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碧大正君の見た世界  作者: Taisho0818


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6/8

朱城陽と朱城怜

碧野大正を中心とした問題を解決する物語。

私の生きてきた人生は16年経ったけど、みんなが羨むほどいいものじゃなかった。とても大きなお屋敷に住んでいた私はそこまで物に執着することもなく、曾祖父の代から稼いできた有り余る財産を身勝手に使おうなどと微塵も思うこともなく、ただただ私たちは色んなしがらみから逃れたい。姉の私、朱城怜は手のかかる妹の陽を守りたい。妹は人が思うほど頭が良いわけではない。むしろみんなと比べても普通の女の子。今まで父親にいろんな叱責を受けてきた妹はすぐに押し黙って言われたことに何も言い返すことがなく、辛い思いをずっとしてきた。

転機は父親の働いていた会社に大きな裁判の話が持ち上がったことだ。問題の紛糾はどこまでも大きくなって、父親は仕事に帰ってくることが少なくなった。私は父の目から逃れるべく母親の管理されていた全ての通信機器や居場所を知らせるタグ、どこに行っても追いかけてくる秘書やお抱えの社員も協力して、全て振り切って逃げてきた。

私が目をつけてきた財産は一つだけ。私自身の遺産の権利の放棄。妹と協力して小さなマンションを借りて静かに過ごすことになった。私の両親はもうダメだろう。一緒に暮らしていけば全てを投げ出しても良い。思いっきりお金を使うことなんかできるわけもなく、普通の街で普通に暮らす。どんなに辛くて悲しい思いをしてきた妹と暮らしていければ不自由で不便だったとしても苦労なんか何の障害になるはずもない。


私と妹でこの夢見市に越してきたときは何もかも自分でできるように、私は手をつけたくなかった財産を少し持ってきた。もう関わり合いになりたくない。父も会社がダメになって変わってしまったのだろう。有り余るお金を放出している。もう連絡も取れない。どこで何をしていても私たちを気に留めないのだろう。私はこの選択を間違えたなんか思いたくない。だから今日も何か、面白くなれるように必死に生きてみる。


「陽ちゃん、私はどんなことしていれば良いと思う?私自身はこの生活でもいいよ。あとね生活がある程度落ち着いたら学校にも行かないといけないな。って思ってるの。会社の人は頼れないからお母さんに頼んで、すぐ近くにある高校に通うことになるの。陽ちゃんはどうしたい?このまま一緒に高校行く?それとも違うことしたい?」

「え?私は….どうしよう。高校に行っても良いのかな?いつも1人でいるのも嫌だから。」

「決めてくれると私も良いと思う。」

「うん….。わかった。考えてみる。」

「前にあったお兄さんに聞いてみたら?高校生なんでしょ?いつも書店にいるのもそのためなの?」

「私自身はあの人には興味ないの。私の趣味にしたいだけ。小説を読みたいだけ。」

「その人は陽ちゃんの話、聞いてくれるって思うの?」

「うん、話してみたい。私のこと、どんな気持ちかだなんて分からないけれど。」

「うん。力になってくれるかな?私は不安なんだけど。」

「話したいだけ。」

「うん、分かった。」




私の好きな物語。私、朱城陽はみんなが興味のない小説や歴史をずっと楽しみに読んだり勉強したりした。私はまだ短い人生だけどいろんなすごい人たちに子供ながらに感化されてきたのだろう。いつも出る言葉は偉人の人たちが成し遂げた物語。私の尊敬する本の中にずっと住んでいる人たちが私が好きな人物。

私は人にとって無価値なのかな?お父さんにどんなに叱責されてボロボロにたくさん泣いて生きてきたんだろう。私はお姉ちゃんのそばを離れないように。隠れるように生きて行くしかなかった。私の本当を知っているのもお姉ちゃんだけ。私はどれだけ他人に利用されたことも、信じてもらえないことも。認めるには時期も年齢も自分の立場も分からない子供だとずっと隠れる毎日を過ごすしかなかった。私の決断はお姉ちゃんのそばにずっといることだけ。だから頑張ってくれる姉の背中についてきた。母はもう私を見てないのかな?もう私は隠れることをしたくない。お姉ちゃんは私にとって何の感情を抱いているか、私を待ってる。いつも心配している。同情なんかじゃない。確かに姉妹として生きてきた。それだけあれば私はどこに住んでいてもどんなに辛くても2人で頑張れるのだろう。



「何かいるの?おすすめはどれがいいの?」

「ううん。もう帰る。私はもう一回あの人に会ってみたかっただけ。もう少ししたら帰るね。」

「書店のお姉さんが言うにはまだ大正くんの本は来てないから書店に立ち寄ることはないと思うけど。」

「うん。もう少しだけ待ってみるね。お姉ちゃんはどうするの?」

「ねぇ、陽ちゃん書店のお姉さんに頼んでみたら?」

「うん…。」

「私、一回帰るね。お母さんと話してみる。学校行ける?」

「うん….。」

「もう動かないと。手続きもまだだし。夢見市に何もしないで住んでいるのもおかしいから。頼んでみる。」

「うん….。」

「それじゃあね。少し待ってて。」

怜が書店の隅にある読書スペースに去っていった。陽は1番前の商品をずっと見つめているだけ。今まで私に話す人なんか居なかったのに。あの人だったら話せた。もう一回会えば、私のことを理解してもらえるかも。話してみたい。




自転車を軽快に飛ばして書店の駐輪スペースに自転車を停める。書店のお姉さんは絶対にこの日曜日にいる。少し話したい。

入店の音が鳴る。少し汗をかいていた。ひんやりとした空気は体の汗をすっと引かせるぐらい、少し寒いぐらいだ。

「大正くん!大正くん。あの子、来てるの!良い?話してみて。」

「またなの?お姉さんと話したかったんだけど?」

「良いから。ね?頼むね?」

「うん、分かった。」

少しいたずらな笑みのお姉さんはすぐバックヤードの奥に消えていった。僕は今から課題の話をするために来たのに。なんでまた話すんだろう?気になるのかな?


