【第450話:王国に広がる報せ】
クロナたちはグリムファング王国へ戻ると、そのまま王城へ向かった。
人さらい組織の調査へ向かってから、かなりの時間が経っていた。
王国に残った者たちは、無事な帰還を願いながら待ち続けていた。
城門を守っていた兵士は、クロナの姿を確認すると目を見開く。
「クロナ様!」
兵士の声が響く。
「ご無事だったのですね」
クロナは静かに頷いた。
「戻った」
短い返答だった。
だが、その一言だけで兵士の表情は大きく緩んだ。
帰還の報せはすぐに城内へ広がっていく。
人さらい組織を追っていた主が戻った。
その事実は、王国全体に安堵を与えていた。
クロナたちは謁見の間へ通される。
そこでは、王国を支える幹部たちが待っていた。
「ご無事で何よりです」
年長の幹部が頭を下げる。
クロナは頷いた。
「心配を掛けたな」
「それで、人さらい組織について何か分かったことはありますか」
幹部の問いに、クロナは少し間を置く。
「ああ。だが、簡単な話ではなかった」
クロナは人さらい組織を追ってから、現在に至るまでの経緯を説明した。
組織の存在。
その背後で起きていた出来事。
そして、イエガンたちと共に問題を解決するまでの流れを伝えていく。
全てを細かく話したわけではない。
しかし、幹部たちは十分に理解していた。
今回の事件が、単なる人さらい事件ではなかったことを。
「そのような事態になっていたとは……」
幹部の一人が息を漏らす。
「クロナ様たちが動かなければ、さらに大きな被害になっていた可能性がありますね」
「ああ」
クロナは頷く。
「だからこそ、今後も警戒は必要だ」
イエガンが一歩前へ出る。
「私からも提案があります…王国周辺の警戒を強化するべきです。今回の件で、まだ知られていない脅威が存在する可能性があります」
幹部たちは真剣な表情で頷いた。
「すぐに兵へ指示を出します」
「頼む」
クロナが答える。
その後、ティナが静かに口を開く。
「もう一つ、確認しなければならないことがあります」
幹部たちの視線が集まる。
ティナはクロナの胸元を見る。
「白い紋様についてです」
クロナも視線を落とす。
そこには、今も淡い光を放つ紋様が残っている。
「この力が何なのか、なぜクロナ様に刻まれたのか」
ティナは続ける。
「それを調べる必要があります」
幹部の一人が考え込む。
「しかし、グリムファング王国には、まだ十分な歴史や資料がありません」
その言葉に、ティナは頷いた。
グリムファング王国は生まれたばかりの国だ。
これから歴史を作っていく場所であり、過去の記録を大量に持つ場所ではない。
「その通りです」
ティナが答える。
「この件を調べるには、外部の情報が必要になります。古い時代を知る者や、失われた記録を持つ場所を探す必要があります」
クロナは静かに考える。
今回の敵は倒した。
だが、白い紋様の正体はまだ分かっていない。
力で勝つだけでは、届かない答えがある。
「なら、探すだけだ」
クロナが言う。
「俺の中にある力の正体を」
ティナは頷く。
「はい。必ず手掛かりは見つかります」
イエガンも続く。
「その旅の準備は、私が整えます」
クロナは二人を見る。
長い戦いは終わった。
しかし、全てが解決したわけではない。
白い紋様の謎。
そして、世界に残された未知の脅威。
それらを知るための新たな旅が、始まろうとしていた。




