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28話 ショメ国01

 愛と感性の国、ショメ国。

 

 ショメ国は、八つの国の中でも芸術に力を入れている国である。

 ショメ国の子供たちは、幼いころから絵画を描き、石像を掘り、楽器を奏で、演劇をして遊ぶ。

 この習慣によって、芸術のセンスが磨かれ、結果、多くの芸術家を輩出してきた。

 世界に存在する芸術家の、九割以上がショメ国出身であるとさえ言われている。

 ある画家は、力試しにショメ国の扉をたたいたが、十歳の子供の落書きを見て筆を置いたという逸話も残っている。

 

「いつきてもクソみてえな国だな」

 

「えぇ~(はぁと)?可愛いじゃん(はぁと)」

 

 ラウンドは、ショメ国の建物を不快そうに眺める。

 

 ショメ国の建物は、ただの建造物と呼ぶにはもったいないほどに、芸術品としての価値がある。

 それは、芸術を学んだ国民が建築家となり、芸術要素を取り入れた建築が主流であるためだ。

 例えば、左右対称を意識した建物や、今にも崩れそうだが綿密な計算によって高い強度をもつオブジェクトなど、周囲を見渡せば簡単に人間を感動させる建造物がある。

 

 ただし、その芸術のベクトルは、王族を感動させる方向に向いており、実用性よりもデザイン性を重視している。

 実用性を好むラウンドとしては、理解ができない建物でもある。

 

 ショメ国に入ったラウンドたちは、いつも通りに酒場を併設する宿を一つ貸し切り、拠点とした。

 ショメ国の中では、比較的地味な宿である。

 とはいえ、比較的、というだけで、他国と比べれば芸術品である。

 酒場の椅子も机も、細部までデザインが造りこまれており、二度三度見ても、見るたびに新しい発見がありそうなものである。

 

「どかせろ、オーバル」

 

「あいよ」

 

 酒場の奥に置かれていた椅子と机を、さっさと撤去する。

 

 そして、オパールの石を使う。

 酒場の奥が白い光に包まれ、次の瞬間には何の変哲もない椅子と机が出現した。

 酒場のデザインと似ても似つかない、座るという役目を果たすだけの、普通の椅子と机である。

 

 酒場のカウンターから、店主とその娘が顔を引きつらせている。

 芸術への歓声が高い故、酒場の中にある異物が気になって仕方がないのだろう。

 が、ラウンドは構わずにオパールの石で創造した椅子へ座る。

 椅子が、ぎしりと音を立てる。

 

「さて、アメシストのダンジョンの攻略だが、一月ほど時間を空けようと思う」

 

「そりゃまた、なんでだ」

 

 ダンジョンを一日でも早く撲滅しようと考えるラウンドからすればのんびりとした提案に、オーバルは疑問を投げかける。

 

「……実力が足りない」

 

 認めたくないように、苦い顔でラウンドが言う。

 

「オパールのダンジョンでは、アンモライトの石の自己回帰ができなければ、かなり不利になっていた。ベリドットのダンジョンにいたっては、ネクロマンサーの女がいなければ魔力が尽きて死んでいた可能性さえある」

 

「……まあ……な」

 

「ダンジョンを撲滅するための力が、俺たちには足りない。だから一月空ける。確実にダンジョンを討つために」

 

「その間に、ステップが動いたりしねえか?」

 

「構わん」

 

 ダンジョンとの共存は、ラウンドにとって理解できない、同意しない方針である。

 ただし、ステップがダンジョンとの共存を目的にアメシストのダンジョンへと近づいたとしても、ダンジョン側がそれを断るだろうと考えていた。

 結果、ステップのメンバーはダンジョンに飲み込まれ、討伐せざるをえなくなるだろう、と。

 アメシストの石を入手できないことだけは痛手だが、手を下すまでもなくダンジョンが一つ討伐されることを考えると、妥協できると考えた。

 

「それともう一つ。ベリドットの石は、俺が持って能力を調べる。オパールの石は、オーバルかオールドマイン、どちらが持つか選べ」

 

 オーバルとオールドマインが顔を見合わせる。

 

「なら、オールドマイン、あんたが持てよ。俺は剣さえあれば他には何もいらねえし、ここ数日、使い方を調べてたのもあんただ。俺よりすぐに使いこなせるようになるだろ」

 

「そうですか。では、ありがたく使わせていただきます」

 

 そう言って、ラウンドが投げたオパールの石を受け取る。

 

「話は以上だ」

 

 そう言って、ラウンドは立ち上がる。

 

「どこへ行くんだ?」

 

「王宮だ。アメシストのダンジョンを討つことと引き換えに、この国に仕えるハンターと訓練ができるように話をつけている」

 

「まじかよ!?」

 

「お前らも、興味があれば来い。数人程度なら俺がねじ込む」

 

「待ってラウンド(はぁと)!私も行く(はぁと)!」

 

 時間が惜しいとばかりにギルドを出ていくラウンドの背を、ハートは急いで追いかけていった。

 

 残されたのは、三人の幹部と、ギルドメンバーである。

 

「さて、吾輩はどうするかのう。適当なダンジョンにでも潜って、修行するかのう」

 

 マーキーズの能力は、ゴーレムの召喚である。

 必要なことは。操れるゴーレムの数と種類を増やし、自身の手足かのように操作できるようになることである。

 国に仕えるハンターと訓練はもちろん魅力的ではあるが、ゴーレムの操作を訓練する場合、うっかり暴走させると人的被害があるため、どれだけ殺してもよい魔物のいるダンジョンが最適なのだ。

 

「俺は、王宮へ行こうかな。剣士として、いろんな相手と戦っておきてえ」

 

 オーバルは純粋な剣士である。

 多くの人間と戦い、多くの戦い方を知ることで成長する。

 

「私は、他のメンバーへ指示をした後、ここでオパールの石の使い方を磨くとしますか。私のような年寄りは、対人戦を増やしても、これ以上成長はしないでしょうし、あまりメリットがありませんので」

 

 三人の方針が決まり、三人ともが席を立つ。

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