第8話 俺だけ使える磁力魔法
■焔の神殿 ダンジョン部 焔の祭壇
腹から痛みが全身を駆けあがり、俺は背後のフレデリックを見ながら、宙に浮いていた俺は頭から地面へと落下する。
薄れゆく意識の中、俺は怒りよりも悲しさだけがあった。
◇ ◇ ◇
落下するジュリアンを止めるために、私は急いで風魔法を唱える。
|〈風魔法:空気枕〉《ヴェントス:エアピロー》
空気で作った枕の上にジュリアンは落ちたことで、地面にぶつかることは防いだ。
ハァと安堵の息を漏らすのもつかの間、私に向けても魔法が飛んでくる。
|〈火魔法:炎の槍〉《イグニス:フレイムランス》
だが、私に届く前で炎の槍は霧散した。
「なんだと!?」
「あなたのために対策しているのよ、魔導具を扱うローレライ家を甘く見ないでほしいわ!」
ジュリアンに効いた火魔法が私に効かないのを見ると、フレデリックは狼狽した様子を見せる。
だが、それも一瞬のこと弱っているイフリートに近づいて、命令をしはじめたのだ。
「くそっ、イフリート! オレはお前を救った! オレに力を貸せ!」
そんなことをしても、イフリートが従う訳はない。
なぜならば、フレデリックは【炎魔神の心臓】を持っていないのだから……。
フレデリックとイフリートのやり取りをよそに、私はジュリアンの方へと近づいた。
ジュリアンのパーティメンバーも倒れているジュリアンを囲む。
「ポーションで回復させれば、腹の穴は大丈夫やけど……意識が戻るかはわからん」
レイナさんの言葉に全員が俯き、そのやるせない思いがフレデリックに向けられた。
鋭い視線を受けて、フレデリックが一瞬たじろぐ。
「クソ兄貴よりも、オレが強いってだけだ! オマエたちがここまでこれたのだって、クソ兄貴のお陰だろ! 兄貴がいなくなれば、オレが全てを手に入れられるんだ!」
フレデリックの言っていることは理解の範囲外だ。
めちゃくちゃなことにフレデリック自身も気づいていないんじゃないかな……。
冷めた視線がフレデリックに集中する中、イフリートだけが不敵な笑みをフレデリックに向けていた。
「オレの魔力量は100万なんだ、だから、魔力量8のクソ兄貴なんぞに負けて……出し抜かれて……そんなこと許せるわけがない!」
フレデリックの目に憎しみの炎が宿り、全身を覆う。
その力を見ていたイフリートがフレデリックの体に入り込んでいった。
「まさか、同化!? 皆さん、フレデリックに攻撃を仕掛けてください!」
私はイフリートの動きに知識として知っていたものがあったので、焦り始める。
「魔力量の高いフレデリックにイフリートの力が合わさったら、どうなるのかわかりません。今まで以上に強い相手となります!」
だから、同化を防がなければいけなかった。
「わかりましたわ!」
エリカさんがウンディーネだけでなく、シルフも召喚して手数を増やしてイフリートへ攻撃を仕掛けていく。
リサさんと、セリーヌさんの近接攻撃組はエリカさんからのエンチャントを受けて、踏み込んでいったが見えない障壁でふさがれました。
「魔力を使って、自動で障壁を張っている!? もう、そこまでの力を引き出しているなんて!?」
ショックを受けている場合ではないと思い直して、私は魔法を唱え続けた。
水魔法と風魔法をぶつけていくが、フレデリックとイフリートの同化は止まらない。
復活を防ぐ手は……私には思いつかなかった。
■焔の神殿 ダンジョン部 焔の祭壇
どれだけ倒れていたのかわからなかったが、俺は目を覚ます。
腹の痛みはなくなり、うっすら開けた目にはレイナの顔があった。
「ジュリアン! よかったわ、今大変やねん。イフリートがフレデリックの体を乗っ取ろうと同化し始めている最中なんやけど、防御が固くて防げないんや」
端的に状況を聞いた俺はレイナに肩を借りながら立ち上がる。
まだ体がふらつくが、魔法の飛び交う音や、近接攻撃を仕掛ける声が響いている中ではゆっくりもしてられなかった。
「よかった、目が覚めたのね。ごめんなさい、あなたが寝ている間に決着を付けたかったのだけど……」
アリシアが魔法を放ちながらも、立ち上がりレイナに肩を借りながら近づいていく俺に声をかけてくれる。
声に覇気がなく、綺麗な顔が苦悶に歪んでいた。
俺がフレデリックにやられた後で、いろいろあったようだがどうしたものか……。
人質を取られて、人質にはバリアがあるようだ。
「死にぞこないの兄貴ガァァァァ! シネェェェェェ!」
フレデリックが俺に気づき、俺へと|〈火魔法:炎の槍〉《イグニス:フレイムランス》をいくつも同時に放ってくる。
