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星の覚悟


 都外れにある酒楼(しゅろう)では、真夜中でも酒に酔った人々の声が響き渡っていたが、二階の端にある一室だけは流れる空気が違った。


 広い部屋の奥で、燈惺(とうせい)翔貴(しょうき)は酒が置かれた台を(はさ)み向き合っていた。


 二人とも酒には手を付けておらず、燈惺は焦る気持ちを抑えるように小さく息をついた。


「…星華(せいか)の様子は?」


麗禾殿(れいかでん)での暮らしも慣れてきたようだ。記憶はほとんど戻ったようだが、相変わらず…事件の真相に関わることは何も話さない」


 流星(りゅうせい)祭りの夜から、二十日が過ぎた。あの日、星華は翔貴と共に(りょう)家を去った。


 あれから事が大きく動いた。


 燈惺と星華が離縁したという噂が(またた)く間に広まり、星華は王の命により密かに王宮に住んでいる。


 死神と悪女の噂は、都中に広がった。


 今回もどこからか話が伝わり、悪女が男遊びをやめなかった、義理の妹をいじめ尽くしたため死神が悪女を追いだしたなど、事実無根(じじつむこん)の噂が都中を飛び交っている。


 星華は(らん)家に戻ることもできず翔貴の幻華荘(げんかそう)に身を寄せていたが、何者かによりそれが王の耳に入ってしまった。


 今まで翔貴は目立たぬように、あくまでお世話になった王弟夫人の姪であるから星華に目をかけていると、見えるように慎重に動いてきたようだが、王も翔貴の真の想いに気づいたようだ。

 

「陛下が星華を王宮へ上がらせたのは…予想外でした」


「何者か余計なことを父上の耳に入れている。これまで隠してきたことが、こんなに簡単に崩れていくとはな。おそらく黒幕はずっと機会をうかがっていたのだろう。お前にだけは言っておくが、今回のことがあり…父上に星華への想いを打ち明けた」


 冷静にその事実を受け止めるが、燈惺は内心穏やかではいられなかった。


「陛下はなんと…」


 翔貴はふっと口角を上げ自嘲(じちょう)する。


「上手くは隠して来たつもりだが、父上は気づいていたようだ。星華とずっと共にいたいと告げたが…父上は何も言わなかった」


 そう吐き捨てると、翔貴は酒に手を付ける。似合わない豪快な手つきで酒を一気に飲み干した。


 翔貴は今一番王座に近い王子だ。


 第一王子の星華への行いが耳に届いたこともあり、陛下は余計に翔貴へ期待をかけている。


 そんな翔貴が、陵家から離縁されたばかりの星華を公に(かくま)うことを(こころよ)く思っていないのだろう。


 王の方から、星華をそばに置きたいのなら、侍女という形で王宮へ上がらせなさいと内密に命令があったという。


 王命に逆らうことはできない。


 表向きは翔貴の侍女として、星華は翔貴の王宮での住まいである麗禾殿(れいかでん)にいる。


 悪女の噂は有名だが藍家に閉じ込められていたおかげで、実際にその悪女の風貌(ふうぼう)を知る者は少ないため、星華が王宮にいることは公にされていない。麗禾殿で目立たぬように過ごしているという。


 星華は自らの意思で陵家を出て行った。


 彼女は困った時、無意識だろうがいつも翔貴を頼る。それはきっと幼い頃から、彼女に染みついたものだ。


 幼い頃から星華を見てきて、燈惺でも知らない星華の過去を全て知っている翔貴により、誰よりも尽くされ大事にされているのだろう。


 安らかに過ごせていたら良いと思う反面、それを与えているのが自分以外という事実がどうしても憎らしい。誰よりも大切に守ると決めたはずが、今は燈惺の存在が彼女を酷く苦しめているのだろう。


