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【完結】流星の星霊術士  作者: 折尾リク
四章 最後の号令
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アストロ帝国への潜入

 僕たちは魔人国から王国に帰ろうとしていた。


「私は事後処理のため、一週間ほどしてから学園に戻るよ」


 ブラーエ先生は、一応は魔人王だ。様々な調整案件があるのだろう。


「元気でな!」

「いい経験になりましたよ」

「じゃあねー、みんなー」

「旅の安全をお祈りします」


「ありがとうございました! 師匠!」


 四人の魔将と弟子のステラたちが思い思いに別れを告げる。別れを惜しみながら、その場を去ろうとした、その時だった。


「陛下! 緊急事態です!」


 一人の魔人が、空気を一変させた。尋常ではない慌てように、僕たちは固唾をのんで見守る。


「どうした?」


「アストロ帝国が、我が国と王国に宣戦布告! 王国の国境警備隊は帝国の新兵器によって、一瞬で壊滅させられたようです!」


 魔人国と帝国は、王国を挟んだ位置にある。王国が耐えている間は魔人国には被害が及ばないが、厳重な国境警備隊を一瞬で壊滅させるほどの新兵器だ。何もしなければ、王国の降伏は時間の問題だろう。


「ふむ。四大魔将よ、今から私とともに王国へ来てもらう。同盟を組み、この事態に対処しなければ、魔人国に明日はない」


 先生は魔将たちに号令をかける。だが、魔将たちの顔は不安に満ちていた。


「十年前の遺恨が残っているのに、俺たちを信用してくれるのか、ブラーエ?」


 マーズが俯いたまま、先生に問いかける。


「もっともな意見だ。だが、この非常事態だからこそ、信頼が芽生えるかもしれない。私の生徒たちとも信頼し合えたじゃないか」


 先生の答えに、魔将たちはハッと顔を見合わせる。


「……!? そうだな、俺たちから歩み寄らなきゃ、始まんねぇな!」


 四人の魔将は、さっきまでの不安そうな顔が嘘のように晴れやかだ。


「フォーマルハウト君、君たちは帝国に潜入し、新兵器の情報を集めてきてほしい。危険な任務だが、やれるな?」


 先生の期待には応えたい。だが、ステラたちを危険に晒すことが怖かった。僕は恐る恐る、彼女たちの方を見つめた。


「アスター、私たちなら大丈夫! 師匠に鍛えてもらったのよ、足手まといにはならないわ!」


 みんなは自信に満ちあふれた表情で、力強く頷いた。


 そうだ、彼女たちは僕が守ってあげるだけの存在じゃない。肩を並べて戦えるほどの仲間なんだ。


 僕は先生を真っ直ぐ見つめ、自信をもって答えた。


「わかりました。この任務、必ず成功させます!」


 先生は僕の表情を見て、優しく微笑んだ。


 ***


 魔人国を出発し、王国に到着した後、先生と魔将たちは王城へ向かった。僕たちは帝国との国境線近くまで来ていた。


 帝国は新兵器のテストだけして、特に王国へ侵攻しているわけではなかった。それなのに、国境線はもぬけの殻といってもいいほどに人影がない。


 帝国の考えがわからず、国境線を越えられずにいた、その時だった。


「バケモノオンナ……カクゴシロ……」


 僕たちの前に、黒装束を身に纏った男が急に現れた。


 男はそのまま、手に持ったダガーで美香に襲い掛かる。


 あまりにも気配がなかったので、僕たちの反応が一瞬遅れた。


「来ないで!」


 美香の左手が光を放ち、黒装束の男が光に包まれる。


 これは、疑似奇跡――!?


「グアアアアああああ!」


 男が苦しみ出し、黒いモヤのようなものが男の身体から出て行った。


「俺は……一体……?」


 男は正気を取り戻したのか、辺りを見回した後、持っていたダガーを捨てて両手を上げた。


「お前たちは、ギルドカードシステムを破壊した連中だな……」


 黒装束のダガー使い、そして美香を「化け物女」と呼んだこの男。間違いなく世界樹の時の暗殺者だ。そして『ギルドカードシステム』、この男は帝国の手の者だろう。


「お前の目的はなんだ?」


 美香の暗殺なら容赦できない。僕は声を低くして男に問いかける。


「……頼む、皇帝を救ってくれ……っ!」


 男が声を絞り出す。あまりにも真剣な表情と、悲痛な叫びに、僕たちは動揺を隠せなかった。


「どういう意味だ?」


 救う? 侵略者である皇帝を、何故僕たちが救わなければならないんだ?


「今の皇帝は、デミウルゴスに精神を支配された傀儡だ……。正気に戻れば、この戦争は終わる」


 デミウルゴス。ウラヌスや皇帝を操り、ギルドカードシステムやクーデターが失敗したから、今度は帝国の武力で支配をしようとしているのか。


「カレン、どう思う?」


 僕はカレンの意見を求めた。一番の適任者だからだ。


「確かにデミウルゴスならやりかねませんね。罠……の可能性もありますが、この男が正気を失っていたこと、わたしたちと()()出会うことなどを考慮すると、その可能性は低いと思いますわ」


 確かに、()()デミウルゴスがこんな回りくどいことはしないだろう。


「わかった、お前のことを信じるよ。妙なマネをすれば、タダじゃおかないから」


 僕は一応、脅しをかけておいた。


「それでいい。俺は皇帝が正気を取り戻すまで、協力を惜しまない。よろしく頼む」


 男は深々と頭を下げた後、僕たちを案内した。


「こっちだ。帝都に通じる隠し通路がある。そこを通れば『アルテミス』の攻撃を受けることはない」


 男の言う『アルテミス』が帝国の新兵器なのだろう。僕たちは男に先導され、帝都への道を急ぐのだった。

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