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【完結】流星の星霊術士  作者: 折尾リク
三章 魔人国動乱
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師弟

 ステラたち四人と、魔将四人がそれぞれ一対一で特訓を行うこととなった。


 ステラにはマーズが、メグにはマーキュリーが、カレンにはアースが、そして美香にはヴィーナスがついて特訓を開始した。


「どこからでもかかってきな!」


 マーズはよほど自信があるのか、構えることすらしない。それがステラの闘志に火をつけた。


「涼しい顔でいられるのも今のうちよ!」


 ステラは星霊術で身体能力を強化し、一気に間合いを詰めて斬撃を放つ。しかしマーズは避けようともしない。ステラの剣は、マーズの肌に触れる寸前でピタリと止まった。


「殺す気で来い……!」


 マーズが周囲の空気をビリビリと震わせるほどの殺気を放つ。ステラはたまらず距離を取り、「そういうこと……」とぽつりと呟いて、その表情を覚悟の決まった真剣なものへと変えた。


「行くわ……っ!」


 ステラが再び猛スピードで接近し、今度は首元を狙って鋭い斬撃を放つ。だが、マーズはそれを大剣でやすやすと受け流した。その瞬間、ステラは宙へと舞い、逆方向から斬りかかる。マーズは見切ったと言わんばかりに、最小限の動きでそれを躱した。


「まだまだ……っ!」


 ステラは空中で身体を一回転させ、火の中位星霊術をマーズに向けて乱射する。しかし、その猛攻すらマーズには一切当たらない。


 そして――着地したステラの喉元へ、マーズの大剣が一振りのうちに突きつけられた。


「くっ、私の負けね……」


 俯いて悔しがるステラの肩を、マーズが豪快に叩いた。


「お前の欠点は、切羽詰まると星霊術の正確さを欠くところだな! 他はなかなか良かったぜ」


 弱点を見事に指摘され、ステラは驚きを隠せない様子で思わず叫んだ。


「師匠……!」


「し、師匠……!? そんな柄じゃねぇが……まあ、まだまだ時間はあるからな。みっちり鍛えてやる、覚悟しとけ!」


「押忍、師匠!」


 ステラが燃えている。マーズに任せておけば、彼女の強さは格段に上がるだろう。


 一方、こちらはメグとマーキュリー。戦闘ではなく何やら話し合いをしているようだ。


「戦闘において、こちらの力が劣る場合、君ならどうする?」


「うーん、弱点を突くとか?」


「まあ、惜しい。正解は『相手の嫌がることを徹底的にやる』さ。そうしてできた隙を狙うんだよ」


 マーキュリーの眼鏡がキラリと光り、不敵にニヤリと笑う。


「ふふふ、戦闘では『何でもあり』ということですね、師匠!」


 メグも彼に合わせるようにニヤリと笑みを浮かべた。……ちょっと怖いな。


「師匠、か。ふっ……じゃあ、今から僕と模擬戦闘をしよう。君の実力をみせてもらうよ」


 マーキュリーに促され、二人の戦闘が始まった。何でもありの戦いという言葉に、僕は少し警戒しながらその様子を眺めていた。


 ――すると突然、背後から誰かに抱き着かれた。この柔らかい感触は……。


「遥斗!」


「美香、何をやってるんだ?」


 みんな修行の最中だぞ、ふざけている場合じゃない――と言葉が喉元まで出かかった、その時だった。


「やっぱり、女の子は好きな人と一緒にいる時が一番強くなれるのよー」


 ヴィーナスの声がした。真剣な修行の最中なのだから真面目にやってほしいのだが……。


「この子の力、凄いわよ。『愛の力』……というよりは『絆の力』ね。他者の想いを一つに束ねることができるみたい……」


 ヴィーナスが僕の耳元で囁く。そんな様子を見て、美香が頬をぷくっと膨らませた。


「ヴィーナスさん、遥斗に近づきすぎー! だめー!」


 慌ててヴィーナスを引きはがす美香。それにしても『想いを束ねる』か……。


「ははは、じゃあ今度は向こうで戦闘訓練しましょうか」


「はーい、ししょー」


 美香とヴィーナスは賑やかに離れていった。


 今度はカレンの方へ目を向ける。……なぜか、カレンとアースは抱き合っていた。


「誰かを『守りたい』と強く思う心が、より強固な結界を作り出すことができるのです」


「だんだん、掴めてきた気がします、師匠」


 結界の星霊術の特訓だろうか。思えば、僕たちもかつて結界には苦労させられた思い出がある。


 ステラやアランと行った実戦訓練。あの時は分断されて本当に大変だった。そういえば、あの後は連携訓練も結局できないままだったな。


(そうだ、今は時間があるし、タイミングを見てみんなと連携訓練をしておこう)


「みんな飲み込みが早いな。正直、悔しいくらいだよ」


 そんなことを考えていると、いつの間にかブラーエ先生が隣に来ていた。


「ブラーエ先生も、本当は教えたくてウズウズしているんじゃないですか?」


 僕が冗談めかして言うと、先生は彼女たちを優しい目で見つめた。


「……大事な教え子を盗られたみたいで、少し複雑な気分だな」


 先生はそう漏らすと、僕を見て不敵に笑った。


 ***


 激しい修行を終え、四人とも見違えるほどに成長を遂げた。魔将たちの指導は、それほどまでに有用なものだったのだ。


「そういえば先生、この魔法を見てくださいよー」


 メグが隠し通路で見つけた魔法書のメモを先生に手渡す。先生はそれを注意深く確かめた。


「これは……結界の術式だな。しかも、魔将クラスが四人がかりでようやく発動できる規模の魔法だ……」


「何の結界なんですか?」


 僕が問いかけると、先生とメグは相談し始めた。しばらくして、結論が出たようだ。


「メグ君の遺物アーティファクトの知識。そこから導き出した結論だが、これは外の世界――つまり()()からの影響を遮断する結界らしい」


()()ですか……」


 アメオ様のいるような世界のことだろうか……?


 先生は言葉を続けた。


「私の見立てでは、ウラヌスはその()()から力を得ている可能性が高い。ヤツの力が突如として跳ね上がったことにも、これなら説明がつく」


「つまり、この結界を使えば……」


 先生はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「ウラヌスにも余裕で勝てる、ということだな」


 話を聞きつけたのか、そこへ四魔将が現れた。全員、やる気に満ちあふれた表情をしている。


「これでウラヌスに一泡吹かせてやれるぜ!」

「反撃の時ですね」

「美しい勝利をこの手に掴むわ」

「魔人国に平穏が戻るのですね」


 ――頼もしい四魔将の協力と信頼を得て、ウラヌスへの反撃がいま、始まる!

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