少し様子を見る。ずっと考えてるみたいに。同じところに立っている。今はもう午後3時。もう理由も少し見るだけで理解できる。何かを待ってるんだろう。

「こんにちは。また会ったね。」

「え?うん、大正?君ともう一回話してみたかったの。だから待ってた。」

「うん、そうか。あっちで話そう。読書スペース行こう。」

「うん。」


本を定期的に借りるサービスもやっているこの書店では読書スペースに貸し出される本も取り扱っている。貸し出しの本はお姉さんが選んだ2年3年前の本がレンタルできるようになっていて、書店ながらなかなかの盛況ぶりなのかレンタルできる本はジャンルが豊富にある。客もこの書店に通う人はそれほど珍しくはない。

「陽ちゃんか。よろしくね。碧野大正。」

「うん、よろしく。朱城陽。」

「僕と話したいって言ってるけど、どんなことを話したらいい?」

「私ね、いろんな物語とか歴史の偉人が大好きなの。だからいろんな本を読んでいる大正さんに話してみたいと思って。」

「そう。僕は歴史には勉強の範囲で興味があるだけだよ。いいの?」

「うん。」

「陽ちゃんは偉人が好きってなんで?歴史が好きって言う人は少ないと思うけど?」

「私の好きな人はすごい人だから。だから興味あるんです。大正さんは何で私と話してくれるの?」

「今ね、話する人探してたの。友達とかいろんな人に自分の言葉、話してみたらって言われて。書店のお姉さんと話すことに決めたのに、陽ちゃんになったってだけ。」

「私はちょうど良かっただけなんですか?何それ。」

「うん、いつもなんか自分の話、理解できないって言われることが多いかな。」

「確かに話す理由が話すだけって変な話だよね。」

「うん、僕ね。本当は話すこと決まってるの。陽ちゃんに聞きたい。自分の言葉で相手を説得させたい時にどんな短くてわかりやすい言葉で話をするの?」

「うん?簡単じゃないの?私たちは何でここで話してるの?今話してて思うけど、大正さんと話始めた時に、もう話が成立してますよ。会話って文章と違います。文章は事細かく書かないといけません。書き連ねるほど説得力があります。小説の読み応えって穴がないように詰める段落と簡単に書く段落があるだけですよ?それじゃあ伝えようとする会話って簡単じゃないんですか?」

「え?簡単なの?分からなかった。」

「うん…。話終わりました?」

「うん、終わった。」

「……。私の話しても良いですか?」

「はい…。」

「私はずっとあなたに聞きたいことがあるんです。私と話した時に気になる本はこれだって言ったのは何でです?」

「自分の理解しやすい物語とは違う。僕を信じるんだったら挑戦したい物語を見ることはいいことだと思ったから。当てずっほうで話したよ。」

「それだけなんですか?」

「うん、それだけ。小説は面白かった?」

「はい。それだけだったんですか?」

「うん、自分自身で考えているほど事実って面白くないよね。」

「なんだ、たったそれだけなんですね。」

「うん….。何かおかしかった?」

「ううん。簡単だった。私話かけられた時にそれだけで親切にしてくれるのか?って疑問だったんです。たった一言だけで解決できたんですね。」

「うん。言いたいことはもう言ったの?」

「はい。それだけでいいです。少しすっきりしました。」

「うん、そう。話し終わった?どっちも何してるんだろうねー。」

「はい、何でこんなこと座ってまで話したんですかね。」

「陽ちゃん、たまにあったらよろしくね。僕、帰るね。問題もすぐ解決したし。話相手というか相談役って立ち位置になってるけど。まぁお互い様だよね。」

「うん、私もどうしてこんなことになったのか。分からないです。」

「また会ったらよろしくね。ちょっとだけ元気出た?」

「え?何でです?」

「顔が明るくなったよ。」

「そうですか?良かったです。」

「それじゃあね。」

「はい。それじゃあ。」


「大正くん!どうだったの?」

「ここに来る必要ありませんでした。お姉さん、あの女の子賢かったですよ。面白かったです。」

「そうなの?私はあの子のこと応援してるの。」

「どんな話するんです?」

「色々ね。最初話すときに、偉人が好きなんですけど、どんな小説の表紙を見たらいい物語かどうかわかりますか?って聞かれたの!もう面白い子だ!って思っただけー。」

「はぁ〜。もういいです。仕事頑張ってください。僕、もう帰ります。」

「はーい。頑張ってねー。」



朱城怜と朱城陽は書店を出る。お姉さんは少し席を外していた。妹が読書スペースにいるから、なんでなのか?と問い詰めるともう大正との会話を話終えた。読書スペースに帰った後には驚いた。陽が話す顔が元気で明るくなったから、もうなんでも良かった。

「もう学校行く手続きするんだって。編入試験あるけど、いいの?」

「うん、学校行くね。大丈夫だと思う。」

「うん、いいの?はっきり言ってるけど。」

「私の考えてることがあの人の前に座ると言葉が出てきた。もうどうでもいいこと考えてたんだって気持ちが楽になった。頑張って高校に行くことにしたの。」

「うん、お母さんに言いなよ。正直にね。」

「うん。分かった。」

大正が頑張って話す言葉を簡単に言えた陽ちゃんはどんなことに興味があるんでしょう?偉人や歴史の物語が好きなのは何ででしょう?陽ちゃん自身、とても引っ込み思案に思えますが、大正と正面向いて話して笑顔にできた。とても良かったと思います。

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