我が名はダミー
アルテミスの放った、凄まじい光を放つ弾頭が僕たちに向けて迫る。そして――。
「結界よ! みんなを守って!」
カレンの鋭い叫びが響いた。その瞬間、司令塔の前に結界の星霊術が展開され、アルテミスの弾頭をかき消した。
「馬鹿なっ、あのアルテミスの主砲を無効化するだと!?」
いつもは冷静なクロが驚愕の声を上げる。
「た、助かったー」
ステラとメグと美香はホッとした表情を浮かべた。
「どう、アスターくん。私の力は!」
カレンは自信満々の笑みを浮かべた。アースとの修行の成果か、本当に凄い。
「凄いです! カレンがいなかったら、今の一撃で全滅でした」
僕が素直にカレンを称賛すると、彼女は少し照れくさそうに視線を泳がせた。
「おい、急いで脱出するぞ、次が来る」
クロに促され、僕たちは司令塔から脱出した。
司令塔の外には、帝国兵が待ち構えていた。全員を相手にしていたら、とてもじゃないが時間までにアルテミスにたどり着けない。
「ここは俺に任せろ、お前たちはアルテミスを奪取するんだ」
「でも、この人数を相手に一人じゃ……」
「俺一人なら、いざとなったら逃げられる。いいから行け。陛下を頼んだぞ!」
クロはそう言い残すと、帝国兵を引き付けるように立ち回った。
「行こう、みんな!」
僕はステラたちとともにアルテミスに急いだ。
手薄になったアルテミスに迫る僕たちの前に、威風堂々たる風格を纏った青年が現れた。三人の従者を従えている。
「侵入者か、我がこの手で直接葬ってくれる」
「あなたが皇帝陛下ですか?」
僕は青年に問いかける。クロとの約束だ、皇帝を救わなければならない。
「いかにも、我が名はダミー、アストロ帝国の皇帝だ」
ダミー……? デミウルゴスめ、傀儡にするだけでは飽き足らず、そんなふざけた名前を皇帝に名乗らせているのか!?
僕はデミウルゴスへの怒りで、拳を強く握りしめた。
「……? どうした、我が高貴な名に声も出せぬか? お主、名を名乗ることを許可する」
「アスター・フォーマルハウト……、あなたを救いに来た! 美香!」
僕は美香に合図を送る。疑似奇跡で、皇帝を救うんだ。
「――ッ、駄目、信じる力が足りない。皇帝の精神支配はクロさんのより強固みたい!」
頼みの綱の疑似奇跡が通用しない。どうする?
「ふん、何をしている? 行け、騎士たちよ、侵入者を排除せよ!」
三人の騎士が僕に迫るのを、ステラたちが防いだ。
「ぼーっとしない! ほら指示を出して!」
ステラが僕を鼓舞する。立ち止まっている暇はない、まずはアルテミスだ。
「メグはアルテミスを、ステラ、カレン、美香は騎士の相手を頼む。皇帝の相手は僕がする!」
「了解!」
僕の合図で、メグがアルテミスに向かった。彼女しかアルテミスのコントロールを奪取することはできないだろう。
「我が相手をするだと? 面白い、アスターとやら、かかってくるがいい」
皇帝がそう告げると、暗黒のオーラが皇帝の背後に立ち込めた。
やはり、皇帝もウラヌスと同じく、デミウルゴスによって外界の力を得ているのか。
僕は星霊術で身体と剣を限界まで強化し、一瞬で間合いを詰めて皇帝に斬りかかる。皇帝はそれを剣で受け止め、反撃を繰り出してきた。その一撃を受け止めたが、強化されたウラヌスの攻撃より遥かに軽い。
腐っても元々は魔将のウラヌスである。普通の人間の皇帝とでは元の力が違う分、外界の力による強化にも差が出ているのだろう。
これなら勝てる。だが、皇帝を殺すことが目的ではない。救うためには――。
「ふん、考えごとか! 舐めるな!」
皇帝の流麗な剣を、全て捌く。強化されたウラヌスよりは弱いとはいえ、一瞬の油断が死を招く状況だ。
何かこの状況を打破する方法は……。
「アスター、加勢するわ!」
ステラたちが騎士を倒し、僕に加勢しようとする。
「僕より、メグの方に行って!」
アルテミスを奪取しなければ、デミウルゴスが降臨してしまう。それだけは避けなければ。皇帝は最悪……殺すしかない。
「くっ、我が剣が通じないのか……」
その後も、皇帝の剣を捌き続ける。その時、アルテミスの方からメグの声が聞こえた。
「アルテミス奪取完了! ジャミングシステム作動!」
ジャミングシステム? 何かを妨害するようだが……。
「ぐおおおおおおっ!」
皇帝がいきなり苦しみ出した。血を吐いて膝をつく。そして、暗黒のオーラが消えた。
それでも、フラフラになりながらも皇帝は立ち上がる。辺りを見回し、全てを察したような表情を浮かべた。
皇帝が懐からマイクのようなものを取り出した。そして、ある号令が帝都中に鳴り響いた。




