一六劇目 「雷皇アスカっ!!動体視力の限界と電気信号の脅威っ!?」
「それは却下だ!!」
俺は地を蹴り、一瞬で間合いを詰める。
アスカはレイピア。つまりは物理攻撃。
俺のS級スキルで渡り合えそうだ。
すると彼女は帯刀しているそのレイピアを抜き、刀身を露出させた。
それは漆黒に染まりし黒色。
それでいて刃は鮮血を吸い取ったかのような、深い緋色をしていた。
随分と邪悪な色の取り合わせだ。
「そんな邪剣、叩き折ってやる!!!」
俺は拳を繰り出す。そんな中、彼女は冷静かつ冷酷に呟いた。
「私の通り名を知っているか?・・・そう、雷皇だよ」
ここに来る時にリリラルとマリアが言っていた言葉が脳裏をよぎる。
雷に関するスキル。
A級でも最もS級に近しいと謳われるスキルオーナー。
すると彼女の手にしたレイピアが火花を散らした。
バチリ。
静電気のような音を立て、蒼い電流流れたかと思うと。
途端。
青白く眩いほどの発光体を帯び始めた。
「グッ!!眩しい!!!」
俺は思わず目を閉じてしまう。そしてそのレイピアに纏った発光体に触れてしまったのだろう、全身に凄まじいほどの電気が流れた。
全筋肉が痙攣し、骨にまで痺れが流れる。
「ガガガガガァァァァァァッッッッッッッ!!!!!」
俺は壊れたスピーカーのような声を発しながら、吹き飛び倒れた。
しかししばらくはまだ起き上がることなど到底不可能。
自分の四肢が脳の伝達を無視し、神経が言う事を聞いていない。
「ぐはっ!!」
しばらくして改めてダメージを受けたような声が俺の口から吐き出される。
それは、電流ではなくレイピアのダメージ。
つまり身体が、ようやく次のダメージを理解したのだ。
「私はA級のスキルオーナー。能力も落雷を落とすような森羅万象のものでは無く、せいぜい自分の身体から放出する程度だ。それは重々理解している」
すると今度は一切の踏み込みも無く、俺の背後を取った。
こう見えても俺は動体視力が良い。
だからマリアの魔石も摘出出来たし、素早く動く自分の身体についていけているのはこの動体視力があるからだとも言える。
脳筋だが、そこはS級と自負している。
しかし動体視力は、動く予兆があって初めて成り立つものだと、今の彼女の動きを見て俺ははっきりと定義出来た。
そう、動体視力は予兆があって初めて視る事が出来る。
つまり、今、俺の背後を簡単に取って見せた彼女の電光石火には、一切の予兆がなかったのだ。
動こうとする筋肉の収縮も、皮膚の変化も、一切無かったのだ。
消え、現れた。
こう表現するのが一番正しいようにも思えた。
「どうしたダーリン。驚いたか?負けを認めたのなら、優しく抱きしめて差し上げよう。私は女子力が高いからな」
「ダメにゃ!!」
「そうだぞ、自分だけ!!」
と遠くの方で外野が喚いていた。
いや、ちょっと集中させてくれ。
☆
「一体どうやって?」
俺はその正しく雷のような移動の原理に、頭の上の疑問符が消えずにいた。
アスカのそのブルマから伸びる美脚は軍人といえども女性の脚。
筋肉も適度についている程度の、可愛らしいものだ。
「ヒント1。人は気が付かないだけで、凄まじいほどの力をもっているのだ。それを起こしてやれば良いだけの事だ」
アスカは俺に何かを伝えるように言った。
俺は電流のダメージも回復し、跳躍をして間合いを取る。
俺は目の端でアスカの身体を捉えていた。
動くようなそぶりは無い。
ただ不敵に笑みを浮かべているだけだ。
が、しかし、俺が向き直った時にすでにそこに彼女の姿は無く。
またしても。
俺の背後に立っていた。
バリバリバリバリッッッッッ!!!!!!
俺が振り向く前に、その電流を纏ったレイピアで俺は攻撃を受ける。
「グワァァァァァァァ!!!!!!」
「ザゥッ!!」
「大丈夫かニャッ!!!」
ギルドバトルを見護る二人が、心配そうに俺に声を掛けた。
またしても脳信号が筋肉まで届かず、俺はガクガクとその体躯を奇妙にビクつかせる無防備な時間を作ってしまう。
あの予兆の無い移動方法を見破らなければ勝機は皆無。
俺は思考を巡らせた。
「ヒントその2、私の電光石火はダーリンが今している思考とは違う」
ん?当たり前だが。どういう意味だろう。
するとレイピアを上段に構えて
「それでは終わりにしよう。そして私とのラブラブライフを始めようではないか」
そして一瞬の静寂。
その後
バシュッ。
ブルマ軍曹こと、アスカが。
またしても予兆の無い動きをし、姿を消した。
その途端、俺は頭に一つの答えがよぎる。
そしてリリラルに向かって「塩水はあるか!!??」と大声で尋ねた。
その問いの間に、俺の背後を取る雷皇。
それを前転で避けると、「何っ、回避しただと!!?」と動揺を口にする。
「くっ、まぁ良い。二度も奇跡は続かないぞ、ダーリン!!」
そしてまた予兆で姿を消す。
「あ、あったニャ!!」
と自分の身体の何倍もある体積を有するリュックから「美味い!生命の母」とラベルの貼られたペットボトルを見つけ、俺に投げた。
「ったく、塩水が500mlで市販されてるって、どんな異世界だよ」
と俺は呆れながら、自分の背後に向かってその塩水をぶっ掛け、すかさず前転。
バシャッ!!
ちょうど現れたレイピアを振り下ろすアスカが、その水で身体と身に付けた軍服とブルマを濡らした。
あ、ちょっとヤラしい。
と俺は一瞬鼻の下を伸ばしかけたが、正気を保つ。
「わ、私の移動が見えたというのか?」
その問いに俺は、短く返答した。
「電気信号さ」と。