「まだ離縁したつもりはありません…」


「それでも、星華は離縁を認め王宮へ上がった」


「おそらく…行かなければならない理由があるのでしょう」


 燈惺の(とげ)を含めた言葉に、翔貴の目が鋭く変わる。燈惺も翔貴もお互いにまだ、星華のことを諦めきれていない。


 翔貴は天を(あお)ぎため息をついた。


「それは…わかっている。星華は他人のことばかりを考える子だ。私達を守るための行動しかしないだろう。星華が話さないなら…真相にたどり着くしかない。何か手がかりは?」


公主(こうしゅ)、礼風と、手を組んでいた者を辿(たど)りましたが、黒幕はわかりませんでした。証拠を全て消している。二人ともやったことは許せませんが、上手く弱みに付け込まれ利用されたようです」


 春搖(しゅんよう)は何者かと手を組み、流星祭りの夜に騒ぎを起こした。


 陵家夫婦の中を割くためとでも(そそのか)されたのだろうが、敵の狙いは燈惺に傷を負わせることだったのだろう。予想以上の怪我を負った燈惺を見て、反省の色は見せていた。


 礼風は、星華から腕輪を奪う役割を担わされていた。礼風も燈惺と同じく兄の死を疑い、医女として権力者に近づき真相を探り続けていた。


 敵は礼風に上手く星華への疑いを持たせ、陵家に近づくように仕組んでいたようだ。


 彼女たちはそれぞれの想いのために動いただけだ。利用されているなど想ってもいなかったのだろう。


 黒幕の目的を果たした今、春遥と礼風は見捨てられた。


 それぞれの想いを把握し利用し、自らの手を汚していない。卑怯で人の心がない相手だ。


 燈惺一人で敵う相手ではないと、痛いほど思い知らされた。


「雨衣と蓮承のおかげで、とんでもない事実が分かりました。兄は母の死を探るために皇守衛になり、王弟夫人の護衛と同時に、当時行方不明になった者たちについて調べていました。おそらく何かあると思っていましたが、行方不明になっていたもの達は、龍涙(りゅうるい)の力を持っていたようです」


「何だと…」


 そして、今もその行方不明者が増えだしている。つまりその者たちの命が、犠牲になっている可能性がある。


 龍涙(りゅうるい)龍夢(りゅうむ)より珍しい力と言われているが、国中を探すとなれば星華以外にも龍涙を持っている者はいると言う。


 自らの命の代わりに、他人の命を救う力だ。


 本人も家族も龍涙を持つことを隠して暮らしているため、その事実は隠されてきたようだが、雨衣(うい)蓮承(れんしょう)は行方不明者の家族に会いに行き詳しく話を聞いてきてくれた。

 

 実は星華には話していないが、流星祭りの夜、雨衣と蓮承までも何者かにより襲われていた。


 二人の命は無事だったが、すぐに治らないほどの怪我を負わされた。刺客は顔を隠しており、大人数で襲ってきたという。


 雨衣は腕が立つし、蓮承も彼女ほどではないが武術の覚えはある。そんな二人に怪我を負わせるなどただものではない。


 おそらく、燈惺への目的と同じで星華から離したかったのだう。星華を孤立させたがっている。


 雨衣は怪我を負った以上、星華のそばにいれないからと調査の協力を申し出てくれたので、行方不明者と龍涙についての調査を頼んだ。


 彼女は一度、星華の力に救われたことがあると言う。また、龍涙のことは玄士や睡月にも打ち明けていないため雨衣ほどの適任者はいない。


 しかし、蓮承が大人しくしているわけもなく聞き耳を立てられ、星華の力を知られてしまったが、蓮承は信用できる。雨衣のことも命懸けで守るだろう。


 二人の調べでは、龍涙にも力の差があり、一回しか力を使えない者もいると言う。星華は幼い頃から何度も龍涙を使ってきているため、特に強い龍涙をもつのだろう。


「兄も…そのことに気づいていた可能性が高いです」


「ということは、黒幕は星華の龍涙を狙っていることで間違いないのか…」


 翔貴と燈惺は、自然とお互いに視線を合わせる。彼女の身に危険が迫っていると言う緊張感が走る。


 

