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27話 ブリリアント04

「「「お帰りなさい、マスター!」」」

 

「「「土産ありますか?」」」

 

「石」

 

 ギルドに戻ってきた四人を、メンバーが迎える。

 ラウンドは、ダンジョンの戦利品を入れた袋を近くにあった机に置き、ギルドの奥へと向かう。

 袋に群がるメンバーなど気にも留めない。

 

「お帰りなさい、ラウンド殿。それと、皆様」

 

 ギルドの奥に置かれた幹部用のテーブルの隣には、オールドマインが立っており、礼をもって四人を迎える。

 

「ペアシェイプは?」

 

「まだ、戻ってきておりませんな」

 

「ならいい」

 

 四人は、テーブルの周りに置かれた椅子へ座る。

 最後に、オールドマインも座る。

 六席のうち、五席が埋まる。

 

「さて、何から話すか」

 

 ラウンドが腕を組み、椅子にもたれる。

 背もたれがギシリと音を立てる。

 

 ラウンドは、今回のことを順に話していった。

 ベリドットのダンジョン突入前に、ステップと衝突したこと。

 ベリドットのダンジョンに出現した魔物と、試練の内容。

 ステップと共存する形でダンジョンを攻略したこと。

 最終階層での出来事。

 ダンジョンの宝をブリリアントとステップで等分したこと

 それに加え、ベリドットの石とスクウェアステップの持つ石の使用権を一度得たこと。

 

 オールドマインは、それら一通りを頷きながら聞く。

 

「なるほど、おおむね理解しました。主要な目的は達した、ということですな」

 

「ああ。ベリドットの石の能力がわからんことを除けば、な」

 

 そう言いながら、机の上にベリドットの石を置く。

 夫婦の幸福の力を持つ、透き通った緑の石を。

 

 オールドマインがしげしげと眺める。

 

「確かにそうですな。ダンジョンの石の力を知る事は、今後のタンジョン攻略を有利に進めるためには必須の情報です」

 

「ああ。試練の内容から推測し、検証が必要だ」

 

 ダンジョンの石の力に、説明書はない。

 大抵、そのダンジョンの試練の内容から推測、あるいはダンジョンの石の能力を使ってくる最終階層のフロアボスの動きから判断することになる。

 しかし今回は、最終階層のフロアボス、ベリドットのダンジョンは、戦うことさえしなかった。

 自らベリドットの石をよこしたのだ。

 そのため、ベリドットの石の能力は、わからずじまいである。

 

「試練の内容からなら、男女の手首を繋ぐだとか、信頼関係を失ったら石化するとかになるだろうが、そんな限定的な力だとは思えん」

 

「そうですな。それは能力の一端、と考えるべきでしょうな」

 

 しばし、能力に考えを巡らせたところで、オールドマインが喉の奥に引っ掛かっていた疑問を口にする。

 

「ベリドットのダンジョンは、なぜ戦わずして、自害を選んだのでしょうな」

 

 オールドマインにとって、ダンジョンは人間を襲う存在である。

 滅多に王都に攻め込んでこない、攻め込んできても一体ずつ、そして多少の犠牲はあれど返り討ちにされている、など動きに不可解な部分はある。

 だがしかし、王都以外の村を滅ぼし、国の外を移動していたハンターや商人を飲み込み殺している。

 ただの殺人兵器である。

 それゆえに、人間に害成す存在と認識し、ダンジョン撲滅を掲げるブリリアントに所属している。

 

「さあな」

 

 ラウンドがぶっきらぼうに答える。

 興味がないのだ。

 これから、撲滅する相手のことなど。

 

「これは重要なことですよ、ラウンド殿。ダンジョンが我々人間を絶滅させたいのか、それとも特定の人間を滅ぼしたいのか、そもそも滅ぼす気がないのか。それによって、ダンジョンの動きは大きく変わり、我々の行動を変えざるを得なくなる可能性もあります」

 

 例えば、ダンジョンが人間を絶滅させたいのならどうだろう。

 各国はハンターのダンジョン討伐を歓迎するだろう。

 例えば、ダンジョンが特定の人間を滅ぼしたいのならどうだろう。

 国の中に、特定の人間を生贄にし、事態の終息を測ろうとする者が現れ、ダンジョンの討伐が禁止される可能性もある。

 ダンジョンが人間を滅ぼす気がない場合も、また同様。

 

「……確かにな。自害の理由か」

 

 オーバルが、首をひねった後に口を開く。

 

