第十八節 廃物を宝に変える
収尸小隊の輸送能力は、ようやく目に見えて向上してきた。
修理を終えた馬車や牛車が何台も並び、以前とは比べものにならないほどの荷物を運べるようになった。
それらを眺めているのは、老陳たち伍長だけではなかった。顔良軍の兵士たちも、珍しそうに次々と集まってきた。
車両の周りには、いつの間にか人だかりができていた。
ある者は車輪を手で回して具合を確かめ、別の者は車軸や車轅の接合部分を覗き込んでいる。中には、わざわざ荷台に腰を下ろし、何人かで押してみる者までいた。
「これ、全部お前たちで直したのか?」
「もともとは、今にもバラバラになりそうな車ばかりだったんじゃないのか?」
「こんな車が俺たちの陣営にもあれば、兵糧や負傷兵を運ぶのもずっと楽になるな!」
感心する声や驚きの声が、あちこちから聞こえてくる。
顔良軍の陣営が、これほど賑やかになるのは久しぶりだった。まるで何かの祭りでも始まったかのようである。
顔良の部隊には、今なお三千人以上の兵士が残っていた。
しかし、白馬、黄河南と続いた一連の戦いの後、彼らは袁紹からすっかり忘れ去られてしまったようだった。
新たな作戦命令が下されることもなければ、明確な配置転換の予定もない。彼らが駐屯しているのは、戦場から離れた、人里からも遠い沼地のほとりにある辺鄙な場所だった。
曹操軍の陣営とは、確かに一定の距離を保って対峙している。だが、双方とも積極的に戦端を開こうという気配はなかった。
聞こえのよい言い方をすれば、休養を兼ねた待機である。
しかし、実際のところは、ただ片隅に放置され、何をすることもなく日々を過ごしているにすぎなかった。
その一方で、我々の収尸小隊は、毎日朝から晩まで大忙しだった。
今日は車両の修理、明日は回収した装備の整理、その次の日には物資の運搬と人員の配置。陣営のあちこちから、木材を打ち付ける音や、車輪を転がす音が絶え間なく聞こえてくる。
そんな我々の様子を見て、顔良軍の兵士たちも少しずつ変わり始めた。
最初は、遠巻きに眺めているだけだった者が、やがて手伝いを申し出るようになった。中には、ただの見物のつもりでやって来たのに、気がつけば袖をまくり、作業に加わっている者もいる。
もちろん、私は大歓迎だった。
人手はいくらあっても困らない。それに、こうして皆が身体を動かし、何かに取り組んでいる方が、毎日陣営でぼんやり過ごしているより、よほど健全だろう。
そんなある日、陣営の反対側を通りかかったとき、私は不意に、規則正しい金属音を耳にした。
カン! カン! カン! カン!
普段、車両を修理するときに聞こえる音とは少し違う。響きが深く、一定の間隔で力強く打ち鳴らされている。
私は音のする方へ足を向けた。
そこには、臨時に設けられた大きな炉を囲んで、十人ほどの兵士が集まっていた。
炉の中では火が勢いよく燃え、赤々とした炎が揺れている。数人の兵士が交代で鞴を踏み、風を送り込むたびに火勢が強まり、炉の奥がまばゆいほどに明るくなった。
炉の脇には、赤熱した鉄材がいくつか置かれている。地面には鉄鉗や金槌、その他の簡素な道具が並べられていた。
炉の前で作業しているのは、顔良軍の十夫長だった。
私も彼の顔には見覚えがある。
名前は夏天臺という。
聞いた話では、兵士になる前はもともと鍛冶職人だったらしい。だが、戦乱が起こり、徴兵の命令が下ると、職人の仕事を離れて武器を手に取ることになった。その後、戦場での働きぶりが認められ、半年前に十夫長へ昇進したという。
今の彼は上半身裸になり、汗を流しながら、手にした金槌で赤く焼けた長い鉄材を叩いていた。
私は声をかけず、しばらくその作業を眺めることにした。
夏天臺は鉄材を何度も炉に戻して熱し直し、そのたびに金槌を振り下ろして形を整えていく。少し叩いては向きを変え、また叩く。力任せに打つのではなく、鉄の温度や形を確かめながら、少しずつ長い柄へと仕上げていた。
やがて接合部分を丁寧に整え、厚みや形状に問題がないか何度も確かめる。
その手つきには、長年この仕事をしてきた職人ならではの慣れが感じられた。
最後に彼が手に取ったのは、大きな西瓜ほどもある鉄製の金槌の頭だった。
どうやら柄が根元から折れてしまったものらしい。
彼はまず、破損した接合部分を削り、余分な鉄屑を取り除いた。それから、先ほど鍛え上げた新しい鉄の柄を合わせ、しっかりと固定する。
何度か具合を確かめ、最後に接合部分を調整すると、一本の立派な大金槌が出来上がった。
夏天臺は、それを脇で待っていた穆鐵牛に手渡した。
鉄牛は受け取った金槌を、まず念入りに眺めた。次に両手で柄を握り、頭上に持ち上げて何度か大きく振ってみる。
「おお! こいつはいい! 前よりずっと頑丈になったぞ!」
そう言うと、彼は近くにあった石を見つけ、金槌を思い切り振り下ろした。
ガツン!
鈍い音が響いたかと思うと、石は一撃で粉々に砕け、破片が四方に飛び散った。
「どうだ! 見たか!」
鉄牛は満足そうに金槌を掲げた。
「こいつは見事だ!」
「夏十夫長の腕は大したものだな!」
周囲から歓声と拍手が沸き起こった。
私も思わず感心し、夏天臺に声をかけた。
「夏兄弟、なかなかの腕前じゃないか。これなら次に夏侯惇将軍と出くわしたとき、鉄牛も存分に一戦交えられそうだな」
それを聞いた鉄牛は、すぐさま胸を張った。
「夏侯惇など、恐れるに足りん! この武器さえあれば、俺は奴と三百合だって渡り合ってみせる!」
あまりにも大きなことを言うので、周囲の兵士たちは一斉に笑い出した。
私もつられて笑った。
だが、ひとしきり笑った後、私の頭の中には、別の考えが浮かび始めていた。




