収死隊の武術訓練とは?整列と規律
鉄牛は訓練を続ける一方で、兵士たちに収尸総隊の仕事にも参加させるようになった。老陳から指示が出れば、訓練の予定を調整して作業に加わる。作業が終われば、再び訓練に戻る。
最初は不満そうな者もいたが、三人が去ったこともあってか、露骨に指示を無視する者は減っていった。
訓練の内容についても、鉄牛は私が以前伝えた考え方を意識しているようだった。
兵士たちに、ただ力任せに武器を振り回させるのではなく、互いの位置を確認し、攻撃と防御を助け合うように指導している。
もちろん、まだ十分とは言えない。
二十人ほどの兵士たちは、もともとの出身も経験も違う。長年一緒に戦ってきた精鋭部隊のように、すぐに息の合った動きができるわけではない。それでも、少しずつ仲間の存在を意識するようになっていた。
私は何度か様子を見に行き、必要なところだけ短く指示を出した。
まずは、二人一組になって互いに打ち合う訓練を続けさせた。一人が攻撃を担当し、もう一人が防御と援護を担当する。ある程度慣れたら、今度は役割を入れ替える。
その後、全員を二組に分け、互いに対抗する訓練も行わせた。
「自分たちで考えて試してみろ。負けたなら、なぜ負けたのかを考える。勝ったとしても、もっと良いやり方がなかったかを考えるんだ」
私はそう告げるだけにとどめ、細かなやり方は鉄牛たちに任せた。
数日後、再び小隊を訪れると、以前よりも互いに声を掛け合う姿が増えていた。
「左を守れ!」
「後ろだ! 前ばかり見るな!」
そんな声が時折聞こえてくる。
まだ動きが揃わないこともあるが、少なくとも自分一人だけで戦おうとする者は減っていた。
私はしばらくその様子を眺めてから、地面に簡単な配置図を描いた。
互いに声を掛け合うだけでは、まだ足りない。隊列を整え、命令に従って動くことも覚えなければならない。
私は兵士たちをそれぞれの位置に立たせ、正面、左、右、後方の役割を確認させた。
まず全員を前方に向かせ、そのうえで指示に従って方向や位置を変える訓練を始めた。
「全員、前進!」
「左側の三人、前へ!」
「残りはその場を維持!」
「後方の二人、右側へ回れ! 側面を守れ!」
最初のうちは、皆の動きがばらばらだった。進む方向を間違える者もいれば、命令を聞いてから動き出すまでに遅れる者もいる。自分の動きに気を取られ、隣にいる仲間の位置を忘れてしまう者もいた。
私は彼らを叱りつけることなく、何度もやり直させた。
一度でできなければ、もう一度。
それでも駄目なら、さらに繰り返す。
全員が命令を聞き取り、自分がどこへ動くべきなのか、移動した後に何をすべきなのかを理解するまで続けた。
さらに数日が経つと、私は別の問題にも気づいた。
兵士たちの体力や戦闘経験には、それぞれ差がある。経験豊富な者なら、自分の判断で敵に対処することもできるだろう。だが、普通の兵士たちがそれぞれ違う武器を使い、防御の仕方までばらばらでは、乱戦になったときに互いの動きを合わせられず、あちこちで隙が生まれてしまう。
そこで、攻撃にはひとまず長槍と刀の二種類を中心に使わせることにした。どちらを持たせるかは、それぞれの体力や得意不得意に応じて決める。
防御についても、共通の決まりを設けた。少なくとも隊形が崩れていない間は、勝手に自分の持ち場を離れてはならない。目の前の敵を追いかけるあまり、仲間の側面や後方を無防備にしてしまうようなことは避けなければならない。
弓兵については、今のところ十分な人員もおらず、弓矢も訓練に必要な数を確保できない。残念だが、しばらくは見送るしかなかった。
こうした方針を鉄牛と数人の伍長に伝え、引き続き訓練を続けさせた。
十日も経たないうちに、鉄牛の小隊には目に見える変化が現れ始めた。
本格的な訓練を積んだ精鋭部隊にはまだ及ばない。それでも、整列し、隊形を変え、攻撃の際には互いに援護することが、少しずつできるようになっていた。
何より、以前のように自分の力だけを頼りにするのではなく、仲間と一緒に動こうとする意識が生まれていた。
私はその成果に、なかなか満足していた。
そこで、この訓練方法を収尸総隊全体にも段階的に広めることにした。
負傷が癒えておらず、訓練に参加できない傷病兵を除き、残りの者には全員参加を命じた。ただし、毎日どれだけの時間を訓練に充てるかは、それぞれの仕事の状況に応じて調整させる。
何しろ、我々は戦闘だけをする軍隊ではない。
死体の回収、荷物の運搬、道具の修理、鍛造、傷病兵の世話。こうした仕事も止めるわけにはいかない。訓練は大切だが、そのために隊全体の日常業務が滞ってしまっては本末転倒だった。
もちろん、私自身も訓練に参加した。
時にはあの驢馬に乗り、佩刀を携えて訓練場を見回ることもあった。
この驢馬も、いつの間にか私を乗せることにすっかり慣れていた。
ところが、ある日、皆が腹を抱えて笑うような出来事が起きた。
その日も私は驢馬に乗って鉄牛の小隊を訪れた。すると、鉄牛が私の乗っている驢馬をしばらくじっと眺めていた。
「頭! 今じゃ自分の乗り物まで持ってるんだ。俺にも一度乗せてくれよ!」
私は鉄牛を見て、それから驢馬に目をやった。どうしたものかと少し迷ったが、仕方なくうなずいた。
鉄牛はそれを聞くと、待ってましたとばかりに駆け寄ってきた。
私は、乗る前に一言注意しようとした。
その瞬間、驢馬がひどい鳴き声を上げ、前脚を持ち上げて大きく身を起こした。
鉄牛はうまく乗りこなせず、身体が傾いたかと思うと、そのまま驢馬の背から転げ落ちた。
「ドスン!」
鈍い音が響いた。
周囲は一瞬、静まり返った。
次の瞬間、兵士たちの間から一斉に笑い声が湧き上がった。
私も思わず吹き出してしまった。
鉄牛の体重は、もともと百キロを超えている。それに身につけている装備、さらには本人が宝物のように大切にしている大鉄槌まで加わるのだから、全部合わせれば二百キロ近くになるだろう。
驢馬に耐えられるはずがない。
鉄牛は地面から起き上がると、身体についた土埃を払い、不服そうに驢馬をにらんだ。
「なんだよ、この驢馬。まったく役に立たねえじゃないか!」
周囲から、また笑い声が上がった。
私は首を横に振った。
「驢馬が役立たずなんじゃない。お前が重すぎるんだ。いずれ機会があれば、本物の大きな軍馬を一頭用意してやる」
「本当か?」
「本当だ。ただし、それまでは自分の小隊をしっかり鍛えておけ」
「おう!」
鉄牛は胸を叩いて答えた。まるで、すでに大きな軍馬にまたがり、威風堂々と駆け回っている自分の姿が目に浮かんでいるかのようだった。
私は嬉しそうな鉄牛を見てから、まだ息を荒くしている驢馬に目をやった。
まったく、危うく鉄牛に押し潰されるところだったな。自分の身を守るため、あの驢馬も必死だったのかもしれない。




