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第十二話 ゼフィロスの民

毎日午後5時に新エピソード公開です♪


いってらっしゃい!

ゼフィロスに着いた頃には、空の藍色と紫色のグラデーションが空を塗りつぶしていた。

「わぁ…!大きな風車ー!」

しかしミノンは相変わらずの元気さで、間近で見るとさらに迫力満点の風車に顔を輝かせる。アリアも花畑の中で深呼吸をし、いい匂いと呟いた。

「お主ら、旅人か?」

と、聞きなれない声がした。見るとそこには赤茶色の髪の少女が、腰に手を当てて立っていた。歳はミノンと同じか少し下くらいだろうか、やんちゃそうなそばかすが印象的だ。

「うん、そんなところだよ。」

エルリックがにこっと笑って答える。少女は片方の眉をくいっと上げると、ついてきな。と言った。

少女の後についていくと、切妻屋根の小さな家が並んでいた。どの家も、壁に花のような紋様が描いてある。エルリックの家にあった本で読んだことがある、花の女神をまつる村の特徴だ。

そのうちのひとつのドアを開けた少女は、家の奥に向かって声を張る。

「お客さんだよー。」

すると何か慌ただしそうな足音がして、大柄な男性が顔を出した。少女と同じ髪と瞳の色。父親なのだろう。

「やあやあ、これはこれは。ようこそいらっしゃいました。どうぞ、泊まって行ってください。」

「ありがとうございます。」

エルリックが当たり前のように家の奥に足を踏み入れるので、ミノンは慌てて彼の服の裾を引っ張った。

「ちょ、そんな簡単に泊めてもらっちゃって大丈夫なんですか?」

「ん?ああ。ミノンのいた世界では珍しいのかもしれないね。」

「はい、ていうかほぼないと思います…。異世界(こっち)だとよくあることなんですか?」

「そうだね、割と普通だよ。宿泊施設はよほどの都会じゃないと用意されてないし、旅人たちだって危険な野宿より民家に泊まりたいしね。だから村ではたいていの人が無償で泊めてくれるんだ。」

「へぇ!皆さん親切なんですね。」

「うん。でも、泊めてもらうからには家事の手伝いとかもしようね。」

「はーい。」

ミノンは返事をして、歩みを進めた。

ふと、(エルリックさんが家事の手伝いなんてしたら悲惨なことになるんじゃ…)と危機感を覚えながら。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「では、改めて自己紹介を。私はピーターです。この子は娘のサラ。二人で作物や花を育てて生活しています。」

父親、ピーターは人の良さそうな笑顔で挨拶をしてくれる。

「この度はよろしくお願いいたします、ピーターさん、サラ。僕はエルリックです。こっちの二人は、ミノンとアリア。」

よろしくお願いします、とミノンは頭を下げた。ふと顔を上げると、二人は不思議そうな顔をしていた。

「?」

何なのかわからず戸惑うミノンに、エルリックは笑って声をかけた。

「この世界では挨拶としてのお辞儀をする風習があまりないからね。特にこういう田舎では。」

「あ、なるほど。」

日本人としての風習が染み付いてしまっていたからか、この世界でもよくやってしまっていたようだ。ミノンは納得して、ピーター達に言った。

「すみません、私、数週間前に別世界から召喚された者なんです。だから風習とか、ちょっと違うみたいで。」

「おや、そうなのですか。珍しい。」

ピーターは目を丸くして言った。やはり召喚者は滅多にない、珍しいことのようだ。

「そういえば、お主らの職業はまだ聞いていなかったが。」

と、サラが尋ねる。エルリックが代表して答えた。

「僕はただの魔法使いだよ。アリアは具体的には決まっていないんだけれど、一緒に戦ってくれる仲間で、ミノンは…」

そこで口ごもり、ちらりとミノンに視線が向けられた。珍しい職業である「勇者」だと告げれば、噂が広まって身に危険が及ぶかもしれない。そう考えたのだろう。

「私は、エルリックさんの弟子で、音魔法使いです。前いた世界ではピアノという楽器をやっていて…。」

「そうなのですか。それでは、サラと気が合うかもしれませんね。」

ピーターが嬉しそうに言った。聞くと、サラも楽器をしているのだという。

「ひとつ、弾いてみせましょう。いいだろう、サラ?」

「…分かった。でも、期待はするなよ。」

サラは相変わらず淡々とした態度で部屋を出、戻ってきたときにはその手に小さなハープのような楽器を持っていた。しかしミノンの知っているものとは違い、弦が5本、花のように中心から広がった形で張られていた。

「この村に昔から伝わる楽器、『ブルー』だ。」

聞いたことのない名前のそれを、サラは細い指先で軽くつま弾く。ぽろんぽろんと、優しい音色がこぼれた。

ミノンはその音に吸い寄せられるように息をして、黙ってサラの手元を見つめていた。五本の指が弦をくすぐるように繊細に動き、さらに音が紡がれる。まるで『アラベスク』のような流れるようなメロディーだと思いきや、『月光』のような静かでどこか物悲しい音がいくつか響いたりもした。

サラが短い音楽を弾き終えたときには、ミノンは思わず拍手をしていた。

「すごい、、綺麗!!」

サラは少し照れたように首をすくめて、ありがとうと言った。



読んでくれてありがとう✨

次回もお楽しみに!

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