第7話 本気の兄弟喧嘩
■焔の神殿 ダンジョン部 焔の祭壇
ダンジョンの最深部である、焔の祭壇に俺達はたどり着いた。
目の前には巨大な胎児のポーズをとっている人型の像。
その像には何かの金属製の鎖が幾重にも縛り付けられており、封印されていることがすぐにわかった。
巨大な像の足元のに近づく、魔法学院のローブの人影を見た俺は大声で叫ぶ。
「フレデリック! やめるんだ! やるなら、俺と直接戦え!」
俺の直感が封印を解いてはいけないと訴えていた。
アニメや漫画でよく見るシーンすぎて、実感がわかない。
だが、目の前の行動を放っておけばどうなるのかは予想できた。
「クソ兄貴か……足止めもできないなんて、あいつらも使えないな」
一度振り向き、俺を見て鼻で笑ったあと、フレデリックは像に近づくのをやめない。
俺はフレデリックの言葉にカチンときた。
セレナももう一人の男も、フレデリックを信じてここまでついてきた奴らだ。
フレデリックがスタンピードを起こした犯人だと知っていてもついて来てくれた大切な存在ではないのか?
俺は今、隣にいるエリカをはじめ、レイナ、リサ、セレーヌと支えてくれる仲間がいたから強くなれた。
どんな敵を前にしても諦めることなく戦えた。
あいつらはフレデリックにとって、そうじゃなかったのか?
異世界に来て、本気の怒り抱いたことのない俺の中の怒りが、マグマのように熱を持って吹き出した。
「ざっけんな! 貴族様ってのはみんなそうなのか知らないけどなぁ、人は道具じゃないんだよ!」
「貴族というのが何たるかを学ばなかったクソ兄貴にはわからないことだな! 使えるものは何でも使えるのが貴族の特権なんだ! 婚約者だろうとな!」
「てめぇ! アリシアにも何かしたっていうのか!」
「ああ、少し利用させてもらった……この【炎魔神の心臓】を手に入れるためにな!」
フレデリックが懐からまがまがしい石のようなものを取り出し、掲げる。
【炎魔神の心臓】が光だし、ゴゴゴゴと部屋全体が揺れ巨大な像を縛る鎖にひびが入っていくのが見えた。
「エリカ! 奴の手からあのアイテムを奪うぞ!」
「わかりましたわ!」
俺は投げナイフをフレデリックに向けて投げ、磁力で加速させる。
〈磁力魔法:加速〉
銃弾のような速度で飛んで行ったナイフ達はフレデリックに触れることなく融解した。
高熱状のバリアでも貼っているのか……今ので、俺の攻撃の大半が役立ずになる証明がなされる。
火系の敵とは相性が悪い……。
「クソ兄貴の魔法なんか古戦場で見ていたからな、対策はとっているさ。だが、俺はただ兄貴を倒すだけじゃ、納得できないところまで来てるんだよ!」
|〈灼熱魔法:爆炎〉《バーニング:エクスプロージョン》
フレデリックのかざした手から光が一瞬走ったかと思うと、俺の足元に高熱原体が生まれた。
俺はすぐにその場から離れるように自分のブーツを加速させる。
〈磁力魔法:加速〉
「私を無視しないでくださいませ!」
|〈精霊魔法:水流弾〉《エレメス:アクアバレット》
エリカがウンディーネに命令をしてフレデリックに水の弾丸と飛ばした。
だが、フレデリックの目の前で水は蒸発していく。
あいつの魔力量は100万といっていたが、その力を惜しみなく使っているからこそできる芸当だ。
「俺ら二人でも、キツイなんてな……ハァ……ハァ……」
熱がこもっている中のためか、消耗魔力が激しかった。
コントロールもしづらいし、疲労もその分大きい。
長期戦は明らかに不利だ。
フレデリックの手に持つ【炎魔神の心臓】の輝きが増し、封印しているはずの鎖にひびが多数入っていった。
砕けるまで時間がなさそうだ。
「エリカ、ウンディーネに魔力を全力で渡してでかいのを頼む! 俺はあの鎖を磁力魔法でとどめてみる!」
〈磁力魔法:引力〉
ひびが入り砕けそうになる鎖たちを俺は磁石同士のくっつきあう力でもって抑え込む。
ゴリゴリと魔力が削られていくのがわかり、気を失わないよう集中するのが精いっぱいだ。
「エリカ! は……はや、く!」
「クソ兄貴が! 往生際が悪いぞ!」
「往生際が悪いのはあなたの方ですわ。ジュリアンさんはあなたが幸せになるのを願っているのに、どうしてこんなことを!」
