第十一話 決断
毎日午後5時に新エピソード公開です♪
今回は大きな転換点となるエピソードです、
いってらっしゃい!
「『浄化』!!」
勢いよく放たれた、まばゆいほどの純白のエネルギー。それはオーク達をすべて呑み込むほどに広がり、あまりの眩しさにその場の全員が思わず目を瞑った。光が消えると、そこに立っていたのはすっかりおとなしくなったオーク達だった。
「あ、あ、、俺たち、、」
「呪いが…外れた…??」
ミノンは静かに歩みを進め、戸惑っている彼らに近づく。それを見ていた周囲の人からは、だんだんと歓声が上がるようになった。
「あの子、すげぇ!」
「『浄化』を使ってた…勇者だぞ!」
「あんな高レベルの浄化は、見たことも聞いたこともないわ。」
「いけ!そのまま倒せ!」
「魔物をやっつけろー!」
倒せ倒せとあちこちから声が上がる。オーク達のところへと一歩ずつ歩みを進めるたびに、胸が苦しくなった。
それでもミノンは、はっきりと口にした。
「もう大丈夫だよ。」
「…え?」
先程の盛り上がりが嘘のように、場が一瞬で静まり返った。負けちゃダメだ。自分に言い聞かせる。
「もう、呪いは外れたから。森に帰って大丈夫だよ。」
オーク達はぽかんとしていたが、やがてそのうちの一匹が喜びの声を上げた。
「よかった…よかった!ありがと、」
「ふざけんなよ!!」
しかしその言葉は、事の成り行きを見ていた男性の罵声でかき消された。
「お前、、何、魔物の味方をしてやがる!勇者だろうが!」
「そうよ!犯罪者だわ!」
「悪の勇者だ!」
それを皮切りに、人々から怒鳴り声が浴びせられる。音の一つ一つが、痛い。私の好きな音は、こんなんじゃない。
「落ち着け!何があった。」
ひときわ響く声。人々は再び静まり返る。
声の主は、馬のような魔獣に乗った、ガタイのいい騎士だった。胸には防衛騎士団のエンブレムがある。
「こ、こいつらが!魔物に手を貸そうとしているんだ!」
「犯罪者よ、捕まえて!」
「その勇者のチビと、エルリックと、黒布の女も仲間だ!」
そんなことになっているうちにも、防衛騎士たちは次々と集まって来た。彼らは目配せをしてから、一斉にミノンたちに襲いかかってきた。
「きゃあっ!」
はずみでアリアの布が外れ、明らかに人間のものではない尖った耳が晒された。
「嘘だろ!魔物を連れてやがる!」
「やはり悪の勇者だわ!」
場は大混乱だ。だがエルリックは落ち着いた様子で大きく息をつき、杖を一振りした。
「瞬間移動!」
光が収まり、人々が目を開けた時には、すでにそこに三人の姿はなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
着いた場所は、エルリックの家だった。なんとか帰ってこられたが、空気は重い。
「…これから、どうしましょう。もう街には行けないわよね。」
「そうだねぇ。ここで暮らすのも、すぐ騎士団に見つかるから難しいかな。」
「…ごめんなさい。私のせいで。」
ミノンが泣きそうな声でうつむくと、そっと頬に手が添えられた。顔を上げると、アリアが笑っていた。
「何言ってるの。私はそんなあなたに助けられたのよ。どこまでも着いていくわ。」
エルリックも相変わらずの軽い口調で言う。
「僕もだよ。面白そうだし、ずっとここで暮らすのもつまらないからね。」
「えっ…。どう言うことですか?」
エルリックとアリアはお茶目に顔を見合わせて、声をそろえて言った。
「旅に出よう。」
ミノンは目を見開いた。言われたことをつぶやくように繰り返す。
「旅…。」
二人はうなずく。
「そう、旅。そのほうが各地の魔物も人も救えるし、ちょうど良いよ。」
「この世界じゃ旅人はたくさんいるし、目立たないわよ。」
先程買った服をアリアが床に並べ、かさばらないよう畳んでいく。数日分の肌着、普段着、靴下に帽子。花の刺繍のかわいいケープは、二人で色違いにしたものだ。
エルリックは奥に行ったかと思うと、古そうなトランクを引っ張り出して来て、ミノンに笑いかけた。
「さ、早くしないと騎士団が来ちゃうよ。荷物をまとめよう。」
「…はい!」
(ここまで来たら、そうしてしまおう。二人が許してくれてるんだ。精一杯、頑張るんだ。)
ミノンも短剣をぎゅっとベルトに挿し直し、荷造りを手伝った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「突入!犯罪者を確保!」
家の扉が騎士団によって破壊されて、鎧の騎士たちがなだれ込んできた時には、もう部屋はもぬけの殻だった。
「…っ!放置してはおけないな。」
「帰って報告だ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「そろそろ中間地点だね。」
空が濃い蜜柑色に染まり始めたころ。静かに森を歩き続けていた一行は、エルリックの言葉で足を止め、彼の手の地図をのぞきこんだ。
男性にしては細い指先が示しているのは、暮らしていた街からはかなり離れたところにある街【ゼフィロス】だ。
エルリックが、「旅といっても、あてもなく彷徨うわけにもいかないしね。まずはここを目指そうか。」と言って決めていた街だ。
「どんなところなんですか?」
「風車と花畑の街といわれている、とても素敵なところだよ。」
「へぇー!」
はじめての旅の目的地に胸をはずませながら、ミノンは立ち止まっていた足を踏み出した。
読んでくれてありがとう✨
次回もお楽しみに!