イフリートもそれに引っ張られて力を使っているのか同化が止まったように見えた。
「フレデリック様は大丈夫なのですか?」
「このままだと大丈夫じゃないだろうな……」
気づけば俺の隣に鍛冶神の間で戦ったヒス女ことセレナがいる。
一緒に連れて来ていたようだが、理由を聞いたりする時間も惜しかった。
俺に向かって飛んできた|〈火魔法:炎の槍〉《イグニス:フレイムランス》が風の障壁が打ち消す。
「貴様がこの中ではリーダーのようだからな、協力してやる」
男の方、カスパーも口がぶっきらぼうではあったもの、協力を申し出てくれた。
「フレデリック様を救うことができるのであれば、なんでも致します……ですから……」
セレナが目を伏せて頭を下げるのを見て、俺はフレデリックを殺したりすることをやめる。
悲しむ奴がいるのであれば、生かしておくのがやさしさという奴だ。
それに、俺はまだ人殺しをしたくはない。
「セレナ、だったか? 幻影魔法が使えるようだから……みんなの姿を俺にしたり、増やしたりできるか?」
「それくらいでしたら、できますわ……見てなさい」
|〈幻影魔法:蜃気楼〉《イリュージョナ:ミラージュ》
セレナが魔法を唱えたら、フレデリックの表情が変わった。
「ブンシンしたか、アニキィィィィ! 全てをハカイするゥゥゥゥ!」
イフリートと同化しているせいか、冷静な判断ができなくなっているフレデリックが広範囲魔法を人のいないところへ放つ。
作戦は成功、時間は稼げていた。
だけれど、フレデリックの様子からは早々に決着するべき様子が漂っている。
フレデリックが放った魔法の一つが、アリシアに飛んで行ったがバリアのようなもので打ち消された。
その際には胸のペンダントが光る。
「アリシア、そのペンダントは?」
「これは魔導具【水精霊の涙】と呼ばれるものよ。呪文不要で対炎への結界を貼ってくれるわ」
「金属で包まれているけど……」
「アダマンタイト製といわれているわ、このペンダントがどうしたの?」
俺はアリシアのペンダントに注目し、考える。
超高速で飛ばしてぶつければ、イフリートを倒せるはずだ。
高価なものだとわかりながらも、俺はアリシアに訪ねる。
「悪い、そのペンダント貸してくれるか? もしかしたら、返せないほどボロボロになるかもしれないが……」
「勝算があるなら、いいわ。私達の魔法攻撃じゃイフリートを攻撃しようにもフレデリックの魔力量で作られた結界を抜けないもの」
俺が俯きながらいうとアリシアは悩むことなく答えてくれた。
「5年前、あなたを守ってあげられなかったお詫び。もっと高くついたら、その時は一つだけお願い聞いてもらうことするわ」
「願い事は無茶なものだけはやめてくれよ」
俺は苦笑をしながら、アリシアが外したペンダントを受け取る。
金属の質感が鉄とは違い、もっとなめらかでありながら魔力的な何かを感じるものだった。
「みんな! イフリートやフレデリックの気を引いてくれ!」
「「了解!」」
元気のいい返事がしたのを確認した俺はペンダントを掌において、イフリートの心臓部に狙いを定めた。
よろける俺をレイナが支えてくれる。
「ウチが支えるから、遠慮なくやるんや!」
その言葉に俺はうなずき、意識を集中させる。
磁力をアダマンタイトのペンダントに集中させて、回転力も与えて力を加速させていった。
周囲に風が起きるのも気にせず、力を集めてまとめていく。
勝負は一撃、そこに俺の無限の魔力を込めていった。
その間にもエリカとアリシア、カスパー、セレナが魔法で攻撃をし続け、リサとセリーヌがイフリートへ近接攻撃を仕掛ける。
バリアではじかれるも、しつこく迫っていく姿に苛立ったフレデリックとイフリートは炎を竜巻を起こして全員を吹き飛ばした。
「ジュリアンは倒させやせん!」
集中している俺の目の前に炎の竜巻が迫るも、レイナが氷結ポーションを投げつけて、凍らせた。
イフリートの姿が目の前の氷の壁で見づらくなる。
|〈磁力魔法:磁界探知〉《マグネス:マグネディテクト》
別の魔法を唱え、脳の処理能力が増えて沸騰しそうなほどに熱くなるが狙いを定めるためには必要だった。
フレデリックの血液と、イフリートの心臓部に金属らしきものの反応を捉える。
「狙いはつけれた……いくぜ! これが最大必殺技! レールガンだ!」
|〈磁力魔法:超電磁加速砲〉《マグネス:レールガン》
俺の腕に仕掛けておいたコイルに電磁誘導で流した電流を発生させ、ペンダントを超加速して放った。
目の前の氷の壁を砕き、イフリートの心臓部へまっすぐ飛んでいく。
迎撃しようと炎魔法を放つも全て、ペンダントにあたる前に霧散した。
ドシュン!
