華佗一門
収尸総隊の中隊長に任命されたことで、名目上は一階級昇進したことになる。
もっとも、私の部下はすでに三百人を超えており、実際には普通の収尸大隊の規模をとうに上回っていた。それでも、中隊長という肩書きを得たことで、人員の配置や仕事の割り振り、営地の管理などにおいて、以前のように何かと制約を受けずに済むようになった。小隊長だった頃に比べれば、ずいぶんと動きやすくなったのは確かだ。
そもそも、袁紹軍に対して大した期待などしていない。上層部がどのような連中なのかは、これまでの経験で嫌というほど思い知らされている。余計な干渉さえ受けず、こちらのやり方で仕事を続けられるのなら、それで十分だった。
そのため、収尸隊の組織そのものを大きく変えるつもりはなかった。今回の任命を機に、各班の人員配置を見直し、それぞれの仕事に責任者を置くことにした程度である。
まず、何よりも優先すべきなのは、これまでどおり遺体の回収と負傷兵の救助だ。それに加えて、戦場に残された物資や武器、装備品、その他まだ利用できそうなものを、可能な限り集めてくる。
これらの仕事は、少人数で片づけられるものではない。収尸隊の全員が参加する必要がある。戦場では遺体も負傷兵も、放棄された物資も、あちこちに散らばっている。捜索する者、運び出す者、回収したものを確認して整理する者、それぞれに役割が必要だ。
その日々の作業と人員の調整は、伍長の老陳に任せることにした。
いや、今では老陳小隊長と呼ぶべきだろう。
医療救助については、引き続き顧墨に担当してもらう。
このところ顧墨は、負傷兵の救助や収容だけでなく、傷病者の名簿作成、薬品や物資の使用量の記録、さらには突発的な問題への対応まで、実に幅広い仕事をこなしていた。几帳面で頭の回転も速く、すでに一段上の責任を任せるだけの能力を十分に示している。
そこで、彼も正式に小隊長へ昇進させ、医療救助を担当する人員を引き続き統括してもらうことにした。
警備小隊は穆鉄牛に任せる。これまで伍長だった彼を、小隊長に昇進させた。
営地には三百人を超える負傷兵が集まり、苦労して回収してきた物資や装備も保管されている。信頼できる人員による警戒がなければ、いつ外部の者に目をつけられるか分からない。せっかく積み重ねてきた努力も、ひとたび略奪に遭えば水の泡になってしまう。
鍛造と修理を担当する班についても、仕事量が増え続け、以前の小さな班編成では手が回らなくなっていた。そこで、正式に鍛造小隊へと拡充することにした。
夏天台は収尸隊に加わってからまだ日が浅く、老陳や顧墨、鉄牛に比べれば経験も少ない。しかし、鍛造の腕は確かで、普段から仕事にも熱心に取り組んでいる。すでに一人で仕事を任せられるだけの力はあると判断し、見習い伍長から正式な伍長へ昇進させたうえで、鍛造小隊の隊長代理を任せた。
鉄器の修理や道具の製作はもちろん、木工、縄の加工、その他の修繕作業も含め、鍛造小隊全体を取りまとめてもらうつもりだ。
そして最後に、現在もっとも大きな人員を抱えている傷病班である。
もともとの傷病班には、すでに三百人を超える負傷兵が収容されていた。その中には、まだ介助や治療を必要とする者も多く、すぐに通常の活動へ戻れる状態ではない。これだけ人数が増えれば、従来の班という編成では、もはや対応しきれない。
そこで、傷病班も正式に傷病小隊へと拡充することにした。
孫江用と孫新港の二人は、これまで顧墨を手伝いながら負傷兵の世話を続けてきた。それぞれの傷の状態や回復具合についてもよく把握しており、周囲からの信頼も少しずつ高まっている。
そこで二人を正式な伍長に昇進させ、孫江用には傷病小隊長代理、孫新港には副隊長代理を任せることにした。
これで、収尸隊の主要な組織編成はひとまず整った。
