日常
入学して一週間が経とうとしていた、学園での生活も少しだが慣れてきた。
さて今日も今日とて授業だ。
「星霊術は攻撃、防御、補助とその用途は多岐にわたるが、最大の欠点がある、それは何か分かるかね?」
ブラーエ先生が質問する、ステラが手を上げ答える。
「星霊術は肉体を大きく回復することができません、できるのは自己治癒力の強化程度です」
ステラがハキハキと答える。
流石はステラだ、クラス一の秀才である。
「正解だ、今まで幾度となく、回復の星霊術は研究されてきたが、その結果は芳しくない、それは何故か? 空気中の魔力自体に問題があるからだと私は……」
先生の話を聞きながら、僕は両親の事を考えていた。
回復の星霊術があれば父さんは腕を失わずにすんで、母さんも傷が残らなかったのかな……。
「と言う訳だ、今日の授業はここまでにしよう……それと、明日は王都近郊の森での実戦形式の訓練があるから、そのつもりでな……」
先生はいつものようにそそくさと、教室から去って行った。
「そういえば、ステラは部活何にするか、もう決めたの?」
「うーん、いまいちピンとこないのよね……」
ステラは未だに悩み中のようだ。
「筋肉研究部にするか?」
アランが提案する。
「それは、嫌!」
当然のように拒否された、アランも冗談で言ったのだろう。
「でもよ、一週間以内に決めないといけないんだろ? そろそろヤバいぜ」
そういえばそうだったな、即決したため、そんなこと忘れていた。
アランに言われて気付く。
「アスターは星霊研究部にしたの?」
「うん、メグ先輩が強引に……」
「メグ先輩って、もしかしてスピカ先輩?」
メグ先輩はスピカの継承者で王国でも名の通った星詠みだ、ステラが知っているのも当然だろう。
「そうだけど……」
「星霊研究部って、何人いるの?」
少し語気を強めて、彼女が尋ねる。
「僕とメグ先輩だけだよ」
少し困惑しながら、そう答える。
「随分と親しいみたいね、メ! グ! 先輩だなんて」
何だ? ステラの様子が少しおかしいぞ?
「決めた! 星霊研究部に入部するわ!」
「いいの? 正直おススメはしないけど……」
彼女までメグ先輩の毒牙にかかる事を心配した。
「い! い! の! 行くわよ、アスター!」
彼女に気圧されて、僕は何も言わずについていくしかなかった。
「凄い気迫だ、何も言えなかったぜ……これが恋する乙女ってやつか?」
アランが何か言っているが僕には何も聞こえなかった。
「いやー、やっぱり来たね! ステラ・ミモザくん! メグ先輩と呼ぶことを許そう! だから私も君のことはステラくんと呼ぶよ!」
メグ先輩はステラに強引な自己紹介をした。
メグ先輩にはステラが来ることも、お見通しだったのか? だからあの時余裕の表情だったのか……。
「メグ先輩には、負けませんから!」
ステラが謎の宣言をする。
負けないって、どういう意味だろう?
「おやーなるほど、なるほど、そういう事なら受けて立とうじゃないか! ステラくん!」
メグ先輩はニヤニヤしながら、ステラに宣言する。
なんだかよく分からないが、二人の間に稲妻が走っているようにみえるのは何故だろう?
「と、ところで星霊研究部の活動って何をするんですか?」
僕はたまらず、話題を切り替えた。
「特にない、何をするもしないも自由だよ! 幽霊部員がいたくらいだ、私は研究していたが、君たちは数合わせでも構わないよ!」
メグ先輩は強気に言っているように見えるが、僕には少し寂しそうに感じた。
「数合わせなんて言わないで下さい、メグ先輩の研究に協力しますよ」
せっかく同じ部活の仲間なんだ、協力したいと本心からそう思った。
「私も協力するわ、数合わせなんて柄じゃないもの!」
ステラもやる気満々だ。
「君たち…うぅ……」
メグ先輩の目に涙が浮かぶ。
「「メグ先輩!?」」
「泣いてないよ……多分これはドゥーちゃんが私の目に悪戯をしているのさ!」
急にメグ先輩がドゥーちゃんの名前を出して茶化す。
「そんなことしてませんのー!」
ドゥーちゃんが現れて、メグ先輩にツッコミを入れる。
「えっと……何この星霊?」
しまった、ステラはドゥーちゃんのことを知らないんだった。
「この星霊がドゥーベ、僕はドゥーちゃんって呼んでいるんだ」
「えっへんですの!」
だからなぜ、自慢げなんだ?
「そう、可愛いわね、よろしくねドゥーちゃん」
ステラはドゥーちゃんのことが気に入ったようだ。
「アスターくん、ステラくん、入部してくれてありがとう」
メグ先輩が深々と頭を下げる。
「頭を上げて下さい、メグ先輩! 同じ部活の仲間じゃないですか」
急にしおらしい態度をとるものだから、少し動揺してしまう。
「そうよ、調子狂っちゃうじゃない」
ステラも、照れながらも満更でもなさそうだ。
「二人とも! これからよろしくね!」
メグ先輩は屈託のない笑顔でそう言った。
「これで廃部の危機は乗り越えたわけだな、スピカくん……」
ブラーエ先生が急にドアの前に立っていた。
「気配を消しながら部室に入ってくるのは、やめてくださいよ、ブラーエ先生! 二人が驚いているじゃないですか!」
気付かなかった、気配の消し方が達人のそれじゃないか。
「性分なもんでな、これで変人同好会なんて言われずに済むな……」
変人同好会って……メグ先輩は多少強引だけど、変人って程じゃ……ブラーエ先生は……。
「何か失礼なことを考えてないかね、ハウト君?」
「いえ、別にっ!」
僕は冷や汗をかきながら、しっかりと否定した。
「ミモザ君も、大変だろうが頑張りたまえ、それでは、二人の入部を申請しに行くから、私はこれで失礼するよ……」
ブラーエ先生はそう言い残すと、部室から去って行った。
「私たちも今日は解散としようか!」
メグ先輩に促され、その場で解散となった。