イフリートが腕をクロスして、心臓部を守ろうとするが腕ごと心臓部をペンダントが貫く。
「「ギャオグオワァァァァ!!」」
フレデリックとイフリートが同時に叫び越えを上げて悶えていた。
イフリートの体が燃えていき、どんどん消えていく。
俺達全員はイフリートが消える最後まで、静かに眺めていた。
■焔の神殿付近 野営地
俺達はフレデリックも含めた全員で焔の神殿のダンジョンを脱出した。
炎魔神が復活したときの地震が響いてきたのか、神殿の出口にいた見張りの人達にいろいろ聞かれるも適当に答えて、野営地にたどり着く。
設営はしたものの、フレデリックがダンジョンに入ったと聞いて急いで追いかけたので、そのままだった。
すぐに休めるので、今は助かっている。
「ウチ、予備のテントもあるから、一張増やすな~」
レイナが大きなリュックからテントを取り出すと、設営をリサやセレーヌと始めていた。
俺が立てた、男が入るようテントに気を失っているフレデリックを下ろす。
ひと騒動起こしたバカな弟なんだが……どこか憎み切れずにいた。
命の危険に何度もさらされているのにとは思うが、やっぱり血のつながりが大きい。
気が付いた時、殺されかけては叶わないので、セレナとカスパーにフレデリックを預ける。
「ここで一休みはしてけ、あとはアリシアに任せているが騒動を起こした責任ってのはとる必要があるだろうな……」
「ええ、フレデリック様ともども、わたくしも責任を取りますわ」
「貴様たちには世話になった。イフリートを止めてくれたくれたこと感謝する」
セレナとカスパーに礼を言われたが、軽く手を振り気にするなと示して、その場から離れた。
貴族相手に不敬といわれようが、騒動の原因なんだから多少はおおめに見てほしい。
テントを離れると、アリシアが岩に腰かけて欠伸をしているのを見かけた。
アリシアが俺に気づき、顔を赤くして欠伸をこらえる。
「お疲れ、アリシア」
「お疲れ、ジュリアン」
挨拶をかわし、俺はアリシアの隣に腰かけた。
何を話したらいいのか分からなくなる、俺は黙ってしまう。
先に沈黙を破ったのはアリシアだった。
「すごくなったね、ジュリアン」
「いきなりなんだよ……あ、これ形がちょっと歪んじまったけど……」
アリシアの言葉に何となく恥ずかしい気持ちなって、俺は拾っておいたペンダントをアリシアに渡す。
相当な力でぶっ飛ばしたので、やっぱり歪んでいた。
アリシアは俺の手からペンダントを受け取り、ぎゅっと握りしめる。
「今、私たちが生きているのはジュリアンのお陰だよ。だから、ありがとう……魔導具は作り直せるけど、人はいなくなったら復活できないから……」
アリシアがペンダントを握りしめながら、静かに語る。
死んだら復活できないという言葉は俺に微妙な気持ちをいだかせた。
俺は今、こうして異世界とはいっても復活しているから……。
とはいっても、腹を魔法で貫かれたら痛いし、爆発に巻き込まれても痛い。
痛い思いはしたくないので、この世界で死ぬのもご免だ。
「なぁ、フレデリックはどうなるんだ?」
「【炎魔神の心臓】を公爵家から盗んだことが一番の重い罪になるから、学園も家からも追放されると思う……」
「そうか……」
「ねぇ、ジュリアンは魔法学院に戻ったりしないの? 」
「俺は魔法学院に戻るつもりはないなぁ……」
5年前はあこがれていた魔法学院の入学。
そこから、学園ラブコメが始まることを期待してなかったといえば嘘になる。
けど、俺は冒険者としてハーレム展開に近い状態なので、満足していた。
「そっか、残念」
「俺はさ、ただの魔法使いとしては活躍できないんだ。だから魔法学院には向いてない」