「俺の幸せを願うのであれば、消えてくれよ! クソ兄貴!」
フレデリックは【炎魔神の心臓】へ魔力供給を行って封印の解除を早めようとする。
エリカは言葉での応酬は意味がないと悟って、ウンディーネに自分の魔力を渡した最大級の力の行使を行った。
「ウンディーネ! 私の魔力を持って、道を切り開いて!」
|〈精霊魔法:海洋波〉《エレメス:タイダルウェイブ》
炎の祭壇のある空間全てを包み込むような大きな津波が起きる。
フレデリックも、ジュリアンも、エリカも、イフリートも全てが波に飲み込まれた……。
◇ ◇ ◇
■焔の神殿 ダンジョン部 鍛冶神の試練の間
ウチとリサとセリーヌが焔の祭壇に向かう通路を走っている間にダンジョン自身が大きく揺れた。
「おっとととっ、何が起きたニャ!?」
バランスを崩しそうになるリサが、揺れる尻尾も使って上手にバランスをとっている。
何かの異変が起きたことはウチらにはわかった。
「ジュリアンの身に何かあったんやない?」
ウチがいうのよりも早く、リサとセリーヌが先行して走る。
背丈が小さく、体力はあっても筋力にはあまり自信のないウチにとっては追いかけるのだけでも大変なことや。
ジュリアンとの付き合いはエリカと一緒やけども放っておけないというか、ウチのほうが年上のはずやのにふりまわっされぱなしやった。
それが嫌とも思えへん自分になってることをおとーちゃんに相談したら、ジュリアンに責任を取ってもらういいだして大変やったわ。
せやけども、大切な仲間なんのか変わらんから焔の神殿にいくゆーたときは準備をしっかりしたわ。
ウチのバックにはまだまだ隠し玉は用意しとる。
スタンピードのドラゴン戦は出番あまりなかったから、ここらで活躍せんとな!
なんで活躍せなあかんのかは、前の方を走る二人の揺れる果実が雄弁に語っとるわ。
「ん? どうしたのだ?」
「なにかにゃ?」
ウチの視線に気づいたのかリサとセリーヌが走りながら振り返る。
ぶるんと両者ともに果実が揺れて目に毒や。
「なんもあらへん! はよせな」
そういっていると、リサが立ち止まりウチの後ろを睨んだ。
「何かが来てるニャ」
「何かってなんや?」
リサの〈危険感知〉は便利なようで便利でない。
身に危険が迫る脅威を何となく感じて、敵のあたりを付けるものなんやと。
でも、ウチらエターナルホープの目や耳として重宝している仲間やな。
そうこうしていると、飛行する小さな少女がウチらに迫ってきて、ウチらの手前の空中で停止したんや。
「あなた達はもしかしてジュリアンの仲間?」
「ジュリ坊を知っているのにゃ? ジュリ坊はあちし達『エターナルホープ』のリーダーにゃよ?」
ジュリアンの名前が出たことで、警戒を少し緩めたリサが空中に飛んでいる女の子に訪ねたんや。
女の子は灼熱の空間の光を浴びて輝くブロンドヘアを揺らしながら、答える。
「私はアリシア・ローレライ……ジュリアンの昔の知り合いよ」
最後は俯きながら自分の立場を言葉にしたが、アリシアの名前は前に聞いたことあった。
「あんたがジュリアンの元婚約者!」
「「な、なんだってー!?」」
ウチが指さして叫ぶと、リサとセリーヌが驚き、アリシアに詰め寄っていく。
リサは女子会のときに聞いとったやろ、忘れとるかもしれんけど。
「詳しい話は後や、元婚約者がこないとこまで来るとなると、ややこしい状況なんやな?」
「はい、道中話をしますので、皆さん一緒に飛びますよ!」
「また飛ぶんかいなぁ~!」
今度は空中にふわっと浮いたかと思うと、馬で疾走するよりも早い速度で飛んだ。
やれやれ、えらいことになってきたなぁ。
◇ ◇ ◇
■焔の神殿 ダンジョン部 焔の祭壇
「けほっ……けほっ……大丈夫、か?」
俺は立ち上がり、周囲を確認する。
溶岩が周囲を流れ、熱気に満たされていた焔の祭壇だったがエリカの魔法で冷却されたのか冷え固まっていた。
人型の像を捉えていた鎖はガッシリと縛り付けているので、無事に封印を取り戻せたようにみえる。
「エリカ! 大丈夫か、エリカ!」
俺はぐったりして、床に伏せているエリカに近づき、頬を叩く。
