表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/15

『親友の告白』

 ドアの前に立っていたのは――祐子だった。

 視界が、一瞬だけ止まる。

 見慣れた顔。  何度も家で会った女。


 そして。

 祐子は妻と親友で、徹の三人目の浮気相手だ。


「……は?」

 徹の喉から、乾いた音が漏れる。

「久しぶり、徹くん」

 祐子は、穏やかに微笑んだ。

 だが、その目には何もない。  温度が、完全に抜け落ちている。


「……なんで、お前がここにいる」

 徹は低く問いかける。


 祐子は答えない。

 一歩、踏み込む。

 その瞬間――

『動くな』

 耳元で、あの声。

 反射的に体が固まる。


 視線を落とす。

 胸の中心。

 ――赤い点。

「……チッ」

 舌打ち。


 祐子が、小さく笑う。

「もう分かってるでしょ?」

 静かな声。

「これ、全部“私たち”なの」


「……私たち?」

 眉が、わずかに動く。

 祐子は、ゆっくりと頷いた。

「香織と、私」

 一拍。


「最初から、一緒にやってたの」


 徹の心臓が、重く鳴る。



「徹くんを、壊すために」

 祐子のその言葉が、妙な感じがした。


「……は?」

 徹の理解が、遅れる。


「ねえ、覚えてる?」

 祐子は続ける。

「初めて会った日」

 視線が揺れる。


 あの日。

 香織の隣にいた女。

 笑っていた、普通に。

「全部、知ってたよ」

 淡々とした声。

「最初から、全部」


 背筋に、冷たいものが這い上がる。


「どの女とも寝てたことも」

「嘘ついてたことも」

 一歩、近づく。

「香織にどういう顔して帰ってたかも」


「……やめろ」

 低く漏れる。


 だが、止まらない。

「ねえ」

 祐子が、首を傾ける。

「楽しかった?」

 一拍。


「私と寝てる時も、“どうでもいい”って思ってた?」


 心臓が、強く打つ。

 答えない。

 だが――


『いいな』

 スマホの向こうで、男が笑う。

『その顔だ』


 祐子は、その声に従うように少し下がる。

「来て」

 外を指す。

「審判の場所に」


「……どこだ?」


「来れば分かる」


 赤い点が、わずかに揺れる。

 拒否はできない。

 逃げ場もない。

 徹は、数秒だけ沈黙し――

「……いいだろ」


 口元が、わずかに歪む。

「最後まで付き合ってやる」


 祐子が、満足そうに笑った。

「そうこなくちゃ」


 二人は部屋を出る。

 夜の街。

 冷たい空気。

 無言のまま、歩く。

 時間にして、三十分ほど。


 途中。

 徹の目が、わずかに細くなる。

「……いるな」


「え?」

 祐子が小さく反応する。


(尾けられてる)

 距離感。  足音の間。  視線の刺さり方。

 徹には分かる。

 確実に、誰かいる。

 だが。

(放っとけ)

 そう思った。

「今は関係ない」


 祐子は気がついていないのか、何も言わない。

 ただ、前を向いたまま歩き続ける。


 やがて。

 一つの古びたビルの前で止まる。

「ここ」

 祐子は短く言う。


 徹は、無言で中に入る。

 階段を上がる。

 ただ上へ。

 屋上へと続く扉の前で、祐子が立ち止まる。

「開けて」


 徹は、数秒だけ扉を見る。

 その向こうにあるもの。

 終わりか、それとも、始まりか。


 ノブに手をかける。

 そして――

 開けた。


もしも気にいってもらえたら


☆で評価お願いします。


もちろん、ブックマーク、感想などもお待ちしています。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