「ジリョク魔法だっけ? そうよね、媒介が必要な魔法は使い方が難しいかも」
という、建前を話しているとエリカが俺を呼びに来た。
「ジュリアン、ご飯を作ってほしいとのことですわ。セリーヌとリサが特にジュリアンのご飯が食べたいとうるさくて……」
「へいへい、じゃあ作りに行きますかね。アリシアも飯くらい食っていけよ」
「それじゃあ、お邪魔していくわね」
エリカに呼ばれた俺は立ち上がり、アリシアの手を取って連れ出す。
その様子をエリカがじとーっとした目で見てくるが、そんなものは無視だ、無視。
◇ ◇ ◇
ご飯も食べ終えた俺達に別れの時が訪れた。
アリシアはカスパーやセレナ、いまだに意識を失ったままのフレデリックを〈風魔法:飛行〉で浮かせる。
アリシア自身が魔法をかけたのは逃走防止で制御する部分もあるようだ。
「じゃあな、アリシア」
「ジュリアン、また会える?」
「魔法都市ルミナエアに行く予定でもあればな……」
振り返って、俺に近づいてきたアリシアが訪ねてくるが、俺は一線を引いた答えを返す。
アリシアは公爵家の人間だし、俺の様な冒険者と長々付き合う機会はない方がよかった。
俺は追放されたとはいえ、問題行動を起こしたフレデリックの兄弟というのも外聞が悪い。
だから、このまま会わない方がいいと思っていた。
「ふふふ、それなら約束は大事に使わなきゃね」
アリシアは微笑むと、俺の頬へそっとキスをする。
彼女のいう約束とは俺がペンダントを預かるときにした「俺にできることなら1つだけいうことを聞く」という奴だろう。
あんな約束しなけりゃよかった。
アリシアは俺に向かって軽く手を振ると、3人を連れてルミナエアの方へ飛んでいく。
俺がその様子を見守っていると、頭にポヨンとしたものがのっかってきた。
「ジュリ坊、なかなかいい雰囲気だったにゃ、あちしともキスするにゃ!」
「頭の上に胸乗っけながらいうことが、それかよ!?」
リサの巨乳が頭の上にあったかと思えば、両手がエリカとレイナによってふさがれる。
「キスをするというのであれば、私もしたいですわ」
「ウチもジュリアンとキスしたいんやで」
いきなりキスを求めてくるとは何事なのかと俺が戸惑っていると、セリーヌがガハハと笑いながら姿を見せた。
「ジュリアンはモテモテでよかったのだ。私が隠し味に入れた薬のお陰なのだな」
「てめぇ! さり気に何しやがる!」
「ハハハハハ! みんな素直になっていいことなのだ!」
俺はこうしたドタバタしている方がいい。
冒険者として楽しくいきたいと改めて思うのだった。
■シュテルン邸 ジュリアンの部屋
「―――様! ジュリアン様、朝ですよ? 今日は冒険者ギルドにランクアップ申請に行く日ですよね?」
「ん……おはよう、ミツキ」
朝の眩しい光の中、微笑み浮かべるメイドの姿を確認すると俺は起き上がった。
初めて磁力魔法を使ってからすでに10年余りがたって、今では俺もAランク冒険者になる。
「着替えるから出て行ってよ」
「恥ずかしがらなくてもいいではありませんか、昔からのことですし」
「昔からだから嫌なの! 朝飯はギルドの酒場でみんなと食ってくるからいらないー」
「かしこまりました」
俺のお付きメイドのミツキを部屋から追い出した。
ベッドから降りて、俺は着替えはじめる。
動きやすい服に皮鎧を着こむのも5年前の始めての冒険者試験のことを思い出せた。
鉄板の仕込まれた小手とブーツをつけ、腰に鉄の剣を下げてれば装備は完了。
鏡の前でポーズを決めてしまうのは、昔よりも自信がついた証拠だ。
そのまま部屋を出て、冒険者ギルドへと俺は向かう。
■イーヴェリヒト 冒険者ギルド
鉱山都市イーヴェリヒトの冒険者ギルドは立派な建物で、今日も人が多くごった返している。
