閑話その2 天才魔法使いのおかあさん
今回はダリオン登場〜
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いってらっしゃい!
ミノンが召喚される、一ヶ月ほど前のことだ。
エルリックの家の前に、盛大なため息がひとつ落ちた。
「……おいエルリック、居るんだろ。入るぞ」
返事を待たずにダリオンが扉を開けると、そこは惨状だった。
足の踏み場もないほど散らばった魔導書、床に転がる空のマナポーションの瓶。そして奥のキッチンからは、なにやらモクモクと怪しい黒煙が上がっている。
「ゴホッ、ゴホッ……! あ、ダリオン。ヤッホー」
煙の中から現れたエルリックは、端正な顔に大量の黒ススをつけた状態でニコニコと手を振っていた。手に持っているお皿の上には、炭化して原形をとどめていない「元・パン」が鎮座している。
「ヤッホー、じゃねぇ! お前また火加減間違えて家燃やしかけてんのか!?」
「いやぁ、フィアマの火力を極限まで絞ってサッと表面を香ばしく焼こうと思ったんだけど、ちょっと魔力が乱れちゃってさ」
「魔法でパン焼こうとするな!! 普通に竈を使え竈を!!」
ダリオンは頭を抱えながら、手慣れた手つきで窓を全開にして換気し、エルリックの手から焦げた皿を没収した。
「お前、またローブ脱ぎ散らかしてやがる。脱いだら畳めって何度言ったら分かるんだ?」
「だってどうせまた着るのに畳む意味なくない?」
「…本当ダメだな。」
「おい!奥の方から『スライムでもわかる!しょしんしゃむけ まほうのつかいかた』って本が出て来たんだがこれもう要らないだろ!?」
「ダメー!いつか骨董品として価値がでるかもしれないじゃーん!」
「骨董品でもホコリまみれじゃゴミ同然なんだよ!」
「ちょ、エルリック!なんだこの引き出しの中身は!?糸くずのゴミから伝説級の魔道具まで、大量の物でごった返してるじゃねぇか!このまえ俺が片付けてやったばっかりだよな!?」
「えー。だってダリオンが「なんでもかんでも床に置くな」って言うから、ちゃんとしまったんだよ?」
「だからってこんな風に詰め込むやつがあるか!!」
ダリオンはまたひときわ大きなため息をついて、毎度の説教を始めた。
「掃除はしてねぇ、服は脱ぎっぱなし、飯は焦がす。…お前なぁ、街じゃ『殿堂入りの天才魔法使い』なんて持ち上げられてるが、実生活は壊滅的だって知られたら全ファンが泣くぞ」
「だって、魔法の研究で忙しいんだもん。家事は僕の才能の無駄遣いだと思うんだよね」
「口だけは達者だなコノヤロー!」
げんこつを食らいそうになって「うわー!暴力反対!」と身をすくめるエルリック。
ダリオンはぶつぶつと愚痴をこぼしながらも、腕まくりをしてテキパキと部屋の片付けを始めた。散らばった本を棚に戻し、床を払い、あっという間に綺麗な空間を取り戻していく。
さらに、持参していた籠から焼きたてのパンとスープを取り出し、テーブルに並べた。
「ほら、食え。これ温め直すくらいなら魔法使わなくてもできるだろ」
「わぁー! ダリオンのスープだ! やっぱり持つべきものは親友だね!」
「……もはやこれ母親じゃねぇか?」
文句を言いながらも、美味しそうにスープをすするエルリックを見て、ダリオンはどこか諦めたように眉間を揉むのだった。
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次回もお楽しみに!