「今…敵は星華を孤立させ、王宮へおびき出しています」


 翔貴の話では、星華の腕輪は前大巫女が星華の力を抑えるために用意してくれた巫具(ふぐ)だという。


 今までは腕輪が龍涙の力を抑えくれていたが、腕輪を壊されてしまった今は、他人の傷や病をすぐに負ってしまう。そのため、あの夜に傷を負わされた燈惺は、陵家を出て行く彼女の手を掴むことができなかった。


 黒幕がそこまで読んで行動を起こしているとしたら、燈惺が星華を深く想っていることを知っている人物だろう。


 燈惺は後悔に(さいな)まれながら右手を見つめる。泰惺(たいせい)に許されなくても、星華に拒否されたとしても、あの手を離してはいけなかった。


 今は会いたいと言う欲望を必死に抑え、傷を治すことに専念しているが、彼女に会えない一秒が果てしなく長く感じられる。


 屋敷では一歩進むたびに星華が残した痕跡(こんせき)を見つけては、そばにいない彼女を想う。


 陵家を去った日の星華の顔が忘れられない。


 もしも、もう星華に会えないままだったとしたら、そう思うだけ恐ろしいほどの恐怖に襲われる。


「王宮の中にいて、証拠をもみ消す力があるとするならば、相当の地位にいる者の仕業となる。ここ数年の間、龍涙の力を欲するものか…」 


 王も長い間、体調を崩している。また、王が溺愛する第四王子の諒貴(りょうき)も体が弱い。そのため、翔貴はずっと諒貴を星華に会わせていなかった。雲妃の父もまた体を壊しているという噂もある。


 翔貴は台に両(ひじ)をついて深く息を吐いた。彼は今、父親さえも疑わなければいけない苦しい立場だ。


 燈惺の予感が正しければ、敵は今までも龍涙を持つ者を見つけ、自分かもしくは誰かの命を引き延ばしてきている。息を潜め上手く隠れていたてもりだろうが、今星華を欲するために派手に暴れ出した。


 敵は焦っている可能性が高い。


「早く見つけなければ…」


 燈惺は台の上で、爪が食い込むほど拳を握った。


 嫌な予感がすると、燈惺が皇守衛で身につけた直感が訴えてきている。


 翔貴はまたお酒を一気に流し込み、何か言いたげに燈惺を睨んだ。


「…お前はこうして協力してくれているが、一つ尋ねたい。星華の言葉を鵜呑(うの)みにするわけではないが、お前の兄の死に星華が関わっていることは間違いない。お前は…どうするつもりだ?」


