第十三話 花枯の魔霊
9月中は毎週水曜日、午後5時に新エピソード公開です♪
夏休みおわっちゃったよー泣
いってらっしゃい!
翌朝だった。
泊めてもらった屋根裏部屋で目を覚ましたミノンは、ぐっと身体を伸ばしながら大きなあくびをした。
「ふわぁ…。今日はちょっと早く起きちゃったな。」
横を見ると、エルリックもアリアもまだぐっすり、夢の中のようだ。(エルリックさんの前髪、ぐしゃぐしゃで面白いなぁwww)とか、(アリアめっちゃ寝相いいなぁ)なんて思いながら、二人を起こさないようにと用心深くつま先立ちになりながら部屋を出て、階段を降りる。キッチンには既にピーターさんの姿があった。
「おはようございます。」
「ああ、ミノンさん。おはようございます、早いのですね。」
「ピーターさんのほうが早いじゃないですか。」
くすりと笑って、ミノンは手ぐしで寝癖を整えながら彼に近寄った。朝食の支度をしているらしく、何かの白い生地をこねている。パンか、ピザか、はたまた知らない食べ物か。どちらにしろ任せっきりにしておくわけにはいかないので、ミノンは申し出た。
「なにかお手伝いできることありますか。」
少しの間考えるような素振りを見せてから、ピーターは穏やかな微笑みとともに口を開いた。
「それでは、庭にいるサラを見てきてやってください。きっと今頃、いつものようにライラの花を摘んでいるでしょうから。
そこにかかっている私のガウンを羽織っていってください。古びたもので申し訳ないですが、この時間帯はまだ冷えますから、風邪をひかないように…。」
「わかりました。ありがとうございます、使わせていただきます。」
ありがたく、壁のハンガーにかかっていた茶色のガウンを貸してもらい、ミノンは扉を開けて外へと足を踏み出した。
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「サラ?」
白い花畑の中にしゃがんでいる、小さなベージュのガウンの背中に声をかけると、おさげ髪の頭がぴょこんとこちらを振り向いた。
「…ああ、なんだ。お主か。母ちゃんかと思ったわ。声、似てるな。」
丸い瞳と目が合ったかと思うと、すぐにふいっと顔をそむけてしまった。半分ひとりごとのようにこぼれたその言葉に、ミノンは純粋な疑問を持ってたずねた。
「お母さん?…そういえば、あなたのお母さんはどこにいるの?」
「…ここにはもういないよ」
彼女らしくない、曖昧な答え。「ここ」というのが、この家という意味なのか、それともこの世界という意味なのか。わからなかったけれど、静かに夜明けの空に揺れる花畑を見つめるサラの小さなため息に、ああ後者のほうなのだと理解した。
「……。」
ごめんね、と言おうとして、きっとこの子はこんな風に謝られるのなんて嫌いだろうと思い、口を閉じる。代わりにこうたずねた。
「いつもここでお花を摘んでるの?お母さんのために?」
向こうを向いてしゃがんだままのサラが、こくんと小さくうなずいたのが分かった。ひんやりした風がたくさんの花と二人の少女の前髪を優しく撫でていった。
「…母ちゃんの名前、ライラっていったんだ。父ちゃんはこの花にその名前をつけた。…いちばん綺麗な花だから、って。だからあたしはあの日から毎日、ライラの花を一輪摘んで、母ちゃんに供えることにしてる。」
ぽつりぽつりと語るサラ。あの日、というのは、母親が死んだ日ということだろう。そういえば、ここに来る途中に小さな石が積み上がった場所があって、その前に何本かの枯れかけた花が置いてあったが、きっとあれのことだ。死者に花を供えるのはこの村の風習なのかもしれない。ミノンはどこか似た文化を感じて少し胸が温かくなった。
「…ライラの花はこれ?」
「そうだ。」
目の間にたくさん咲いている、花びらの薄い白い花を指さしてたずねた。幻想的でとても綺麗な花だが、ミノンはふと首をかしげた。どの花も、花びらがかなり欠けている。立っている地面をよく見ると、花びらがたくさん落ちてしまっていた。
「花びら、落ちちゃってる。…そろそろ枯れてしまう季節なの?」
どうやら違うようで、サラは困ったようにうつむいて言った。
「いや。ライラの花は本来なら、一年中咲く花なんだ。でも最近はずっとこうで…。他の花もそうなんだ。」
確かに見渡してみると、どの花も元気がないようだ。
「きっと、風車の魔霊のせいだ。」
ぽそっと地面に落とされたサラの言葉を、ミノンは聞き逃さなかった。
「まりょう?」
「…魔物とは違って、生きてはいない、魔力の塊みたいなものだ。原因は自然だったり人為的だったり、色々あるみたいなんだが、だいたい魔力が溜まって発生してしまう。そのせいで周囲に自然にあるはずの魔力が不安定になって、災害が起きたり病気が流行ったりする厄介者だ。」
そんなものがあるんだ、とミノンは眉間にしわを寄せる。
「昔からの言い伝えがあるんだ。…約100年ごとに、あの風車にはよくない魔力が蓄積されていって、魔霊が発生するって。そろそろ丁度100年の周期がきてるんだと思う。」
サラも苦々しい表情だ。ここにある花々が散ってしまうのもその魔霊の影響なのだろう。これからもっと被害が拡大するかもしれないし、とても放ってはおけない。
「わかった、サラ。私に任せて。」
読んでくれてありがとう✨
次回もお楽しみに!




