↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱から始めるゴブリン成り上がり譚 〜進化する俺はもう雑魚とは呼ばせない〜  作者: AI+


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
471/498

【第470話:森の奥へ】

ルーニーは地面に残された僅かな魔力を確認したあとも、すぐには立ち上がらなかった。

残された痕跡が何を示しているのかを考えながら、周囲へ視線を巡らせている。


「……この程度じゃ、まだ何も判断できないね」


ルーニーはそう呟き、魔術媒体を懐へしまった。

イエガンも急いで結論を出すつもりはなく、周囲の木々へ目を向けていた。


「だったら、もう少し奥まで見てみるか」


「うん。ここで戻るより、その方がいいと思う」


二人は先ほど見つけた場所を離れ、さらに森の奥へ進んでいった。

足元には細い獣道すらなくなり、枝や草を掻き分けながら慎重に進んでいく。


「この辺りまで来ると、さすがに人の気配もねえな」


イエガンが周囲を見回しながら呟いた。

先ほどまで聞こえていた鳥の声も少なくなり、森の奥には妙な静けさが広がっている。


「でも、魔力の流れは少し変わってきたよ」


ルーニーが立ち止まり、周囲へ意識を集中させた。

目には見えない何かを探るように目を細め、しばらく黙ったまま動かない。


「強い反応じゃないけど、さっきの場所より僅かに濃い」


「同じ奴が残したもんか?」


「まだ分からない。ただ、方向は近いと思う」


ルーニーは森の奥へ顔を向けた。

その視線の先には、木々が密集しているだけで目立ったものは何もない。


イエガンは一度だけ頷くと、先へ進むよう手で合図した。

二人は互いの距離を保ちながら、慎重に歩みを進めていく。


しばらく進んだところで、ルーニーが再び足を止めた。

今度は先ほどよりも明らかに表情が険しくなっている。


「……少し待って」


「どうした?」


「前の方に、何かいる」


イエガンの表情も変わった。

すぐに腰を落とし、木々の隙間から前方を確認する。


そこには大きな獣の姿があった。

黒褐色の毛に覆われた身体は通常の獣より一回り以上大きく、鋭い爪を持つ四本の脚で地面を踏みしめている。


獣は二人に気づいている様子はなく、しばらく地面の匂いを嗅いでいた。

しかし、次の瞬間にはゆっくりと頭を上げる。


「……気づかれたか」


「みたいだね」


ルーニーが魔術媒体を構えた。

イエガンも拳を握り、獣との距離を測る。


「先に仕掛けるぞ」


「分かった。僕が動きを止める」


イエガンが地面を蹴った。

ほぼ同時にルーニーが魔力を解放し、獣の足元へ魔術を展開する。


獣は低い唸り声を上げながら飛び退いた。

拘束の魔術を力任せに振りほどくと、そのままイエガンへ向かって突進する。


「おっと!」


イエガンは横へ跳んで攻撃を避けた。

巨大な身体がすぐ横を通り抜け、木の幹へ激しくぶつかる。


「思ったより速えな!」


「気をつけて! 普通の獣じゃない!」


ルーニーが魔力を集中させる。

複数の光弾が獣へ向かって飛んだが、獣は身体を捻ってその多くを避けた。


それでも一発が前脚へ当たり、獣の動きが僅かに鈍る。

その隙を逃さず、イエガンが一気に距離を詰めた。


「そこだ!」


拳が獣の身体へ叩き込まれた。

しかし、手応えはあったものの、獣は倒れずにその場で踏みとどまった。


「硬ぇな……!」


獣が身体を反転させ、鋭い爪を振り下ろす。

イエガンは腕で受け流したが、その勢いに押されて数歩後退した。


「イエガン!」


「まだ大丈夫だ!」


イエガンが踏みとどまる。

その直後、ルーニーが獣の周囲へ魔力を集中させた。


「今だよ!」


地面から伸びた魔力の鎖が獣の四肢へ絡みついた。

完全には動きを封じられないものの、一瞬だけ獣の動きが止まる。


「助かったぜ!」


イエガンが地面を蹴った。

そのまま真正面から距離を詰め、渾身の一撃を獣へ叩き込む。


大きな身体が地面へ転がった。

それでも獣は起き上がろうとしたが、ルーニーの魔術が再びその動きを封じる。


「これで終わりだ!」


イエガンの攻撃が決まり、獣はようやく動かなくなった。

周囲に再び静けさが戻ってくる。


「……強かったね」


ルーニーが息を整えながら呟いた。

イエガンも荒く息を吐きながら、倒れた獣へ目を向ける。


「普通の獣じゃねえのは間違いねえな」


「うん。身体そのものに魔力がかなり馴染んでる」


ルーニーは獣の身体へ近づき、慎重に魔力を調べ始めた。

すると、獣の体表に僅かな魔力の残滓が付着していることに気づく。


「……これ、さっきの場所で感じたものと少し似てる」


イエガンが振り返った。


「本当か?」


「完全に同じとは言えないけど、系統は近いと思う」


ルーニーは獣の周囲をさらに調べた。

すると、少し離れた地面に小さな黒い欠片が落ちているのを見つけた。


「これは……」


「何だ?」


ルーニーは欠片を拾い上げず、魔術で浮かせた。

黒い欠片からは、獣の身体に残っていたものと似た魔力が僅かに感じられる。


「この欠片、自然にできたものじゃないと思う」


「つまり、誰かが何かをしたってことか?」


「まだ断定はできない。でも、調べる価値はあるよ」


イエガンは欠片を見つめた。

ようやく、これまでの調査とは違う手掛かりが見つかった。


「なら、こいつを持ち帰るか」


「そうしよう。僕ならもう少し詳しく調べられると思う」


ルーニーは欠片を慎重に包み、腰に取り付けた袋へしまった。

二人は周囲をもう一度確認してから、その場を離れることにした。


まだ森の奥には何があるのか分からない。

しかし、ここから先へ進めばさらに危険が増える可能性も高い。


「今日はここまでにするか」


「うん。今の情報を持って帰る方がいいと思う」


二人は森を抜ける方向へ歩き始めた。

その足取りには疲労が残っていたが、調査へ出た時とは違う確かな手応えがあった。


すぐにクロナへ報告するわけではない。

まずは安全な場所まで戻り、今回得た情報を整理してから帰還する必要がある。


イエガンは森の奥を一度だけ振り返った。

まだ何かが潜んでいるような気配が、微かに残っている。


「……まだ終わっちゃいねえな」


「うん。むしろ、ここからが本番かもしれないね」


二人はそれ以上言葉を交わさず、森の出口へ向かって歩き続けた。

そして、この先で待ち受けるものを知らないまま、次の調査へ繋がる道を進んでいった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。