帝都調査
男に案内され、隠し通路を通って帝都へ急ぐ。隠し通路はかなり古い作りになっていた。帝国の兵士の姿もなく、僕たちはすんなりと帝都へ到着した。
「こっちだ。その姿では目立つ。俺のセーフハウスがあるから、そこで着替えるぞ」
僕たちが着ているのは学園の制服だった。確かに、この帝国では場違いすぎる。案内してくれた男も黒装束なので、街中に出れば相当目立つだろう。
僕たちは男のセーフハウスに上がり、各々が着替えることにした。僕たちが手渡されたのは帝国の学生服だったのだが……。
「ちょっと、何なんだいこれは? 子供服じゃないか!」
メグだけはサイズが合わなかったようで、用意されていた『子供服』を着ていた。メグにも羞恥心はあるらしく、顔を真っ赤にしている。
「ぷぷぷ……似合ってるわよ、メグ……っ」
ステラは今にも吹き出しそうだ。必死に笑いを堪えている。
「ほーらメグ、お姉ちゃんよー」
カレンは両手を広げて『お姉ちゃんモード』になっていた。
「メグ可愛い! 初等部の生徒みたーい」
美香はからかう気はないのだろうが、結果的にメグを煽る形になっている。
「くぅー、こんなのあんまりだよ! そうだ、買い物に行こう、帝都調査も兼ねて!」
もっともらしい理由を付けているが、自分に合ったサイズの制服を買いに行くつもりだな。
「ショッピングかー、いいわね」
「帝都での情報収集も兼ねましょう」
「楽しみー」
彼女たちはみんな乗り気なようだ。男はため息をつきながら肩をすくめた。
「はぁ……あまり目立つ真似はするなよ。夕方までには戻ってこい」
男の許可が出たことで、彼女たちは一気に色めき立った。
「行こう、アスターくん!」
メグに手を引かれ、僕たちは『帝都調査』という名のショッピングに向かうのだった。
***
帝都は戦時だというのに平和そのものだった。
まず僕たちは服屋へと向かった。メグが子供服のままだと可哀想だからだ。
「なんだい、ちゃんとサイズがあるじゃないか……。店員さん、これください!」
メグは目的の制服を購入し、さっそく着替えに行った。他の女子たちはというと……。
「どう、アスター。似合うかしら?」
ステラが目を輝かせながら、僕に問いかけてくる。正直、服の良し悪しはよく分からないが、ステラの燃えるような赤髪によく映える、情熱的な赤いワンピースだ。
「似合っているよ、ステラ。とっても可愛い」
「そ、そう、ありがとっ!」
彼女は顔を赤く染めて、照れくさそうに走り去ってしまった。本当に可愛い反応をしてくれる。
「アスターくん、どうかしら?」
今度はカレンだ。艶やかな黒髪に、純白のワンピースがよく映えている。
「綺麗だよ、カレン」
「ふふ、嬉しいわ」
彼女はステラと違って余裕の表情を崩さない。アースとの修行を経て、精神面で大きく成長したようだ。
「ふふん、どう遥斗!?」
お次は美香。ピンクのワンピースだ。この店にはワンピースしかないのだろうか?
「うん、似合っているよ。美香にぴったりだよ」
「ありがと、遥斗!」
彼女は嬉しそうに笑った。結局、各々がお気に入りの服を買うことができたようで、みんな満足気な顔をしていた。
***
その後、帝都内を観光……もとい調査していた僕たちは、ある店の前で足を止めた。
「これは!?」
メグが驚きの声を上げる。彼女が興味を示したのは、どこからどう見ても『カメラ』だった。
「遺物の情報によると、これは写真を撮れるんだよー」
メグがカメラの説明をみんなに始める。その遺物でも写真は撮れるはずだけどね。
「その、写真ってのは、何なの?」
ステラが当然の疑問を投げかけると、メグは店員に「これください」と言ってその場で購入してしまった。そのカメラはインスタントカメラだった。メグは不意に構えると、パシャリと僕たちを撮影した。
「ほーら、見てごらん」
メグは出来上がった写真を僕たちに見せる。
「これ、私たちじゃない! 中に封印されたの!?」
「驚きましたわ……!?」
「エモいってやつだね、遥斗!」
ステラとカレンは驚きを隠せないようだが、元の世界の文化を知っている美香だけは楽しそうだ。
「メグ、あんまり無駄遣いは……」
僕がたしなめようとすると、彼女は愛おしそうにカメラを撫でた。
「無駄じゃないよ。いつか、このカメラで撮った写真を、お家に飾るんだ……」
彼女のその表情を見て、僕は静かに決意する。
「じゃあ、この任務を無事に成功させなきゃな!」
「うん!」
彼女は満面の笑みを浮かべた。
***
「ちょっと、あんたたち。表を歩かない方がいいよ」
大通りを歩いていたら、見知らぬお婆さんに呼び止められ、警告された。
「どうしてですか?」
まさか、潜入がバレているのだろうか?
「そんな若くて可愛い子たちを連れていたら、献上品にされちまうよ」
――献上品?
その言葉を聞いた瞬間、ヤツの言葉が頭をよぎった。「みんなまとめて俺の所有物に加えてやるよ」。デミウルゴスの魔の手は、すでに帝国の民にまで及んでいるというのか……。
「献上品にされた女の子たちは、誰一人として帰ってこなかったんだ。さあ早く、どこかへ隠れるんだよ!」
お婆さんはそれだけ言い残し、周囲を警戒しながらそそくさとその場を去って行った。
デミウルゴス、どこまで醜悪な男なんだ。僕たちはお婆さんの警告に従い、表情を引き締めながら、セーフハウスへの道を急いだのだった。




