【第447話:帰還への歩み、深まる謎】
崩れた門の跡を離れ、クロナたちは谷を進んでいた。
戦いの緊張は消えている。
しかし、誰も完全に気を緩めることはできなかった。
今回の敵は倒した。
だが、残された謎は多い。
クロナは歩きながら胸の白い紋様へ視線を落とす。
あれが何なのか。
なぜ自分に刻まれたのか。
答えはまだ見つかっていない。
「クロナ様」
ティナが隣を歩きながら声をかける。
「少し確認してもよろしいでしょうか」
クロナは頷く。
「何だ」
ティナは白い紋様を見る。
「先ほどから、その紋様に変化はありませんか」
クロナは意識を集中させる。
確かに、以前とは少し違う。
力が増えたわけではない。
だが、何かが繋がっているような感覚が残っていた。
「反応はある」
クロナが答える。
「だが、何を意味しているのかまでは分からない」
ティナは小さく頷く。
「私も調べる必要があります」
「古い記録を確認すれば、何か手掛かりが見つかるかもしれません」
イエガンは前方を警戒しながら聞いていた。
「世界律評議会の記録、ですか」
「はい」
ティナが答える。
「ただ、残っている資料がどれほどあるかは分かりません」
イエガンは静かに息を吐く。
失われた記録。
過去に存在した門。
そしてクロナに刻まれた白い紋様。
全てが一つの場所へ繋がっているように感じていた。
「急ぐ必要がありますね」
イエガンが言う。
「今回のような存在が、他にもいる可能性があります」
クロナは足を止める。
その言葉は、クロナ自身も考えていたことだった。
もし今回の門が偶然ではないなら。
もし過去にも同じようなことが起きていたなら。
また同じ脅威が現れる可能性がある。
「なら、先に知るだけだ」
クロナは前を見る。
「敵が来るのを待つ必要はない」
ティナはその言葉に頷く。
クロナがただ力を求めていた頃とは違う。
今は守るべきものがある。
そのために必要なのは、さらに強くなることだけではない。
己の力の正体を知ることだった。
谷を抜ける頃には、空は赤く染まり始めていた。
長い戦いの終わり。
そして、新たな調査の始まり。
クロナたちは帰路へ進む。
だが、その背後。
誰もいなくなった門の跡地で、消えたはずの黒い影が、ほんの僅かに揺らめいていた。




