39話 危険すぎる技
体に付いた小石を払いながら、田渕は立ち上がった。その様子を、スピツ騎士団は、顔をしかめて見ている。舞台上にいるスピツ騎士団は、ドランを含め、残りは四人だ。
どうやら打ち合わせをしていたらしく、ドラン達は、横に並び、それぞれが自慢の武器を掲げる。
「一斉攻撃! 神光剣!」
「雷神斧!」「螺旋突き!」「巨人撃!」
スピツ騎士団の武器が、技術によって様々な光を放った。それを、田渕に向かって振り下ろしてくる。
「♪転校しちゃう友達との友情を……永久凍結っ♪」
つるんっ!
ズテンッ ドタンッ バタンッ ベチンッ
田渕の歌で、石舞台が一瞬で凍結した。
「わぁ! 芸人さんみたいだ!」
足を滑らせてこけたドラン達に、田渕は目を輝かせる。ドラン達は立ち上がろうとするが、再び、全員が転ぶ。
「くっ……金属長靴を脱ぐんだ! 靴下もだ!」
ドラン達は、全身が金属鎧だが、膝から下は素足と言う、滑稽な姿になった。当然だが、観客はずっと爆笑を続けている。
田渕は、次は自分の攻撃番だと、剣を握って構える。
「行くぞっ!」
つるんっ ドテンッ
当然だが、田渕も激しく転んだ。
「あたたた……。そりゃそうか……。でも、大家さんなら、スケート靴を出せるかも。今度、遊んでみよう」
田渕が指をぱちんと鳴らすと、舞台の氷は全て消え去った。
ドラン達は、金属長靴を履きなおす事も忘れ、後ずさる。
「どいう事だ? 戦士職が……魔法を使った?」
「しかも……直径百メートルの範囲を、一瞬で凍結ですよ……」
「実は……魔導士だったのか?」
「なら、あの肉体の強さは何だ?」
「あのー、ちょっとちょっと……」
田渕が剣をぶんぶんと振りながら近づこうとすると、ドラン達は同じ距離を後ろに下がる。切りのない様子に、田渕は閃く。
「観客を飽きさせないように、そろそろ遠距離攻撃をしろって事かな? じゃあ、見栄えが良いのは……初めて使うけど……」
田渕は止まり、左手でVサインを作った。それを横にして、左目の外側に当てて、キメポーズを作る。
「♪あなたを探す 私の目から……♪」
田渕の歌に奇妙な気配を感じ取ったドラン達は、身構える。
「♪……レーザービーム♪」
カッ
田渕の両眼から、白く輝くビームが発射された。それが騎士の一人の肩を貫く。
「ぐわぁぁぁ!」
「わわわっ!」
田渕はふらふらとした足取りをし、顔をきょろきょろと振った。すると、レーザーが辺り構わず、周辺を薙ぎ払うようにばら撒かれる。
「なっ……うわぁぁぁ!」「ぎゃぁ!」
田渕が手で自分の目を塞ぎ、すぐ離した所、目からのレーザーは収まったようだった。
「びっくりしたぁ。眩しくて、殆ど見えなくなるんだもん」
田渕の前には、ドランしかいなくなっていた。後の三人は、戦闘不能なのか倒れている。
「これが……決勝戦って奴ですね!」
田渕が剣を構える。その向こうでは、ドランが小型の盾を捨て、長剣を両手で握って構えた。だが、そのドランの瞳には、諦めの色が出ていた。
「……我らの負けだ。まさか、こんな奴がミスチェル王国にいるとはな。本隊が総掛かりでも、お前相手では、一時間と持つまい」
ちなみにその本隊は、ゼラを除けば、大家によって数秒で無力化された。
「俺の最強の技、神剣ローゲルム固有スキル、真神光剣。受けてみてくれ」
ドランは、両手で握った剣を、大きく背まで振りかぶる。防御を捨てた、捨て身の一撃のようだった。
「わかりました。これで、勝負を決めましょう!」
