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gentle love  作者: 朱希
模索編
33/33

zehn

無くさないで





消さないで






大事な君との灯火








gentle love






規則正しく、時には変化をもちながら黄色のボールはコートを動き回る。

瑠唯はそれをほほえましく見ていた。

日本を出発したときとはまた別のふっ切れた顔をしていた。

そうなった美羽はとても強かった。

幼い頃からテニスをしていたと言うレオンさえも完全に抑えていた。

レオンからのミスボールが飛んでくる。

とてもゆっくりを美羽のほうへ向かってきた。

それをとても楽しそうな顔でレオンのコートへスマッシュする。

「game match won by みう!」

「うおっしゃああああ!!!」

美羽は嬉しそうに天井を仰ぎ見る。

レオンは悔しそうにコートに寝転びドイツ語で何かぶつぶつとつぶやいていた。

「れ、レオン?」

瑠唯はおどおどと心配そうに、美羽はすがすがしい笑顔でレオンに近づく。

「レオン、ん!」

美羽が手をそっと差し出す。レオンは美羽を見上げた。

「レオン、ありがとな。俺、テニスが好きだ。大好きだ。」

レオンは一瞬眉をひそめたがすぐさまくすりと笑った。

「それは、おれとるいよりもですか?」

「・・・ばっきゃろー!」

「うわっ!」

伸ばした手は瑠唯を巻き込みそのまま寝転がるレオンを抱きしめる。

「お前らのほうが大好きに決まってるだろ」






七海はどうしようか悩んでいた。

一つは香南の父親についてである。

2,3日、レオンはドイツの様々な場所へ案内してくれた。

もちろん七海の体調のこともあり通常のペースよりも落としたものとなっていた。

楽しいが七海のドイツへ来た目的は香南の父親に会いたかったからである。

そろそろ探そうかと思いレオンに話したがレオンからの一言はもう少し待ってくれとのこと。

探すのを待つとは一体どういうことなのだろうか。

もうこれはレオンを待たず一人で探したほうが早いのだろうかと思い始めてきた。

そしてもう一つの悩みの種が彼である。

美羽、瑠唯そしてレオンはテニスをした日以来いつも以上に仲良さそうに観光していた。

三人が張り切れば張り切るほど七海がその後ろからついていく形になっていく。

ふと、三人が視界から消えたとき、目の前にはあの外国人がサングラスをして立っているのである。

「Oh!やまとなでしこ!またお会いしましたね!」

とても嬉しそうに握手を求めてくる。

二回目に会ったときには微笑ましくそれに応えていた。

しかし、それが三回、四回と重なると流石に不審に思ったのである。

今日もベルリンの壁を見ることになっており、三人がトイレに行くといなくなった瞬間を見計らってやってきた。

もちろんSPの人たちもいつの間にか居なくなっていた、

「えっと、あの…」

「お嬢さん、ドイツ観光は楽しいですか?」

「はい…もちろん楽しいです。」

「よかった!ドイツは日本と同じ。いろいろな歴史があります。いろいろな建物があります。とてもいい国です。」

満足した様子で笑顔で返される。

警戒心を持ちつつ早く離れたいと会話を途切れさせようと思うもののなかなか思うようにいかない。

最初は日本人を狙った泥棒や何かだと思っていたが、彼の身なりを見るとそうも思わない。

むしろその笑顔には警戒心を落ち着かせられいつの間にか七海も普通に会話をしているのだった。

「私もそう思います。」

今日はそうは行かないと早めに会話を切らそうとする。

しかしドイツのよさをこの旅行で実感しているのも事実。

嘘のつけない七海はついつい本音を口にしてしまう。

声のトーンはいやいやでもその言葉に外国人はとても嬉しそうに笑う。

「そうだろう?ふふっありがとう。お嬢さんにそう言ってもらえるととても嬉しい。」

真っ赤になった顔を隠すように七海は下を向く。

そんな七海の顔をのぞくように見る外国人。

それは面白がっているようにしか思えなかった。



早く三人来ないかな。



七海が祈るように思っているとぼそっと外国人がつぶやいた。

「…同じように、思ってくれるかな。」

「え?」

七海がそっと外国人を見るとさっきと同じように笑っていた。



ただ、目がとても悲しそうで。




「とても大事な子をね。なくしてしまったんだ。」






子を なくしてしまった






その言葉に七海はお腹をさすった。

「…とても、いい子なんだ。いつもぼっとしているように見えるけれど一生懸命何か考えているんだよ。とても可愛いだろう?何に対しても無関心だったけれど好きなものができた時は私も嬉しかった。思わず私も同じことを学び始めたよ。一緒にできる日を信じてね。」

「…」

「どうしてだろうね。家族だと思っているのに。この血がなくならない限り。」

手をさすりながら彼はぼそぼそと話し始める。

その手を見つめていると震えているのが見えた。それを止めるためにずっとさすっていたのだ。

「血じゃないんです。」

「え?」

言葉を止めようと思った。

もうここで笑顔で頷いて去ろうと思った。

けれどできなかった。

大切な愛しい彼の子供を授かった今なら。

「大切なのは血じゃない。その子を愛する覚悟」





じっと見つめるサングラスの先

目尻に皺のよった目は大きく開かれていた。

瞳はそう、彼のようにどこか彷徨っていた。

半年振りとか…本当に申し訳ないです

お待たせいたしました

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