エリカと一緒にいたウンディーネの姿もないため、俺は焦った。
胸のところに耳を当てて、心臓の音を聞く。
音が聞こえない……これは不味い。
「ええと、応急処置、応急処置!」
おぼれた人を助けるための応急手当を思い出しながら、俺はエリカへ心臓マッサージを始めた。
「エリカ! 死ぬなよ! エリカ!」
声を駆けながら、心臓マッサージを続け、反応がないことを見ると俺は気道確保からの人工呼吸に移る。
キスはこっちの世界でも、前世でもしたことはなかった。
体から火が出るほど熱くなるのを抑え、深呼吸をする。
「これは医療行為、医療行為」
自分自身に言い聞かせて顔をエリカの顔に近づけた時、エリカと目があった。
気まずい沈黙があたりを包む。
「ジュリアンは何をしようと……まさか、私が気を失っていることをいいことにっ!?」
「ち、ちがう! 医療行為だ!」
「いりょーこーい?」
白い肌を赤くさせたエリカが体を起こしながら、ずりずりと下がって俺と距離をとった。
当然のリアクションだと思いながら、俺はため息一つする。
「にしても、すごい魔法だったな……フレデリックはどこだ?」
エリカの顔が照れくさくて見られない。
話題を変えてフレデリックを探すが、像の前で倒れているのを見つけた。
手には……何も持っていない。
「まさか!」
俺の背筋をぞわっとした寒気が駆け上がる。
封じられている像を見ると、フレデリックが持っていた心臓が像の胸のあたりに吸い込まれた。
縛り付けていた鎖が砕け散り、ボロボロと地面に落ちていく。
像の石の様な肌の色が赤くなっていき、炎が表面を走った。
胎児の様なポーズから両手両足を伸ばした空中で大の字のポーズをとる。
熱風が起こり、俺とエリカは吹き飛ばされた。
「結局、間に合わなかったか……」
「すみません」
「エリカのせいじゃねぇよ、あの気を失っているバカのせいだ」
しょぼんと耳を下げ、うつむくエリカを守るように俺は剣と盾を構える。
「エリカ、俺の腰のポーチに魔力ポーションがあるから、それをとって飲んでくれ」
「わかりましたわ」
ポーションの瓶をとって、エリカは飲んだ。
ウンディーネを召喚して、戦闘態勢をとる。
俺とエリカの二人だけで、目の前の巨大な魔神を相手にできるのかはわからなかった。
だが、戦う前からこいつを外に出してはいけないという危険信号を〈危機感知〉のスキルがないのにビンビンと感じている。
俺の頬を熱さでは起きたものではない汗が流れていった。
ドラゴンと戦った時以上のものを俺は感じている。
「グォォォアァァァァァ!」
その場を揺らす咆哮を炎魔神があげた。
ボッボッボッと火柱が地面に上がる。
その火柱が人型を作り、俺達に襲い掛かってきた。
「エンチャントを頼む、まずはザコを蹴散らすぞ!」
俺の指示にエリカがウンディーネを使って俺とエリカの剣に水の力をまとわせる。
襲い掛かってくる人型を一刀のもとに斬り裂きながら、イフリートへと踏み込んでいった。
イフリートも火球を作って、俺達に向かって放ち攻めてくる。
いや、イフリートの顔をみるに遊んでいるに違いなかった。
余裕の笑みがムカつく。
「ドラゴンよりも表情豊かでムカつくな、遊ばれるのもしゃくだが時間を稼げばレイナ達がきてくれるはずだ」
俺は仲間を信じる。
一人で全てを抱え込まないことに決めたんだ。
■焔の神殿 ダンジョン部 焔の祭壇
あれからどれだけ立ったのか。
イフリートの召喚する火のモンスターを俺が蹴散らしながら、エリカがウンディーネと共にイフリートを牽制することを続けていた。
「じれったいな、おい……」
水の力を付与していても、相手は火のモンスター。鉄の剣は溶け始めており刃なんてあってないような状態である。
肉体的な疲労を持っていたポーションで強引に抑えて混んだ戦いは同じくじれったいと思い始めただろうイフリートの一撃で変わった。
地面に巨大な拳がたたきつけられ、変形していく。
グラグラと地震のように揺れて、吹き出すのは溶岩だった。
足場を潰して、こちらに攻撃をさせない作戦に入ったのだろう。
だって、イフリート浮いてるしな。
