表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱から始めるゴブリン成り上がり譚 〜進化する俺はもう雑魚とは呼ばせない〜  作者: AI+


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
404/431

【第403話:見え始めた綻び】

黒い巨人の腕が振り下ろされた。

轟音と共に岩盤が砕ける。

砕けた石片が谷の斜面へ激しく降り注いだ。


クロナはその中心から軽く跳び退いていた。

余裕を見せつけるためではなく、純粋に攻撃を見極めている。

その目は巨人の全身を冷静に観察していた。


「確かに硬いな。だが思ったほど厄介でもねえ」


イエガンは大斧を肩に担ぎながら巨人の側面へ回る。

その大柄な身体からは焦りが一切感じられない。

戦況を見ながら最適な一撃を探していた。


「クロナ様。こいつは力こそありますが、動きは単純です」


「そうだな」


クロナは小さく笑った。

巨人は再生する。

だがそれ以外の部分は歴戦の強敵と呼ぶには少し物足りなかった。


その様子を見ていたアルドの表情が僅かに曇る。

再生能力を見せられれば相手は焦るはずだった。

少なくとも彼はそう信じていた。


しかし目の前の二人は違う。

警戒こそしているが動揺していない。

まるで攻略法を探す作業でもしているかのようだった。


一方でティナはアルドと刃を交えていた。

短剣と長剣がぶつかるたび鋭い火花が散る。

谷の岩壁へ金属音が反響していた。


「随分落ち着いていますね」


ティナが静かに言った。

アルドは剣を振るいながら鼻を鳴らす。

その瞳には強い自負が宿っていた。


「当然だ。あれは私の最高傑作だからな」


「そうですか」


短いやり取りの後も攻防は続く。

ティナは相手の剣筋を見切りながら距離を保った。

戦うことより観察することを優先しているようにも見えた。


アルドはその態度が気に入らない。

自分が見定められている感覚があった。

研究対象にされているのは自分の方ではないかと思えてくる。


その時だった。

巨人の胸部が赤く脈動する。

先ほどまでよりも明らかに強い光だった。


ティナの視線がそこへ向いた。

再生を始める直前にも同じ現象が起きていた。

違和感が確信へ変わり始める。


「なるほど」


ティナは小さく呟いた。

アルドの眉がぴくりと動く。

その反応が何よりの答えだった。


「クロナ様」


ティナが声を上げる。

クロナは振り向かない。

だが聞こえていることは分かっていた。


「胸部です。再生のたびに反応しています」


「核か」


「その可能性が高いと思います」


イエガンも赤い光へ視線を向けた。

そして豪快に笑う。

ようやく狙う場所が絞れたのだから当然だった。


「分かりやすくなりましたね」


アルドは即座に後退した。

今まで見せなかった緊張が表情へ滲む。

それを見たクロナは静かに拳を握った。


「当たりらしいな」


次の瞬間、巨人が大きく咆哮する。

胸部の光が激しく明滅した。

それに呼応するように全身の装甲が震え始める。


巨人はこれまで以上の速度で突進した。

巨大な拳が正面からクロナへ迫る。

谷全体が揺れるほどの圧力だった。


しかしクロナは避けない。

正面から拳を受け止める。

衝撃で地面が沈み込んだ。


アルドの目が見開かれる。

巨人の全力だった。

それを止められるとは考えていなかった。


クロナは拳を掴んだまま僅かに笑う。

余裕を誇示しているわけではない。

相手の力を測った結果の反応だった。


「少し強くなったな」


その言葉がアルドの神経を逆撫でする。

切り札を見せたはずだった。

だが評価はその程度だった。


イエガンが飛び出す。

大斧が唸りを上げながら振り抜かれた。

狙うのは当然、胸部の赤い光である。


「失礼しますよ、クロナ様」


斧が装甲へ直撃する。

激しい火花が谷を照らした。

黒い装甲へ深い亀裂が刻まれる。


巨人が苦しむように後退した。

胸部の光が不安定に揺れる。

再生速度も明らかに落ちていた。


「効いています」


ティナは確信を持って告げる。

観察結果に迷いはない。

弱点は間違いなくそこだった。


クロナは巨人を見据えた。

アルドもまた唇を噛み締めている。

戦いはまだ終わらない。


だが流れは変わり始めていた。

そしてアルドは理解する。

自分が追い詰める側ではなく、追い詰められる側になりつつあることを。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