↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
40/65

37話 VS魔族


 ゼラは、強く地面を蹴った。すると、先ほどの数倍の速度で、大家へ迫る。


「にょわっ!」


 大家は間一髪躱した。ゼラの爪が、大木に食い込んだ。


「これは……まずいお。ワタシは運動神経が自慢だけど、決してアスリートレベルとかでは無いお……」


 大木から爪を抜いたゼラは、大家へ向き直る。だが、大家は、手のひらを向けて、ゼラを制した。


「お前の変身を待っててあげたんだから、お前も、私の変身を待つんだお。これは、お約束だお」


「う……ん? オヤクソク? ……まあ良い。何をする気だ?」


 ゼラは、腕組みをした。はぐれと言うだけあって、変わり者の魔族のようだった。


 大家は、右手と左手を、左斜め四十五度に上げ、構える。


「へん……しんっ! とぅ!」


 大家はジャンプと同時に、タブレットを操作する。すると、大家の服が消えさり、次に、黒い服に包まれる。顔には、ゴーグル仮面(マスク)が装着された。お馴染み、アニーの登場だ。


「むっふっふ。キューティーハニーの如く、一瞬 全裸となってしまう欠点があるが、今は目を潰された盗賊と、ゴブリンしかこの森にはいないから、平気だお!」


「……もう良いんだな?」


 ゼラは、腕組みをほどいた。


 ああは言った物の、本当にゼラは人間の裸に興味が無かったのが分かり、大家はちょっとほっとした。


「食らえっ! 火弾!」


 ゼラの掌から火の玉が出た。しかし、すでに大家の姿は無い。


「どこへ? そこかっ! 火球!」


 ゼラが手を上にあげると、そこに大きな燃え上がる玉が現れた。だが、それを投げようとした瞬間、大家の姿が消える。


「速い! いやっ、俺の動きが読めるのかっ!?」

ぴと


 ゼラが、自分のこめかみに何かが押し当てられたのに気が付く。瞳だけ動かすと大家が大型の銃を持っていた。


ズガァンッ


 ゼラの首が捻じ曲がる。大家と反対側に吹っ飛んだ。だが、出血する側頭部を押さえながら、すぐにゼラは立ち上がって身構える。


「……くっ、何をされた? 斧の重い一撃のようだ」


 一般的に、女性が片手でマグナム銃を撃つのは不可能だ。だが、大家は、ガイグダンの世界の操縦者(パイロット)インナーを、黒い潜入服の下に着ている。筋力補助により数倍の力と、ナノテクノロジーによる衝撃吸収で、数倍の耐久力を獲得している。その割に、銃が古風なのは、ガイグダンの設定がそうなのだから、突っ込んではいけない。



ズガァン ズガァン


 ゼラが身を伏せると、後ろの大木に風穴が空いた。


「なんて速度の魔法だ……」


 ゼラの歯が、ぎりぎりと音を上げる。


 ゼラは、木の陰に隠れ、茂みの中へと移る。どうやら大家の攻撃は直線だと気づき、大家の側面に回り込んだ。そして、そこから飛び出す。


「竜牙爪っ!」


 腕を振り上げたゼラの眉間に、ぴたりとマグナムの銃口が付けられた。


ズガァンッ


 仰け反ったゼラは、そのまま空中を回転して木にぶち当たる。そのゼラに、大家はちっちっちと、人差し指を振る。


「体温出し過ぎだお」


 どうやら、大家のゴーグル仮面(マスク)には、赤外線を感知するサーモグラフィーの機能もあるようだった。


 しかし、魔族の体も頑丈なようで、マグナム弾でも、致命傷にならないようだった。おまけに、回復力も相当で、最初に撃たれた太ももの傷は、すでに癒えてしまったようだった。


「時間をかけさせないお」


 大家の声が響く。


 ゼラは、再び木の陰に隠れ、ダメージの回復を図っている所だ。そこに、何かが発射されたような音が聞こえる。


バシュンッ


 今度は、高速は違いないが、ゼラの目で追える速度だった。その何かが、ゼラの足元に突き刺さる。


ドォーン!


 地面が破裂し、マグマが噴き出したかのようにゼラには思えた。大家が放ったのはロケットランチャーで、この世界には、破裂と言う概念までしか無く、爆発と言うような現象は、魔法にも存在しない。


 吹き飛ばされたゼラは、焦げた左足が、しばらくまともに動かないのを感じた。その足を引きずりながら隠れようとすると、側にあった茂みから、ピーと言う小さな電子音が聞こえて来た。


バァーンッ


 センサー式の爆薬だった。ゼラは何から攻撃を受けたのかも分からず、地面に転がる。


 ゼラの様子を見て、大家は担いでいたランチャーの狙いを、空へと向ける。


「そろそろ止めとくお? グロいのは勘弁だお」


 ゼラは、ふらふらと立った。だがその目は、余裕に満ち溢れていた。


「ふん……。俺をここまで追い詰めるとはな。だが、魔族(おれ)には、この先があるのを知らないらしい。まあ、当然か。変形後を見て、生き延びた者はいないだろうからな。S級冒険者であってもな」


「ほう……変形とな?」


 大家の目はキラキラと輝いた。


 ゼラは、力を全身に込めた。すると、筋肉が盛り上がり、手足の太さが倍になる。


「げっ! 変形って、第二形態の事だおっ! こいつら(ゴブリン)って、そんなことまで出来るのかお!」


 ゼラは一回り大きくなり、顔が凄みを持った。左右の角も、倍の大きさになり、形も禍々しさを増した。


「豪火炎!」


 ゼラが腕を横に振ると、大家が知る火炎放射器の十倍の規模の炎が、広範囲に撒かれる。


「あちちっ!」


 大家は木の枝に飛び上がるが、炎は当然に上に追って来る。大家は別の枝に飛び移ると、猿のように枝を飛び移り、枝を盾にして炎を防ぐ。


「あっ! あいつらっ!」


 大家は、まだ地面で苦しんでいる騎士達を見つけ、下に降りて走り寄る。


「炎が来るお! 速く逃げるんだお! いつまで涙を流しているつもりだお!」


 苦しませた張本人は大家なのだが、騎士達は犯行を目撃していないので、大家に従い、西側にある街道へと逃げる。


 皆を逃がし、振り返ると、炎の中から、ゼラが現れた。


「形態を変えた時って、HPが全回復するのは、どうやら本当のようだお……。異世界豆知識として、田渕君に教えられれば良いけど……」


 大家は、ゼラの力が、自分を大きく上回ったのを感じた。

 



次話は 8/13 本日21時投稿です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。