酒場も併設されているので、朝っぱらからお酒を飲んでいる人もまばらだがいた。
夜勤上げの炭鉱夫や昨日から飲み明かしている冒険者達もいる。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。ジュリアンさんはランクアップですね」
酒場エリアから離れた場所にある受付へ足を運ぶと眼鏡をかけたデキる事務員という様子の女性が対応してくれる。
お気に入りの受付嬢のエミリアさんだ。
優しい微笑みは冒険者として登録し、いろんな依頼を受けている中でも変わらない。
俺は手続きを進めていきながら話をつづけた。
「もうAランクになるけど、何か特典とか制限とかあったりする?」
「そうですね、特典というものは高難易度ダンジョンへの許可がでます。イーヴェリヒトを離れた場所には冒険者ギルド管理でも難しいところもありますのでチャレンジしてみるのもいいかもしれません」
「なるほど、イーヴェリヒトを離れるかぁ……グラディアくらいしか行ってないから、見分広めにいくのはありか」
書類の記入をしながら、エミリアさんと話をする。
半年余りでAランクという超速にランクアップしたので、のんびりしたい気もする。
とはいっても、のんびり物見遊山にいったグラディアで面倒なことになったりもしたので、悩みどころだな。
エリカの住んでいたエルフの森に行くのもいいかもしれない。
「私はジュリアンさんのファンなので、応援していますよ」
「あ、ありがとう……ござい、ます」
「おうおう、ジュリ坊はおませだなァ」
「エミリアほどのナイスバディで色気あったら、男なら気にならないわけねぇだろよ」
急にファンと言われたことで、俺はドギマギしてたどたどしく答えてしまった。
その様子を見ていた先輩冒険者達が酒場の方からヤジを飛ばす。
言われていることが外れてもいないので、俺は文句ということなく手続きをして、仲間のいる酒場のテーブルに向かった。
◇ ◇ ◇
そこは朝からすでに出来上がっている面々がいる。
朝食を軽く済ませるはずが、打ち上げみたいになっていた。
集まるよういったときに俺が奢りといったのが悪かったのか? 誰か教えてくれ。
「Aランクたっせーおめでといぇーいにゃ!」
「うぇいうぇーいなのだ!」
「ああ、ジュリアンさん! リサさんを止めてくださいな」
「俺には無理。ただの筋力でいくと俺よりリサやセレーヌのほうが上だぜ?」
エリカが助けを求めるが、俺にはこのパリピどもを止められる気がしない。
酒場では派手な魔法は禁止されているし、どうしたものか……。
そう考えていた時、俺の頭にひらめきの豆電球が光る。
「これなら、静かになるだろ」
|磁力魔法:血流操作《マグネス:ブラッドコントロール》
リサとセレーヌの血の流れを操作して、貧血を起こさせた。
割と多用するとマジで危ない業だが、酒場に迷惑が掛かるようなら仕方ない。
「あ、あの!」
騒いでいた二人をテーブルに突っ伏させて沈めた俺に声をかけてくる少年がいた。
俺と同じ10歳くらいだろうか、冒険者になれるギリギリの年齢だろう。
「ジュリアンさんですよね? 最年少、最速でAランクの!」
「ああ、俺が磁力魔法使いで魔法剣士のジュリアン・シュテルンだ」
まるでヒーローを見るような瞳の少年に向けて、俺は名乗りを上げるのだった。
俺だけ使える磁力魔法~追放された転生アニオタ貴族は最強魔法剣士になる~ 第一部 完
ここまでで第一部が終わりです。
読んでいただきありがとうございました!
この先の諸国漫遊編については余裕があったり要望が多ければ書いていければとおもいますので、よろしくお願いいたします。




