【第421話:融合する災厄】
二体の異形が互いへ溶け合っていく。
黒い外殻は液体のように形を失い、巨大な塊へ変貌していた。
谷全体が異常な振動に包まれる。
ティナは唇を噛む。
融合が完了すれば何が起きるか分からない。
だが良い結果にならないことだけは確実だった。
「クロナ様!」
ティナが叫ぶ。
「止めなければ危険です!」
クロナは既に動いていた。
雷を纏った身体が一直線に飛ぶ。
空気を裂く轟音が響いた。
拳が黒い塊へ突き刺さる。
圧縮された力が内部で炸裂した。
周囲の地面が吹き飛ぶ。
しかし融合は止まらない。
むしろ黒い塊はさらに膨張する。
大量の目が表面に浮かび上がった。
イエガンも突撃する。
大斧へ全力の魔力を込めた。
青白い光が刃を覆う。
「止まれえええ!」
渾身の一撃が叩き込まれる。
衝撃波が谷を揺らした。
岩壁が次々と崩れ落ちる。
黒い塊が揺れる。
確かな手応えはあった。
だが融合そのものは継続している。
ティナは解析を続ける。
目まぐるしく情報が流れ込む。
額には汗が浮かんでいた。
そして気付く。
融合の中心部だった。
そこだけ反応が違う。
「クロナ様!」
ティナが再び叫ぶ。
「中心です! 代償の循環が中心へ集まっています!」
クロナの目が細くなる。
黒い塊の奥を睨み付けた。
確かに異様な脈動が存在する。
全ての代償。
全ての力。
全ての結果改変。
それらが中心へ集約されていた。
「核か」
クロナが笑う。
「なら話は簡単だな」
雷が激しく弾ける。
炎が渦を巻く。
影が黒い奔流となって集まった。
三つの力が重なり合う。
今までで最大の出力だった。
谷全体が震え始める。
ティナは息を呑む。
クロナの身体にも負荷が掛かっていた。
それほどの力だった。
「クロナ様。無茶は」
「今さらだろ」
短く返す。
その言葉にティナは苦笑した。
確かに今さらだった。
クロナは空高く跳ぶ。
巨大な黒い塊を見下ろした。
融合は最終段階へ近付いている。
無数の目が一斉に開く。
膨大な殺意が向けられた。
敵も危険を察知したのだ。
空間が裂ける。
黒い槍が現れる。
無数の亀裂が広がった。
全てがクロナを狙う。
だがクロナは止まらない。
一直線に降下した。
「消し飛べ」
拳が放たれる。
雷と炎と影が一つになる。
谷全体を飲み込む閃光が走った。
轟音が世界を揺らす。
黒い塊の中心部へ直撃する。
核へ届く一撃だった。
次の瞬間。
黒い塊全体に亀裂が走る。
今までとは比べ物にならない規模だった。
ティナの目が見開かれる。
イエガンも息を呑んだ。
確実に効いている。
だが。
亀裂の奥から。
さらに巨大な目がゆっくりと開いた。
それは今までの異形とは明らかに格が違う存在の目だった。




