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『Loser?!三国志の袁紹軍で死体拾いから天下を目指す~瀕死の顔良と文醜を仲間にして、第四の勢力を興す~』  作者: 倦犬Kenken


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30/44

北国に名を轟かせる鋸歯連環刀

午後になり、勝負の時間が近づくにつれて、稽古場の周囲には次第に人が集まってきた。


先に姿を現したのは鉄牛だった。


手には八十斤もある、まるで大きな西瓜のような形をした鉄槌を持ち、身には夏が彼のために用意した梭子連環甲をまとっている。いかにも威風堂々とした姿だった。


鉄牛は稽古場の中央に立つと、周囲を見回し、さっそく鉄槌を振り回し始めた。


ブン! ブン! ブン!


重い鉄槌が、彼の手の中で上下左右に動く。頭上高く振り上げたかと思えば、今度は身体の横から大きく薙ぎ払う。


動きそのものはまだ洗練されているとは言い難い。だが、八十斤もの鉄槌をこれほど軽々と扱えるのだから、見ている者たちが感心するのも無理はなかった。


「いいぞ、鉄牛!」


「もう一度やってみろ!」


歓声を聞いた鉄牛は、ますます調子に乗り、さらに何度か鉄槌を振り回した。


そのとき、周囲の歓声がふっと途切れた。


顔良がやって来たのだ。


紫色の鉄鋼魚鱗甲を身にまとい、手には長刀を握っている。落ち着いた足取りで稽古場へ入ってくると、周囲の者たちは自然と道を空けた。


そして、皆の視線は彼の手にある武器へと向けられた。


鋸歯連環刀。


刀身は冷たい光を放ち、刃の片側には細かな鋸歯が並んでいる。風が吹き抜けると、刃の周辺からかすかな音さえ聞こえてくるようだった。


「あれが顔将軍の鋸歯連環刀か!」


「やはり、ただの武器ではないな……」


俺と老陳は、それぞれ稽古場の両端に立ち、この勝負の安全を見守ることにしていた。


二人が所定の位置につくと、俺は周囲の者たちに簡単にルールを説明した。


まず、今回はあくまで腕試しであり、勝負は寸止めとする。故意に相手を傷つけてはならない。


次に、どちらかが危険を感じたり、これ以上続けられないと判断したりした場合は、いつでも勝負を中断できる。


そして、俺と老陳が場外から二人の動きを見守り、危険があると判断したら銅鑼を鳴らす。その合図を聞いたら、どんな動作の途中であっても、双方とも直ちに手を止めなければならない。


説明を終え、俺は二人に目を向けた。


「今の話は分かったな?」


鉄牛がうなずく。


顔良も何も言わず、軽くうなずいた。


鉄牛は一歩前に出ると、顔良に向かって深く頭を下げた。


顔良はわずかに目を細めた。


その瞬間、それまでどこか気楽な雰囲気だった稽古場が、急に静まり返った。


顔良の身から放たれる気配は、普段とはまるで違っていた。


幾度も戦場をくぐり抜けてきた武将が、敵を前にしたときに自然とまとう、あの圧迫感だった。


顔良は鉄牛を見据え、静かに告げた。


「来い」


鉄牛は、さすがに最初から全力を出すつもりはなかった。


何しろ相手は、河北にその名を轟かせる第一の名将である。普段どれほど自信満々な鉄牛でも、これを普通の訓練と同じように考えるわけにはいかなかった。


まずは六割ほどの力に抑え、両手で鉄槌を握る。高く振り上げた鉄槌を、そのまま顔良の頭上めがけて振り下ろした。


ヒュッ!


重い鉄槌が風を切って落ちてくる。


顔良は両手で刀を握り、刀身を横に構えて、その一撃を受け止めた。


ガキィン――!


鈍い金属音が稽古場に響いた。


鉄牛は、手にした鉄槌が突然強い力で弾き返されたように感じた。両手が痺れ、危うく握りを失いかける。


内心驚いたものの、それ以上に興奮していた。


「おおっ!」


鉄牛は止まらなかった。すぐに握りを整え、腕をひねると、今度は左側から鉄槌を横薙ぎに振るう。


顔良は左手をわずかに持ち上げ、再び刀の柄に近い部分でその一撃を受け止めた。


ガキン!


またしても金属音が鳴り響く。


鉄牛が鉄槌を引き戻し、体勢を立て直そうとしたときには、顔良の動きのほうがすでに速かった。


手首を返したかと思うと、長刀が鉄牛へ向かって伸びてくる。


鉄牛は半歩後退し、慌てて手にした大鉄槌で受け止めた。


二つの武器が再びぶつかる。


だが、体勢を整える前だったため、鉄牛は十分に力を込められない。そのまま押し返され、三歩ほど後ろへ下がった。


まだ足元が定まらないうちに、顔良の鋸歯連環刀が高く振り上げられる。


俺と老陳は、それを見て同時に息を呑んだ。俺はすぐさま銅鑼を鳴らした。


「止めろ!」


ガン! ガン! ガン! ガン!


