【第394話:国境の知らせ】
その日の夕方だった。
ティナは街道沿いの小さな宿場へ辿り着く。
旅人たちが行き交っている。
荷馬車の音も聞こえていた。
情報収集のため立ち寄る。
それも当初の目的の一つだった。
宿場の食堂へ入る。
中は思ったより賑わっていた。
商人たちが酒を飲んでいる。
護衛らしい冒険者も混ざっていた。
ティナは席に座る。
自然と周囲の会話へ耳を向ける。
「聞いたか。北の魔物国家の話」
商人の一人がそう言った。
別の男が頷く。
「最近はどこでもその噂だな。最初は冗談だと思ったが」
ティナの目が細まる。
静かに続きを聞く。
「俺の知り合いは実際に交易したらしいぞ。危険どころか、妙に秩序立っていたって話だ」
別の男が酒を飲みながら笑う。
「国って言うなら王もいるんだろ。魔物の王様なんて想像できねえな」
周囲から笑い声が起きる。
だが否定する者はいない。
ティナは静かに聞いていた。
そして内心で整理する。
噂は確実に広がっている。
しかもかなり遠方まで届いていた。
恐怖だけではない。
興味や期待も混ざっている。
これは大きな収穫だった。
当初の目的そのものと言える。
グリムファング王国の存在は知られている。
少なくとも商人層には浸透し始めていた。
ティナは窓の外を見る。
夕日が赤く沈み始めている。
帰るべき場所は決まっていた。
報告すべきことも山ほどある。
そして知らなければならない。
クロナがこの情報をどう受け取るのかを。