「ダンジョン自身に戦う力がなく、勝てないと悟って自害した、とかはどうだ?」

 

「ありえるか?」

 

「わからんが、色んなダンジョンがいてもおかしくないだろ」

 

 ハートが、パンと手をたたいて口を開く。

 

「戦いが嫌いだったとかぁ(はぁと)」

 

「ない」

 

「えぇ~(はぁと)」

 

 マーキーズが、ふむ、と一呼吸おいて口を開く。

 

「自害ではなく、ダンジョン自身の制約、というのはどうじゃ? ペアで参加という制約が、ダンジョン自身にも単独の戦闘を禁止してしまい、最終階層に誰かがたどり着いた時点で敗北が決まっておったとか」

 

「ありえるな」

 

「真実じゃったら、なんとも間抜けな話じゃがな」

 

 その後もいくつか案が出るも、情報が不足し、確信には至らない。

 

「なら今度、ダンジョンに訊いてみるとか(はぁと)」

 

 一番間の抜けたアイデアが、しかし一番確実に近く、一番現実的でないかと結論づいたところで、話題は次の話へと移る。

 ラウンドたちがベリドットのダンジョンを攻略している間、オールドマインが調べていたことだ。

 オパールの石の能力について。

 

 オールドマインは、オパールの石を取り出す。

 

「簡潔に申し上げますと、現時点では、使用者と同程度以下の大きさで、生物ではない物体ののみを創造することが可能です」

 

 そう言って、オパールの石の力を使う。

 オパールの石が輝くと同時に、テーブルの上が白い光に覆われる。

 そして、光が収まった後、テーブルの上には見事な料理が載っていた。

 肉に魚に野菜にパン。

 すべて調理済みの状態で皿に乗っており、かぐわしい香りが辺りを包む。

 

「食えるのか?」

 

「もちろんです」

 

「害は?」

 

「三日間、毎食食べていただきましたが、体に変化はありませんでした」

 

 誰が、とは愚問である。

 

「ふむ」

 

 ラウンドは、パンをつかみ、かぶりつく。

 焼きたて特有のふんわりとした感触が口の中に広がる。

 もぐもぐと咀嚼し、飲み込む。

 

「間違いなくパンだな」

 

「栄養価も、本物同様です」

 

 二口目をかぶりつく。

 

「私も一つ食べてみよぉ~(はぁと)」

 

 かぐわしい匂いに、空腹感が刺激されたハートが、骨付き肉をとってかぶりつく。

 

「んんん~(はぁと)!おいし~い(はぁと)!」

 

 二口、三口とかぶりつく。

 

「もっとも創造には、創造する物の材料と作り方を、明確にイメージする必要があります」

 

「……つまり生物を作れないのは、俺たちが生物の材料も作り方も知らないから、というわけか」

 

「おそらくその通りです。人体を解剖すれば骨や肉の位置はわかるのですが、記憶や意識がどこにあるかはわからずじまいで」

 

「ちゃんと掻っ捌いたのか?」

 

「もちろんでございます。医術に長けた者を雇い、肉も臓物も捌いたのですが、まったく手がかりが」

 

「……食欲なくなっちゃったじゃない(はぁと)」

 

 ラウンドは背もたれにもたれかかり、天井を見る。

 生物の創造ができれば、魔物に魔物をぶつけることもできたかもしれない。

 死者さえ蘇らせられるかもしれない。

 そんなことを考えていた分、少々当てが外れたという表情をしていた。

 

「事象の創造はどうだ?」

 

「そちらもどうにも。何をどうイメージすればよいのか、見当もつきません」

 

「……ダンジョンどもは、俺たちよりもはるかに高い知識をもっているようだな」

 

 期待通りに物事が進まないイライラを、言葉に乗せて吐き捨てる。

 

「まあ、食料や予備の武器を運ぶ手間はなくなりそうだな」

 

 そして、オパールの石の使い方をさしあたり決め、話題は次の話へと移る。

 次のダンジョン、アメシストのダンジョンについて。

 

 ラウンドは、ダンジョン・サーチャーをテーブルに置き、ベリドットの石を中に入れる。

 ダンジョン・サーチャーに表示される方角と距離が変わっていく。

 

「この距離、この方角、ということは」

 

 ラウンドは立ち上がり、メンバーの方へと向く。

 

「聞け! 次の目的地はショメ国! そこで、アメシストのダンジョンを討つ!」

 

 愛と感性の国、ショメ国。

 世界中の王族に好まれる場所。

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