老陳は遺体の回収と物資の収集、日常の作業調整。顧墨は医療救助。穆鉄牛は警備。夏天台は鍛造と修理。そして孫江用と孫新港は、二人で傷病小隊を管理する。
それぞれの仕事に責任者を置いたことで、今後さらに人員が増えたとしても、すべての問題が私一人のところに集中することは避けられるだろう。
新たに小隊長となった者たちには、それぞれ専用の天幕も用意した。寝具や便器をはじめ、日常生活に必要な道具も、できる限り揃えておく。営地の設備は相変わらず質素なものだが、少なくとも責任者たちが一般の兵士と同じ場所で寝起きする必要はなくなった。仕事の相談や人員の調整もしやすくなるはずだ。
表面上は、これで一通りの手配が済んだように思えた。
ところが、自分の天幕に戻り、改めて組織全体を頭の中で整理してみると、どうにも胸の奥に引っかかるものが残っていた。
何か大切な一つの要素が、まだ欠けている。
考えれば考えるほど、気になって仕方がない。
そもそも、私たち収尸隊が何よりも大切にしている仕事は、人を救うことだ。
戦場に置き去りにされた負傷兵も、まだ息があるのなら、できる限り見捨てたくはない。だが、救いたいという気持ちだけではどうにもならないこともある。いざ深刻な傷を負った者を前にしたとき、十分な医療技術がなければ、手の施しようがないのだ。
顧墨は本当によくやってくれている。包帯を巻き、止血し、傷口を洗浄する。負傷兵の日常的な世話も、彼ならきちんとこなせる。
しかし、もっと重い傷となると話は別だ。特に、矢が深く突き刺さり、体内に残った鏃を取り出すために刃物を入れなければならないような場合、私たちには手の出しようがなかった。
助かる可能性がある負傷兵でさえ、適切な治療法がないために、ただ傷が悪化していくのを見守るしかない。
それが、ずっと私の心に引っかかっていた。
救助を最優先にすると決めている以上、医療の問題をこのまま放置するわけにはいかない。だが、どうすれば解決できるのか。考えても、すぐには答えが出なかった。
そんなことを考えて、少し苛立ちながら思案に暮れていたとき、天幕の外から足音が聞こえてきた。
「頭!」
顧墨が幕をめくって入ってきた。
いつもとは様子が違う。顔には隠しきれない興奮が浮かび、どこか弾んだ声で私に告げた。
「頭、何人か連れてきました!」
その表情を見た瞬間、私の胸がわずかに動いた。
いったい何事だろう。
私が尋ねるより先に、天幕の幕が再び開き、五、六人の男たちが続いて入ってきた。
先頭に立つ二人は、年齢こそ違うようだが、身なりは一般の兵士たちほど粗末ではない。二人は私に一礼すると、それぞれ名乗った。
「拙者は華陰と申します」
「拙者は華安と申します」
その名を聞いて、私は思わず目を見張った。
華陰? 華安?
私が不思議そうな顔をしているのを見て、顧墨がすぐに説明を始めた。
「頭、このお二人はただ者ではありません。亳州から来られたそうです。うちの収尸隊の評判を聞きつけ、わざわざ四百里以上の道のりを越えて、訪ねてこられたのです」
続いて華陰が口を開いた。
「私は華佗先生の甥にあたります。こちらの華安は、叔父の従弟です」
華佗の親族だと聞いて、私はようやく合点がいった。
華陰は華佗の甥だが、年齢は華安よりも上らしい。幼い頃から叔父のもとで医学を学び、その教えを受けて、かなり高度な医術を身につけているという。特に外科治療を得意とし、刃物を使って体内の異物を取り出したり、深い傷を処置したりする手術にも長けているそうだ。
一方の華安も、医学や薬学について相当な知識を持っている。ただし、得意分野は華陰とは少し異なる。医薬の知識に加え、道術や風水、招魂といった方術にも通じており、かなり幅広い分野を学んでいる人物らしい。