「殿下はもう分かっているでしょう」


 光輝く星を知ってしまった今、星がなければ燈惺の世界は暗闇だ。


 (よど)みなく答えた燈惺に、翔貴はそうだなと呟くと立ち上がり部屋を出て行く。 


 密会が終わり人知れず酒楼を出て行く翔貴の背中を見送りながら、燈惺は翔貴の帰りを待っている星華を想像し、きつく目を閉じる。


 翔貴に一つ話していないことがある。(かく)に話を聞きにいった蓮承からの報告で、一つ気になる点があった。


 王弟はなぜ、幼い頃から星華を愛し守り続けていた翔貴ではなく、自分を星華の夫に選んだのか。


 もしも燈惺の抱いた一抹の不安があたっていたら、翔貴にはあまりにも残酷な話だ。










 もう亡き禾妃(かひ)は、王が最も寵愛(ちょうあい)した女性だ。その(あかし)に、第二王子と第四王子の母である。


 その美しさは、絶世の美女と(たた)えられ目を引くものがあった。内面も穏やかで聡明な人だった。


 王は禾妃(かひ)を王妃にと望んだが、身分の差がそれを許さなかったと聞いている。王はそんな愛する妃へ麗禾殿(れいかでん)を贈った。


 麗禾殿(れいかでん)は王宮の(はし)にあるものの、広さと豪華さではどの宮殿にも負けない。その華やかさの反面、驚くほど人気がなくとても静かな場所だ。


 翔貴は用心深く、右腕の苑士(えんし)と必要最低限のお付きしかそばに置いていない。


 表向きはその一人となるために、星華は侍女(じじょ)として麗禾殿へ上がった。


 翔貴は昔から、星華に対しては人一倍過保護だ。そんな翔貴が身の回りの世話をさせてくれるはずもなく、逆に王子である翔貴により世話を焼かれている。


 なぜ、王がこんな強引なやり方で星華を王宮へ上がらせたのか。


 あの方が、動いているのね。


 翔貴を巻き込む形になったが、あの方が望む通りに王宮へ自ら上がった。それが今の星華に出来ることだ。


幼き自分が知った真実や、己の罪は、重くのしかかり毎日後悔と悲しみの(うず)に襲われる。


 燈惺から大事な兄を奪ったくせに、陵家でとても幸せに暮らしていた。睡月、蓮承、雨衣たちの顔を何度も思い出しては、その日々が幸せすぎたほど苦しみが大きくなる。


 気を抜くと、どうしようもできない感情が込み上げ、すぐに立ち止まってしまう。涙を(こら)えるために唇を噛み締めた。


「燈惺…ごめんね…」


 だめだとわかっていても、彼に会いたくなる。


 その度に、涙を荒々しく(ぬぐ)う。


 次は絶対に守り通すと心の中で繰り返し、庭に咲き誇る目の前の白幻花(はくげんか)の木を見上げた。翔貴の屋敷にも植えられていた禾妃(かひ)が大好きだった木だ。


 麗禾殿(れいかでん)の中庭は、外から全く様子がわからない仕組みに作られている。きっと王は誰にも邪魔されない時間を禾妃と過ごしたかったのだろう。


 王に贈られたこの木の下で、禾妃はいつも王を待ち続けていた。


 星華は夜な夜なこの中庭で、まるで誰かを待つように白幻花(はくげんか)を眺めていた。最初は体を壊すと翔貴に止められていたが、星華に必要な時間だと悟ったのかもう(とが)めることもなくなった。


 後ろから聞こえて来た小さな足音に、星華は胸を震わせた。


 振りかえると、ずっと待っていた人がようやく訪れてくれた。彼女は相変わらず無邪気な笑顔を浮かべている。


「来てくれると…思ってたわ。桃蘭(とうらん)