銅鑼の音が稽古場に響き渡る。


鉄牛の鉄槌が顔良の刀に届く、その寸前だった。


顔良は手首をわずかにひねった。下を向いていた刀の刃が、千鈞の差で向きを変える。


きらりと光る刃先は鉄牛を避け、代わりに刀の背が下へ向いた。そのまま鉄槌を強く叩く。


パシッ!


銅鑼の音と武器のぶつかる音、そして俺と老陳の制止の声が、ほとんど同時に重なった。


二人はようやく動きを止めた。


鉄牛は自分の鉄槌を見下ろし、それから顔良に目を向けると、不満そうに声を上げた。


「まだ終わってないぞ! どうして止めるんだ?」


俺と顔良は顔を見合わせ、思わず大笑いした。


顔良は刀を収めると、何気なく老陳に手渡し、こちらを振り向いた。


「龍、大きな鉄棍を一本持ってきてくれ。鉄牛と、今度は五十合ほどじっくり打ち合ってみたい」


「分かりました!」


先ほどの数合だけでも、二人の実力差は十分に見て取れた。


さすがは河北に名を轟かせる第一の名将、顔良である。


わずか数手で、完全に勝負の主導権を握っていた。これが本物の戦場であれば、鉄牛はとうに倒されていただろう。


しかし、顔良はどうやら、このまま終わらせるつもりはないらしい。


鉄牛の怪力にも興味を持ったようで、この大男がどこまでやれるのか、確かめてみたくなったのだろう。


俺は部下に鉄棍を取りに行かせた。


ほどなくして、孫江と孫新港の二人が、曹軍との戦場から回収してきた鉄棍を何本か、息を切らしながら運んできた。


どれも本来は收屍隊が回収した物資である。まさか今日、こんな形で役に立つとは思わなかった。


顔良はその中から、長さ一メートル五十から六十センチほど、重さ五十斤前後の太い鉄棍を一本選んだ。


鑌鉄で作られたもので、もとは曹軍の千夫長が使っていた武器らしい。


顔良はそれを受け取ると、重さを確かめるように軽く持ち上げ、手の中で何度か振ってみた。


そして改めて構えを取り、鉄牛に目を向ける。


「来い!」


鉄牛も再び、大きな鉄槌を構えた。


今度は先ほどのように力を抑えず、八割ほどの力を込める。両手で柄を強く握り締め、顔良めがけて鉄槌を振り下ろした。


顔良も避けようとはしなかった。


手にした鉄棍を持ち上げ、正面からその一撃を受け止める。


ガァン――!


大きな金属音が周囲に響き渡った。


今度は二人とも腕に痺れを感じ、それぞれ一歩ずつ後ろへ下がった。


鉄牛は自分の両手を見下ろし、興奮したように笑みを浮かべる。


顔良も小さくうなずいた。


「なかなかやるな!」


その言葉が終わるか終わらないかのうちに、鉄牛は再び前へと踏み込んだ。


二人は間合いを詰め、鉄槌と鉄棍を何度もぶつけ合う。重い金属音が、稽古場に次々と響き渡った。


鉄牛の力は、やはり並外れていた。振り下ろす鉄槌の一撃一撃に、十分な重みがある。


一方の顔良は、豊富な実戦経験と正確な動きで、その攻撃を受け止めながら、反撃の機会をうかがっていた。


最初のうちは、二人とも慎重に動いていた。


だが、打ち合う回数が増えるにつれ、鉄牛も次第に調子をつかんできたようだった。攻撃の動きが、少しずつ滑らかになっていく。


いつの間にか、二人は二十合、三十合近くも打ち合っていた。


稽古場を囲む人々の歓声も、次第に大きくなっていく。


「鉄牛、いいぞ!」


「鉄牛、頑張れ!」


「收屍隊、鉄牛を応援しろ!」


「顔将軍、頑張れ!」


「さすがは河北第一の名将だ!」


「いや、天下第一の猛将だ!」


見物人たちは二人の勝負に夢中になり、思い思いに声援を送っていた。


俺は場外から二人の打ち合いを眺めながら、少し意外に感じていた。


鉄牛は依然として押され気味ではあるものの、顔良を相手にこれだけの回数を打ち合えている。正直、俺が当初考えていたよりも、ずっと健闘していた。


そして顔良も、打ち合うほどに、ますます活気づいているようだった。


そうしているうちに、二人の勝負は、ついに四十合目に達した。

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