と思った矢先、ジゼルは天井から吊るされたブランコに足を引っ掛けた。両手に持ったステッキの両端に炎を纏わせ、投げ上げては掴んで器用に回しながら、下に降りてくる。かかとの高いブーツがコツンと音を立てて地面に降り立つと同時に、白手袋の指先がぱちんと小気味いい音を奏でた。瞬間、あちこちにあった装飾の燭台に一斉に火がつき、ミノンは思わず拍手をしていた。
ジゼルは優雅に一礼をして、二本のステッキの両端に纏わせた炎をいっそう燃え上がらせてみせた。
「あたしの専門は炎魔法!オーソドックスだけど、サーカスを盛り上げるにはもってこいなんだー。
確かミノンちゃん、フィアマは習得してるんだったよね??」
「はい。」
「OK!じゃあ、フィアマのもう一段階上の魔法、「フィエスト」を見せるね。」
ジゼルは片手でステッキを器用に回しながら、「フィエスト!」と唱えた。すると炎がステッキを呑み込むように大きく燃え上がり、バチバチと音を立てながら勢いよく放たれた。
火の玉が数個出るだけだったフィアマとは全く違うといっても過言では無い、圧倒的な高威力。
「…ってちょっと待ってくださいこのままだと小屋の壁ブチ抜きますよ!?」
「あ」
やべっ…と我に返るジゼル。その瞬間にも放たれたフィエストが小屋の壁につきそうになっていた。反射的にミノンが叫ぶ。
「プロティカー!!」
ギリギリでフィエストはガードされたが、その威力でプロティカーも相殺された。やはり相当の威力だったようだ、あのまま壁に当たっていたらどうなっていたことか。ミノンは熱気に包まれているはずなのに寒気がした。
だが、犯人はあっけらかんとしている。
「さっすがミノンちゃん、あたしのフィエストをガードで相殺できる人なんてそう多くないよ!これは楽しみになってきたなぁー!!早速始めちゃおうか!」
「あっ…はい、お願いします!」
改めてお辞儀をすると、ジゼルはウィンクをして、ぱちんっと指を鳴らした。
「それじゃあ始めるよー!It’s show time!!⭐︎」
読んでくれてありがとう✨
いざ稽古スタート!
次回もお楽しみに!