「フレデリックが巻き込まれる! 回収するから、エリカはウンディーネと一緒に下がれ!」
俺は大きく声を上げて指示を出すと駆け出した。
こんな巻き込まれで死なせるなんて、できない。
いろいろとバカやったりした奴だが、血を分けた弟なのだ。
〈磁力魔法:加速〉
加速した俺が弟の元へ駆け出して、戦闘中にもかかわらずぐったり倒れているフレデリックの体を掴んだ。
思ったよりも軽く、魔術ばかりをやっていた細さがある。
「美味いもん食って、ぶくぶく太っているよりかはいいけどよ!」
溶岩で沸騰するようにぐらつくはじめた地面の上を走りだした。
ボフンボフンと地面が割れて溶岩が噴き出す。
「ジュリアン!」
遠く離れているエリカが叫んでいるのを見るが、俺の目の前からは溶岩でできた柱がいくつもの出来上がっていた。
「逃がしちゃくれないか……」
フレデリックを抱きかかえながら、イフリートの方を振りむく。
仲間と分断したことで、余裕の笑みを浮かべているイフリートがさらなる火炎の渦を手から放った。
移動しようにも溶岩で動けない中では回避は難しい。
もうダメかとフレデリックを守るように、俺が体を火炎の渦のほうに向ける。
熱が俺を襲ってくるかと思ったら、いつまでたっても熱が襲ってこなかった。
「何が起きたんだ?」
俺が振り返ると、俺の周囲に泡のような膜が俺を包んでいる。
〈水魔法:泡防壁〉
「これは水魔法!? 誰が……」
「間に合ったね。積もる話は後にして、イフリートをなんとかするよ!」
俺が声の方を振り向くと、眩い金髪をなびかせて、空を浮いている少女がいた。
フレデリック達と同じ、魔法学園の制服に紫色のマントを付けている。
首からは綺麗な青い宝石を鉄ではない、何かの金属で包んだネックレスを付けていた。
ネックレスは5年前の《《あの時》》もつけていたものである。
「アリ……シア」
「久しぶりね、ジュリアン。あなたのパーティメンバーも一緒に連れて来たわよ」
アリシアがそういうと、レイナやリサ、セレーヌが同じように空を浮いた状態で姿を見せた。
仲間が集まってきたことに俺の頬が緩くなる。
ピンチの時にやってくるなんて、映画みたいじゃないか……さぁ、反撃開始だ。
■焔の神殿 ダンジョン部 焔の祭壇
〈風魔法:飛行〉
アリシアが魔法をとなると、俺達の体が宙に浮く。
ふわっとした感覚だが、不思議と体の動かし方はわかった。
溶岩で埋め尽くされた地面から離れられたことで、自由になる。
反撃のチャンスが来た。
「足場の問題はこれで解決よ」
「エリカ! エンチャントにゃ!」
「うむ! やるのだ!」
リサとセリーヌがエリカに指示をだす。
というよりも、いろいろと暴れたい子供のような感じだ。
リサは尻尾を振っているが、セリーヌも生えていたら、絶対ブンブンと振っていると思う。
| 〈精霊魔法:水撃付与〉《エレメス:エンチャントアクアストライク》
俺とリサとセリーヌの武器に水の力が宿った。
「ジュリアン、作戦はどうするの?」
アリシアが金髪の髪を揺らしながら、上目遣いで俺の隣に来る。
5年前と変わらない綺麗な髪をしているが、紫を基調としたマントに魔法学園学生服を着ている姿は新鮮だ。
ま、10歳の子供だから見惚れるとかはないけどな。
俺の感覚では親戚の子供が大きくなった感じである。
「作戦の方だが、レイナがポーションで回復や氷結での足止め等、近接戦闘をする俺やリサ、セリーヌが接近する隙をアリシアとエリカが作ってくれ」
「ぷー、わかったわ」
俺が照れも気にすることもなく、さらっと作戦を提示したことに不服なのか、アリシアは頬を膨らませた。
こういった部分がまだまだ子供だし、可愛いところでもある。
「いくぞ、イフリート!」
二人だけではどうしようかと困っていたイフリートだったが、仲間が増えたことで安心感が強まっていた。
俺が先行して正面から斬りかかると、イフリート手を横に凪ぐ。
すると、地面から吹き出していた溶岩が吹きあがって炎の壁となった。
「それくらいで止まる俺じゃないぜ!」
目が回るから使いたくないが、アレをやるしかない。
ぶっつけ本番だが、あっちのパターンを試してみる!
