邪神デミウルゴス
胸から血を吹き出し、崩れ落ちる皇帝。
「帝国を……世界を……頼む……」
皇帝の遺言。確かに受け取った。僕はその言葉に応えるべく、拳を強く握りしめ、ヤツを鋭く睨みつける。
――デミウルゴス。アマツさんを介して降臨した時とは比較にならないほどの、圧倒的なオーラ。その暗黒の力によって、周囲は黒く、そして暗く染まる。
「ちっ、NPCが自我出してんじゃねぇよ」
皇帝の意地をまるで嘲笑うかのように軽薄な言葉を吐き、亡骸を蹴り飛ばし弄ぶデミウルゴス。瞬間――。僕は地を蹴り、星霊術で身体と剣を限界まで強化し、斬りかかる。
「うぜぇな、熱くなってんじゃねぇよ! モブが!」
僕の渾身の一撃をいとも容易く受け止め、持っていた剣で反撃に転じるデミウルゴス。態勢を崩された僕は、その斬撃の直撃を受けそうになったが……。
「させませんわ!」
その直前、カレンの結界によって阻まれた。
「俺の一撃を受け止める結界だと? やっぱり、転生者じゃねぇのか?」
ヤツはニヤニヤしながら、品定めをするように、カレンたちを眺める。
「まあ、このNPCが使えないおかげで、俺も不完全な状態で降臨しちまったからな……」
ヤツはそれでも十分だ、と言わんばかりに歪な笑みを崩さない。
「じゃあ、行くぜ……」
ヤツの背後で《《外界》》の力を供給する暗黒のオーラが、さらに強まる。空気は震え、ビリビリと肌に伝わってくる。僕は心を奮い立たせ、身構えた。
ヤツの姿が消え、一瞬で僕の懐に潜り込む。繰り出される斬撃。間一髪のところでそれを受け流し、反撃を加える。だが、ヤツは躱すこともせず、直撃を受けながら次の攻撃を繰り出してきた。
「させません……」
「同じ手は食わねぇよ!」
カレンの結界をヤツの暗黒のオーラが破壊する。僕の眼前に迫る斬撃。あまりの速さにステラたちも反応できていない。
やられる……っ!?
ヤツの斬撃は何者かの剣によって阻まれた。その背中は僕のよく知るものだった。
「アラン!」
「ピンチみたいだな、間に合ってよかったぜ!」
アランは近衛騎士だ。ということは……。
「王国軍の先陣として、アラン様参上ってな」
アランがヤツの攻撃を弾き返すと、ヤツは警戒しているのか、少し距離を取った。
「雑魚モブが、何匹増えようと俺の敵じゃねぇんだよ!」
ヤツは暗黒のオーラを体内に取り込み、自身を強化したようだ。
「よし、ステラ、アラン、連携してヤツを叩くぞ!」
「了解!」
二人の声が重なった。ヤツは三対一でも防戦一方になるどころか、的確に反撃を繰り出してくる。決め手に欠ける攻防が繰り返された。そこに――。
「食らいなさい!」
美香が放った、火の上位星霊術が炸裂した。だが、その攻撃はヤツの肌を焦がすことすらできなかった。
「クソが、うぜぇんだよ!」
逆上したヤツの攻撃の矛先が美香に向かった。
「もらった!」
そこにメグの放った水の星霊術――いや、泥水がヤツに命中し、弾けた。
「くそっ、なんだこれは! 見えねぇ!」
ヤツは目に泥が入り、混乱しているようだ。
隙だらけの今なら、行ける!
「北極星よ、ヤツを撃て!」
星霊王・北極星の力を限界まで引き出し、身動きの取れないヤツに、極光を纏った一撃を叩き込んだ。
「やった!」
誰もが勝利を確信した、その時だった。光が消え、ヤツが姿を現す。
「絶対防御障壁、残念でしたー。俺の力を甘く見るなよ、雑魚モブくん」
ヤツには傷一つ付けることができなかった。
北極星の全力でも駄目なのか……。
僕たちの表情が絶望に歪む。ヤツはさらに醜悪なことを言い出した。
「お前たちの虐殺ショーを、全世界に見てもらおうぜ!」
ヤツが指を鳴らす。すると、帝都の上空に僕たちの映像が映し出された。
「帝都だけじゃないぜ、今この瞬間を全世界が見ているんだ。人々の希望が俺にズタボロにされていく様を、じっくり配信してやるよ!」
ヤツはそう宣言すると、再び構える。
そこからヤツは、僕とアランを執拗に攻撃してきた。
「女は俺の所有物に加えてやるから、安心して死ね!」
「ふざけるな! そんなこと絶対にさせない!」
絶対防御障壁の前に、僕たちは防戦一方だった。
ヤツの外界からの力の供給を止めれば、あるいは――。
その時だった。帝都の四方から、あの光の柱が立ち上った。




