↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『Loser?!三国志の袁紹軍で死体拾いから天下を目指す~瀕死の顔良と文醜を仲間にして、第四の勢力を興す~』  作者: 倦犬Kenken


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/42

中隊長、驢馬と黄皮

天幕の外に出ると、驢馬の後ろに立っていた人物を見て、私は思わず目を細めた。


黄皮だった。


どうやら徐進の命令を受け、中隊長への任命を示す令状と、中隊長に与えられる乗り物を届けに来たらしい。


収尸総隊には、役職に応じた装備や待遇の決まりがある。


伍長には佩刀と簡易な個人用天幕、小隊長には便器を備えた天幕が与えられる。そして中隊長になれば、劣等馬や驢馬などの乗り物を一頭、配賦される資格がある。大隊長には馬が与えられ、千夫長ともなれば剣がその地位の象徴となる。


もっとも、こうした待遇がどこまで守られているかは別の話だ。


徐進が今回、わざわざ黄皮を使者に選んだ理由は分かりやすかった。顔良に取り入りたいのだろう。それに、今後出世するかもしれない私にも、良い印象を与えておきたい。黄皮が以前、私や老陳たちを死なせようとしていたことなど、徐進は知りもしないのだから。


一方の黄皮にも、別の思惑があったようだ。


龍と老陳が今どうなっているのか、自分の目で確かめたい。あわよくば、こちらに取り入る機会も探りたい。そんな好奇心と下心を抱えて、わざわざやって来たのだろう。


そして、肝心の乗り物についても、黄皮は余計な判断をしたらしい。


中隊長に与えられるのは、あくまで劣等の乗り物。その中から何を選ぶかは、本人の裁量に任されていたのかもしれない。しかし、黄皮は劣等馬を選ばず、驢馬を持ってきた。


それを見た老陳が、すぐさま声を荒らげた。


「待て。徐進が驢馬を選んだわけがないだろう! 中隊長には劣等の乗り物が配賦されるという決まりだ。お前が勝手に驢馬を選んだんじゃないのか!」


「い、いえ! そんなことはありません。これは徐千夫長のご命令でして……」


黄皮は慌てて弁解したが、老陳の追及は止まらない。


「嘘をつけ。お前が勝手に選んだんだろう!」


「本当に違います! 私はただ、命令どおりに……」


黄皮はなおも強弁を続けた。


しかし、私はそれ以上相手にする気はなかった。


驢馬であろうと、乗り物を一頭もらえるのなら十分だ。せっかく持ってきたものを突き返す理由もない。


「分かった。ありがたくもらっておく。お前も飯を食ってから帰ればいい」


適当にそう言って話を切り上げると、黄皮は何度も頭を下げ、ぺこぺこと腰を折りながら去っていった。


その背中を見送ったあと、夏がこちらに向き直った。


「頭。私に一つ考えがあります。もう少し練ってから、改めて報告します」


驢馬を手に入れたものの、乗りこなせなければ意味がない。


ところが、意外なことに、この体の本来の持ち主は乗り物の扱いにかなり慣れていたらしい。農家の生まれだったのか、それとも牧畜に関わる家庭の出身だったのかは分からないが、驢馬の背にまたがってみると、手綱の扱いも足の使い方も、身体が自然に覚えていた。


最初こそ少し戸惑ったものの、何度か試すうちに、どうにか乗りこなせるようになった。


周囲からは笑い声が上がった。


「頭、なかなか様になっているじゃないか!」


「馬ほど速くはないが、牛よりは何倍も速いな!」


そんな声を聞きながら、私は驢馬の背で姿勢を整えた。


たしかに馬のような速さはない。それでも、自分の足で歩くよりずっと楽だ。移動の自由が得られるだけでも、十分に価値がある。


その後、顔良と顔を合わせたとき、彼は私の乗っている驢馬を見るなり、からかうように笑った。


「お前が中隊長になった証が、それか?」


「まあ、そういうことです」


「もっと上等な馬をやろうか?」


顔良は冗談半分にそう言ったが、私は首を横に振った。


「いえ、驢馬で十分です。今の収尸総隊に、そんな余裕はありません。それに、将軍から馬をいただけるのなら、まずは運搬用の馬車を作るために使いたいと思います。今の私たちには、身分を示すために馬に乗る必要もありませんし、実用面でも馬を使う理由はありません」


顔良は私の言葉を聞いて、また笑った。


それからも、私たちは驢馬に乗る練習を続けた。


最初はぎこちなく、背中で揺られるたびに笑い声が起こったが、何度も乗っているうちに少しずつ慣れていく。気がつけば、数日も経たないうちに、隊の者たちは皆、私と驢馬が並ぶ姿にもすっかり見慣れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。