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26話 ステップ02

 ダンジョンが崩壊し、ブリリアントとステップのメンバー全員が、地上へと帰された。

 ただし、石化したメンバーは、石のままで。

 

「……手首のリングははずれたが」

 

「戻んないねぇ(はぁと)」

 

 オーバルとハートの腕は、石化したままである。

 それは、ステップも同様。

 ニ十組のメンバーが全身を石化され、地上へ放り出されていた。

 

「もう一度、試してみるか」

 

 ラウンドはアンモライトの石を持って、オーバルとハートに近づく。

 

「回帰」

 

 アンモライトの石が輝き、石化した腕を包む。

 

「お!」

 

「あぁ(はぁと)」

 

 輝きが収まるまでもなくわかった。

 腕の感触が戻り、大気を感じる。

 輝きが収まった後、そこには石化のとけた腕があった。

 

「ダンジョンの中ではとけなかったが、今はとけた。ダンジョンが滅んだからか、ダンジョンの外だからか」

 

 ぶつぶつと呟くラウンドの前に、石化を解いたことに気づいたバゲットとスクウェアステップがやって来た。

 

「なんだ?」

 

 来た理由はわかっているが、あえて問いかけた。

 バゲットとスクウェアステップは、一瞬視線を交え、そのままラウンドに頭を下げた。

 

「貴方がさっき使った力で、どうか我々の仲間の石化も解いてほしい」

 

「お願いします」

 

 ダンジョンでの負傷も死傷も、自己責任として扱われる。

 よってラウンドには、その頼みを受け入れる義務はない。

 むしろ、石の力を多数の人間に披露することで、自身の不利益になると考え、断る場合も少なくない。

 

「条件が三つある」

 

「……聞きましょう」

 

 バゲットが、一歩前に踏み出す。

 

「一つ。お前が持っているベリドットの石を、俺に渡せ」

 

「わかりました」

 

「二つ。ダンジョンから出た宝の取り分は、ブリリアントとステップで二等分とする」

 

「わかりました」

 

「三つ。ネクロマンサーの女、お前のもつダンジョンの石、俺にその力を一度だけ使える権利をよこせ」

 

 バゲットが、スクウェアステップへと振り返る。

 スクウェアステップは、自分が石を持つことと、その石の力を知られていることに一瞬驚く。

 が、相手は三大ギルドのギルドマスターである。

 それくらいの情報もはあるだろうと、納得した。

 

「わかりました」

 

「契約は成立だ」

 

 ラウンドは、バゲットからベリドットの石を受け取り、そのまま石化されているステップのメンバーの元へ行く。

 

「回帰」

 

 メンバーの石化が解けていく。

 

「回帰」

 

 同時に複数に対して回帰できず、一人一人に触れ、回帰していく。

 石化の解けたメンバーは、薄暗いダンジョンから突然の日の光に、思わず目を覆う。

 そしてゆっくりと自分の身に起きたことを思い出し、石化から解放されたことを理解し、歓喜に震えた。

 

 余談ではあるが、石化した二十組のうち、六組は恋人同士のハンターであったため、激しい喧嘩……ではなく一方的な怒りが降り注ぎ、中には破局を迎えるペアもでるのだが、それはまた別の話。

 

「感謝する。ブリリアントのマスター」

 

「感謝します。ブリリアントのマスター」

 

「感謝はいらん。対価はもらっている」

 

 ラウンドはベリドットの石を掲げる。

 透き通った緑色が、日光を反射し、いっそう美しく輝く。

 

 しかし、ベリドットの石の力はわからずじまい。

 どうやって力を解明するか。

 そんなことを考えながら、ベリドットの石を眺める。

 

 石の能力は、試練の内容と、ダンジョンの戦い方から推測することが多い。

 しかし、ベリドットのダンジョンは戦わなかった。

 最終階層に来た者たちへ、エールとも呼ぶべき言葉を送り、そのまま自害し、消滅した。

 石の能力を推測する材料を残さずに。

 試練の内容から推測するなら、男女の手首をリングで結ぶだとか、一心同体でなくなったら石化させるだとか、そういった類だろう。

 

「検証が必要だな」

 

 ティニー国で入手した二つの石。

 オパールの石。

 ベリドットの石。

 

「よし、お前ら、宝を袋に詰めろ。ギルドへ帰還する」

 

「ステップのメンバーもだ」

 

 各々の取り分を回収し、ギルドへと帰還した。

 

 

 

 

 

 

「「申し訳ありません、エメラルド様」」

 

 ギルドへと帰還したバゲットとスクウェアステップは、真っ先にギルドマスターの部屋を訪れ、最初にエメラルドへと頭を下げた。

 ベリドットのダンジョンと対話が失敗し、崩壊させてしまったこと。

 ベルドットの石を、ブリリアントに回収されたこと。

 ステップのメンバーの石化を解くため、ブリリアントと取引をしたこと。

 任務の失敗と、現場での独断行動についての謝罪である。

 

 エメラルドは、椅子に座ったまま、謝罪を聞く。

 目を瞑り、顎をさする。

 

「君たちが気にする必要はない。私が指示した結果だ。すべての責任は私にある」

 

 目を開きながら、エメラルドは穏やかに言った。

 

「「エメラルド様……」」

 

「十二大ダンジョンを、身を持って体験することができた。それは、君たちの将来にとって大きなプラスだ。この失敗を糧に、次を成功させよう。すべては」

 

「「人間とダンジョンの、共存のために!」」

 

「その通りだ。私の愛しき弟子たちよ」

 

 エメラルドは立ち上がり、バゲットとスクウェアステップを抱きしめる。

 二人は、抵抗することなく受け入れる。

 

 抱きしめながら、エメラルドは頭の中で、次を考えていた。

 二つのダンジョンが討伐された。

 十二のうち、二つだ。

 それを、他のダンジョンがどう感じとるか。

 たった二つと気にしないか、それとも二つも討伐されたと憎悪を貯めるか。

 後者であれば、共存の道は確実に遠のいていく、どうしたものかと、次の行動に意識を張り巡らせていた。

 

 現在、ダンジョン撲滅を掲げる最大のギルド、ブリリアントを説得できれば、一時的にダンジョンの討伐は止まるだろう。

 共存を解く時間は増えるだろう。

 しかし、おそらくブリリアントは止まらない。

 ならば、時間がたてばたつほどに、共存には不利となっていく。

 では、どうするべきか。

 

 悩むエメラルドの後方で、ダンジョン・サーチャーが光る。

 

 次のダンジョン、アメシストのダンジョンの場所が表示されていた。

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