「神殿を抜け出すのも大変なのよ。星華、貴方は全く変わっていないわね」


 桃蘭は、燈惺といる時に出会った巫女(みこ)だ。


 今もあの時と変わらない巫女装束姿だが、明らかに何かが違う。


 前大巫女(おおみこ)の死により子供のような言動になってしまったと言われていたが、龍夢(りゅうむ)と言う予知夢に長けているため今の大巫女に世話されていた。


 確かにあの時は、表情、行動全てが子どものようだったが、今目の前にいる彼女の目はしっかりしている。星華を見てふっと大人のような笑みを零した。


「桃蘭、貴方はずっと一人で…耐えていたのね」


 彼女は生き残るために、わざと記憶を失い頭がおかしくなった振りをしていたのだ。その聡明さを隠し続け、一人でどんなに孤独で辛い日々を過ごしてきたのだろう。


「貴方の両親が殺された後、あの人は大巫女様に刃を向けた」


「やはり巫女たちの不審死もあの方のせい…。私の…せいだわ」


 両親が命にかえて星華を守ったが、その代わり大巫女たちの命が使われたのだ。


 あまりの恐ろしさに崩れ落ちそうになる体を桃蘭が支えてくれた。


「そんなことはない。貴方の力だけは…守り通さなくてはいけないと私は大巫女に託されたのよ。あの方が生きるか、貴方が生きるか。それでこの国の運命が決まると」


「私にそんな…全て忘れて生きてきてしまったのに」


 守られるしかできない自分は無力だ。


「過酷な道を一生懸命に生きてきたこと…よく知っているわ。私はずっと視ていたのよ」


 桃蘭は星華の頭をお姉さんのように優しく撫でた。


 思い出した記憶の中で、星華は桃蘭と友人だった。桃蘭は生まれてすぐに前大巫女に引き取られ、幼き頃からこの王宮で過ごしていた。


 初めて出会った日も、桃蘭はこの前王宮で見かけた時と同じことを言って駆け寄ってきた。


『ねえ貴方、面白いものを持ってるわね。私と遊びましょう』


 その記憶に、涙が零れ落ちる。


 同じ人知れぬ力を持つ幼き二人が仲良くなるには時間がかからかった。


 桃蘭は神殿を抜け出しこっそりと星華に会いに来ては、短くも濃い時間を過ごした。あまり会えなかったが、秘密の力を共有した大事な友人だった。


 彼女は頭が可笑しくなった少女を演じ、ずっと星華が記憶を思い出す日を待っていたのだ。


 泣いている星華の涙を(すく)うと、桃蘭は元気づけるように、星華の両肩に力強く手を置く。


「良く聞いて。私達は特別な力を授かっているけれど、決して神ではない。ただの人間よ。大巫女様に運命を変える力ではないと教えられた。特別な力を持っていても、どうしようもないことばかり。運命を変えるのは私達ではないのよ。だけれどね、亡き大巫女が言っていたわ。人と人の縁が運命を変えることはあると」


「…縁?」


 首を傾げると、桃蘭は穏やかな笑みで深く頷いた。


「貴方と陵燈惺の縁」


「もしかして、貴方達には視えていたの?」


 星華が燈惺と出会い想いあうこと、黒幕がどのように動くかも。そして、星華と燈惺の縁がずっと繋がっていたことも。


 しかし、桃蘭はまさかと大きな首を振った。


「私にだって全て見えるわけではないのよ。あの時はそこまでは視えてなかった。だからこそ未来を変えたくて、王弟は彼に貴方を託した。二人の未来を予感していたのはただ一人」


「…伯母様ね」


 彼女を思い出すだけで、涙が堪えきれず唇が震えてしまう。いつだって笑顔を浮かべ、彼女こそ星のような人だった。


 そして、彼女もまた星華を守るために命を失った一人だ。


「貴方と陵燈惺の未来は、龍夢でも決して視えなかった。貴方に待ち受けているのは過酷な運命、陵燈惺に視えたのは悲しい運命。実は絶対にありえないわって、王弟夫人に言ったけれど彼女は運命かもしれないって喜んでいた。だから、この前王宮で貴方と陵燈惺の姿を見た時、あの死神と呼ばれる男が笑顔を見せたから驚いたわ」


 重い空気が嘘のように、桃蘭はおどけながそう言った。


 燈惺との縁が運命だと言われたら、素直に嬉しい。運命であってほしいと今でも願わずにはいられないが真実は実に残酷だ。


「桃蘭、私は燈惺に出会えて幸せだった。でも、燈惺は私のせいで…」


 大事な人を失った。 


 襲いかかる過去の記憶に耳をふさいだ星華の手を桃蘭はゆっくりと下ろさせる。そして、星華の両頬に手を置き、自分の方を真っ直ぐ向かせた。


 彼女は巫女特有の吸い込まれるような説得力のある目をしている。


「出会えて幸せだったかは、貴女が決めることではないわ。陵燈惺が決めること。だから、貴方は思うように動いたらいい」


 やっぱり桃蘭は、星華が何をしようとしているか視えているのだろう。


 ありがとうと呟きながら、星華は桃蘭に勢いよく抱きついた。


「もう覚悟はできてる。あの方達がほしいのは…私だもの」


 星華と桃蘭は、大切な人達を奪った者を知っている。


「止めないかわり、必ず私も一緒よ」


 桃蘭は一度体を離すと、無邪気に笑って星華の両手を強く握る。彼女には結末が見えているのかもしれないが、星華はもう迷うことはなかった。





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