閑話その3 小さな音色
これで閑話は最後です!
前回&前々回に比べたら真面目かも!
毎日午後5時に新エピソード公開です♪
いってらっしゃい!
ゼフィロスへ向かう途中の夜。パチパチと薪が燃える音と、虫の鳴き声だけが響く静かな森の中で、3人は焚き火を囲んでいた。
「ふぁ……歩いたねぇ。ミノン、足痛くない?」
「大丈夫です! 前の街より、さらに空気がおいしくて……思ったより、疲れてないかも。」
膝を抱えて夜空を見上げながら、ミノンはふと息をついた。
満天の星空は息をのむほど美しい。この世界は、もといた世界とは全く次元が違う世界なんだろうか。それとも、地球と同じ次元の、ずっと遠いところにある星なんだろうか。夜空のキャンバスに惜しみなく散りばめられた無数のダイヤモンドのかけらのような星たちを見つめ、もっと勉強していたらどれがどの星だとか、星座だとかわかったんだろうか。そうしたら地球も、どこにあるのかわかったかもしれないのにな。と、少しやるせない気持ちになった。
こちらに来てからは、沢山の事件に逢ってばかりで、こうしてゆっくりする時間はなかなか無かった。それでもずっと、どこか胸の奥に何かがつかえたような、切ない気持ちが拭えていない。
(この世界に来てから、ずっと鍵盤に触れてないな……)
思わず自分の指先を見つめていると、隣に座っていたアリアが優しく顔を覗き込んできた。
「もしかしてミノン、向こうの世界の楽器…えっと、何だったかしら。『ピアノ』…が恋しいの?」
「……うん。ちょっとだけね。毎日のように弾いてたから」
ミノンが苦笑いすると、エルリックが「そうだ」と手を叩いた。
「『音色の短剣』、ちょっと出してみてよ」
言われた通り、ダリオンにもらった短剣を鞘から抜く。
エルリックは落ちていた木の小枝で、短剣の刃を優しく叩いた。
トン、テン、カン――。
「わ……きれいな音!」
「でしょう。フィリー…えっと、ダリオンが贔屓にしている、とある魔道具職人だけが扱っている、特殊な金属だからね。叩く位置や強さで、ちゃんと音が変わるんだよ」
「へぇ…いつか会ってみたいな!」
ミノンは目を輝かせ、絶対音感を頼りに短剣のあちこちを指先や鞘で軽く叩き始めた。
ド、レ、ミ、ファ、ソ……。
完璧なピッチで奏でられる透明感のある音色。ミノンは短剣ひとつで、前の世界で大好きだった短い小品を軽やかに奏でてみせた。懐かしくて、思わず泣きそうになった。
「すごい……! 短剣ひとつで、こんなに綺麗な曲になるのね」
アリアがうっとりと耳を澄ませ、その音色に合わせて静かにハミングを重ね始める。
アリアの透き通るような歌声と、短剣が奏でる繊細な音が夜の森に美しく響いては溶けていく。
「いいねぇ。ミノンの奏でる音は、聴いているだけで心が澄んでいく気がするよ。音魔法の才能、伊達じゃないね」
エルリックも目を細めて、薪の爆ぜる音とふたりの音楽に耳を傾けていた。
「あはは、ありがとうございます。……よし! 明日も頑張って歩くぞー!」
短剣を鞘に収め、ミノンは胸のつかえが取れたような笑顔をふたりに向けたのだった。
ゼフィロスまで、あと少しだ。
読んでくれてありがとう✨
次回は本編再開、遂にゼフィロス到着です!お楽しみに!