「超電磁ぃぃぃ、スピィィィィン!」
〈磁力魔法:回転〉
剣を頭上に掲げ、俺自身を高速回転させた。
アニメやゲームで何度も見ていた技のイメージのまま、俺の体はいったん上空に上がったかと思うと、急降下しながら、勢いよく炎の壁を突き破ってイフリートに向かう。
回転している俺の目ではイフリートの表情は見えないが、おそらく驚いているはずだ。
ぶつかる相手の体がでかいので一気に貫くことだって行けるはずだと体当たりをしかける。
グサリと剣の刺さる感触がしたので、えぐるように自らを回転させながら貫いた。
「くぅ……これでも、目がだいぶ……回る」
「何を当たり前なことをいっているのだ?」
「バカなのかにゃ?」
俺がイフリートに攻撃を仕掛け、炎の壁を破って攻撃に成功したはずなのに脳筋な二人からバカにされてしまった。
辛い……。
でもさ、浪漫なんだよ、浪漫。
「腕を抉り取れたか……まぁ、ぶっつけ本番にしては上等だ」
よろよろとふらつきながらでは格好がつかないが俺は結果に満足する。
エリカのウンディーネのエンチャントがしっかり効くのであれば、あとは手数で攻めるだけだ。
「いくにゃよー!」
「私も負けないのだ!」
リサとセリーヌが競い合うようにイフリートへと飛び回りながら接近していく。
拳を突き出して迎撃しようとするイフリートを翻弄しながらも、一太刀、また一太刀と浴びせていった。
裂傷が増えていき、イフリートの顔がゆがみだす。
「ゴォォォォォォッ!」
イフリートが大きく叫ぶと炎で揺らめく髪が広がってそこから、火の玉がいくつも飛び出して俺達に降り注いできた。
「氷結ポーションにはこんな使い方もあるんや! なんちゃって、アイスウォール!」
レイナの叫びに合わせて、エリカがウンディーネを使って水の膜を俺達全員を包むように広げた。
そこに氷結ポーションが当たることで氷の壁が瞬時に出来上がる。
火の玉がぶつかっても、消えることなく壁は広がっていた。
「せっかくの氷を利用しない手はないわね。そーれっ!」
|〈風魔法:竜巻〉《ヴェントス:サイクロン》
アリシアが呪文を唱えると、竜巻が起きて氷の壁を砕きそのままイフリートへと向かっていく。
普通の嵐のような風もさることながら、そこの混ざった氷の破片がイフリートを包み、傷つけていった。
「グゥゥゥゥゥゥ」
イフリートの動きが鈍り、よろめき始める。
だが、その氷の竜巻をはじき返すようにイフリートも周囲に炎の竜巻を作って氷の竜巻を相殺した。
「決定打にはなりえないか……さて、どうする?」
俺は弱りだしているイフリートを前に次の作戦を考え始める。
だが、その時だった。
|〈火魔法:炎の槍〉《イグニス:フレイムランス》
俺の腹を炎の槍が貫き、抜けていく。
「あ……が……ふれで……」
抜けていったのは、俺の背後から前……撃ったのはフレデリックだった。




