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【完結】流星の星霊術士  作者: 折尾リク
三章 魔人国動乱
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魔将ウラヌス

 僕たちが四魔将の信頼と絆を得たと確信した、その時だった。


 突如として美香の左手が光を放ち始めた。僕たちが驚愕して美香の方を見つめると、彼女はかつての『聖女』の顔になっていた。


「これは、アマツの『()()()()』……。信仰心――、いや、皆さんの信じる心が、私の力を覚醒させたのです」


 ()()()()か。世界樹の時、アマツさんはすでに『七つの奇跡』を使い切っていたはずだ。ポラリス教団の彼女を信じる心が、世界樹を再生させたのだろうか……。


「もっとも、今の力では大した奇跡は起こせませんが……」


 美香は左手を擦りながら、申し訳なさそうにしている。


「ブラーエ先生の怪我を治すことはできない?」


 僕は美香に提案した。ウラヌスへの反撃に先生の力を借りることができれば、百人力だ。


 美香の表情がパッと明るくなる。そして、右手で胸をポンと叩いた。


「それぐらいならできそう! お願い、ブラーエ先生の怪我を治して!」


 美香の左手から光が消え、代わりに先生の足がぼんやりと光を帯びた。


「治っているな……」


 先生が驚きつつ、ぽつりと呟いた。


「よし、これで戦力アップだな!」

「にわかには、信じがたいですが……」

「綺麗な光だったわねー」

「慈愛の賜物でしょうか……」


 四魔将は、それぞれ違った反応を見せる。先生は美香に優しく微笑み「ありがとう」と一言告げてから、すぐに真剣な表情に戻った。


「さあ、これで盤面には駒が一つ増えたわけだが……マーキュリー、作戦を」


 先生の指示を受け、マーキュリーが作戦を告げる。


「魔将と弟子で組んで、王宮の周りの四方を占拠します。我々が術を使う間の護衛を頼みます。そして、術が発動するまで、フォーマルハウト君とブラーエは王宮に乗り込み、ウラヌスの足止めを。術が発動すれば、我々の勝利は確実です」


 つまり僕は、先生と組んでウラヌスと直接対峙するわけだな。責任重大だ。


 僕がプレッシャーに押しつぶされそうになっていると、先生が肩を軽く叩いた。


「作戦通りにいけば、必ず勝てる相手だ。そう気負うな」


 先生の言葉で、僕の緊張の糸が程よく解れていった。


「作戦決行は、今日の深夜。警備が手薄なうちに一気に叩くぞ!」


 マーキュリーの号令に、僕たちは強く頷いた。


 絶対に勝つ。そう心に誓って。


 ***


 深夜になり、作戦が決行された。


 僕たちは五組に分かれ、それぞれ持ち場へ急ぐ。裏路地を通り、最短距離で王宮を目指した。


 音もなく王宮に忍び込む。クーデターを行った主戦派の魔人は、マーキュリーが流した「真実の中に偽情報を混ぜた噂」によって攪乱されていた。士気も、クーデター直後とは思えないほど低い。


「行くぞ、フォーマルハウト君。この先にウラヌスがいる」


 先生に促され、僕はウラヌスの待つ、王宮の最深部に突入した。


「ネズミが紛れ込んだみたいだな……」


 こいつがウラヌス……!?


 ウラヌスはジュピターより小柄だが、爆発的な魔力を秘めていることが、空気の振動を通じてビリビリと伝わってくる。その禍々しい魔力は、あのデミウルゴスのものに酷似していた。


 ウラヌスの背後に、暗黒のオーラが立ち込めている。見続けているとそのまま呑み込まれそうなほどにどす黒い。


「よく見たら、負け犬のプルートじゃないか。わざわざ殺されに戻って来たのか?」


 ウラヌスが顔を歪めて笑い、先生を嘲笑う。


「私が何の勝算もなしに、お前に会いに来ると……?」


 先生もウラヌスを見下した目で挑発する。その瞬間、ウラヌスの顔から余裕の色が消え失せた。


「そんな目をするな! 俺は魔人王だぞ! 小僧が一人増えたくらいで、俺に勝てるとでも思っているのか!」


 先生は心底呆れた様子で、まるでゴミを見るような視線のまま言葉を続ける。


「魔人王がどこにいるんだ? 私には駄々をこねるガキしか見えないがね」


 その言葉を聞いた瞬間、激昂したウラヌスが地を蹴った。


「死ね!」


「ふっ……」


 僕と先生は、間一髪のところでウラヌスの拳を躱した。


 こいつは強い……っ! 油断したら一瞬であの世行きだ。


 僕は星霊術で身体と剣を限界まで強化した。そして、ウラヌスに一瞬で肉薄し、その喉元に一閃を放つ。


「ふっ、効かねぇよ、そんなもん!」


 ウラヌスの反撃が僕に迫る。だが、その拳は僕に届く前に、先生の放った魔法によって軌道を逸らされた。


「私とも踊ってくれないか?」


 先生は余裕綽々な表情で、さらにウラヌスを挑発する。その態度に、さらに激怒するウラヌス。


 そうだ、今はまだ倒す必要はない。結界が発動するまで、時間を稼ぐんだ。


 僕と先生は連携して、ウラヌスを翻弄する。痺れを切らしたウラヌスは上位魔法を連発して、僕たちを力任せに潰しにかかってきた。


「おいおい、王宮ごと破壊するつもりか? ウラヌス」


「うるせえ! さっさと、小僧もろとも死ね!」


 ウラヌスが放つ多種多様な魔法。その圧倒的な手数の多さに、僕たちはジリジリと消耗させられていく。


「もらった!」


 疲労し、一瞬動きの鈍った僕の眼前に、ウラヌスの拳が迫る。そして――。


「危ない!」


 ――先生が僕の盾になり、ウラヌスの拳を正面から受けた。先生はそのまま吹き飛び、壁に激しく叩きつけられる。


「先生!」


 僕の叫びに、先生は血を吐きながらも「大丈夫だ」と不敵に笑った。


「ふん、手こずらせやがって。じっくり血祭りにしてやるぜ!」


 ウラヌスは勝利を確信したのか、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。


 ――その時、王宮の四方から眩い光の柱が立ち上った。


 僕と先生が、ウラヌスに対して不敵な笑みを返す。


 さあ、反撃開始だ!

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