田渕は、剣を両手で握り、右に体を捻って構える。足は、左足を上げて、右足だけで立った。ちなみに、田渕に剣道の知識など、一切無い。
「行くぞっ! 真神光剣!」
「ばっちこいっ! 一本足打法っ!」
カッキィィィンッ
田渕の剣は砕けた。そしてドランの長剣は、星になった。
「我が家に伝わる、神剣ローゲルムが……」
ドランは両腕をだらりとさせたまま、両膝を突いた。衝撃で左右の腕の骨は粉々になっている。
「優勝! タブチ! ……で良いんですよね?」
審判から声がかかり、田渕の優勝が決定した。派手な技の演出で観客の心を掴んだ田渕は、拍手の雨あられを受ける。
その後、ミスチェル騎士団は王族を保護し、闘技場の周囲にいたスピツ騎士団員達を捕らえ、闘技場の占拠は、未遂となった。
ミスチェル王城の北の森は、大規模な火災となっていた。
第二形態となって力を増したゼラだったが、基本が魔法職なだけあって、動き自体は大家のゴーグル仮面で捉えられない程では無かった。しかしそれでも、スピツ騎士団長であるドランを上回る速度だった。
「ちっ! そこぉ!」
バシュンッ ドォーン
大家のロケットランチャーが炸裂するが、当たった気配が無い。
「これは役に立たんおっ!」
大家はロケットランチャーを投げ捨てた。弾も同じ場所に捨てる。
「ガイグダン レフトアーム!」
空からの巨岩を、大家はガイグダンの腕の陰に隠れてやり過ごす。巨岩は強烈な勢いでガイグダンアームに当たり、砕け散った。
「ゴブリン(やつ)の魔力は無限なのかおっ! 炎でサーモグラフィーも役に立たないし、このままではまずいお!」
「なんだその箱型の手は! そんな巨大な物、この森では、木が邪魔で動くまい!」
ゼラの言う通り、大家はガイグダンの腕を置いてその場から逃げる。
「なにか良い道具は無いか、無いか、猫型ロボットの気持ちが良く分かるお!」
ドラえもん並みに、大家はタブレットから道具をまき散らして走る。
「奴は速い! こんなもの、使えないおっ!」
大家は、タブレットから大型の円盤を出して、投げ捨てた。
ザッ
正面に、ゼラが現れた。魔法職ながらその爪の威力は、大木をも引き裂く。魔族は、魔力はエルフ並みで、身体能力はドワーフに匹敵する。しかも、今は第二形態のなので、全ての能力が二倍となっている。
ズガァンッ ズガァンッ
マグナムの弾を食らい、ゼラはよろめく。
そこで、大家は、ビニールで包まれた小包のような物を、頭の上に掲げる。
「この爆薬で……」
だが、マグナムの弾痕は、周りの肉ですぐに埋められてしまった。
「驚異的な自己修復っ! まるでデビルガイグダンだおっ!」
大家は爆薬を投げ捨て、方向を九十度変えて、また逃げ出す。
ズウォッ
その大家に、風の刃が迫った。だが、大家のゴーグル仮面が気圧の変化を感じ取り、警告をゴーグルの液晶に表示させる。そして、ゴーグルからの指示通りに屈むと、風の刃は通り過ぎた。その刃は、大木を数本斬り倒す。
大家が見上げると、斬り倒された場所の空に、ゼラが浮かんでいた。いつの間にか背に大きな蝙蝠のような翼が生えており、それで羽ばたいているようだった。
「遊びは終わりだ。広範囲魔法 炎風陣」
ゼラの右手には炎、左手には、風が渦巻いている。二種の魔法を同時に使う、Sランク以上の技術だ。
しかし、大家は逃げなかった。ようやくゼラが、狙い易い場所に現れたからだ。
次話は 8/14 本日22時投稿です。




