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【完結】流星の星霊術士  作者: 折尾リク
三章 魔人国動乱
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魔人国へ

 僕たちは王都での準備を終えて、いよいよ魔人国に向けて出発した。


 ジャックおじさんに魔人国へ向かう旨を伝え、馬車の用意をしてもらった。魔人国との国境は現在、大結界によって守られているが、ウラヌスが魔人王に即位した今、それがいつまでもつかは分からない。


 僕たちは馬車に乗り込み、地図に示された隠し通路の場所へと急いだ。


 ***


「ここが、隠し通路か……」


 その洞窟は、国境近くの山中にあった。まるで廃坑の坑道のように寂れている。


「何が出てくるか分からない。みんな、注意して進もう」


 僕が注意を促すと、みんなは真剣な表情で強く頷いた。


 隠し通路の内部は、薄くぼんやりと光を放っていた。おかげで、光の星霊術を使う必要もない。しばらく進むと、小さな小部屋にたどり着いた。


「なんだろう、あれは!」


 メグが部屋に置かれていた、魔法陣が描かれた台座に興味を持ったのか、近づいて調べ始めた。


「メグは本当に元気ねー」


 ステラは少々呆れ気味だ。


「じゃあ、少し休憩しようか」


 ちょうどいい小部屋だ。王国を出発してから気を張りっぱなしだったので、少し休むことにした。


「ここは、なんのための小部屋かしら? 隠し通路に置くには不自然な台座もあるし……」


 カレンは台座に違和感を抱いているようだ。


 魔人国への撤退に使われていたと思われる、隠し通路。だとすれば……。


「分かったぞ! これは転送の魔法陣だ!」


 そんなことを考えていると、メグの思いつきが、僕の思考と重なった。


「転送の魔法陣! これを使えば、一気に魔人国にいけるの?」


 美香が期待を込めた眼差しでメグを見た。しかし、メグは首を振った。


「これは魔人専用だね……。私たちは使えないよ。魔人は身体から直接、魔力を行使できるからね」


 そう、僕たちと魔人の差はそこにある。僕たちは星霊を介して、魔力を行使しているにすぎないんだ。


「そうなんだ……、残念……」


 美香がシュンと肩を落とす。


「気を落としていても仕方がない、先に進もう!」


 僕はみんなを鼓舞して、再び奥へと進んだ。


 ***


 その後、僕たちは魔物の襲撃に遭った。


 今までの強敵と比べれば大したことはない相手だが、狭い通路での戦闘に、必要以上に消耗させられる。


「くっ、しつこいわね! 一体何体出てくるのよ!」


 ステラが愚痴をこぼしつつも、華麗な斬撃で魔物を一撃のもとに屠る。僕とステラが前衛、メグ、カレン、美香が後衛の陣形だ。


「ステラ、疲れてない?」


「平気よ。アスターこそ、へばってるんじゃないの?」


 ステラが僕に微笑みながら軽口を叩いた、その時だった。


 彼女が壁に寄り掛かった瞬間、壁がガラガラと音を立てて崩壊し、ステラはそのまま奥の空間へと倒れ込んでしまった。


「ステラ、大丈夫か!」


「あいたたた……大丈夫よ……」


 ステラは無事なようだ。それにしても、この部屋は一体……? 


 僕はステラを追って崩壊した壁の向こうへ入り、辺りを見渡した。


「ステラくん……体重が……」


 メグがニヤニヤしながらステラを茶化す。


「失礼ね! そんなに重くないわよ!」


「アスターくん、何かあったの……っ!?」


 カレンが息を呑むのも無理はなかった。そこには、目を見張るほどの金銀財宝の山があったのだ。


「おお! ステラくん、お手柄じゃないか!」


「もしかして私たち、大金持ち!?」


 メグと美香は喜びのあまりはしゃいでいる。


「何を言って……って、何よこれー!?」


 ステラも状況を把握し、驚愕のあまり叫び声を上げた。


「みんな、落ち着いて。今は魔人国の問題を解決するのが先決だよ」


 正直、金銀財宝に興味がないと言えば嘘になる。だけど、僕たちの使命を優先するべきだ。


「そうよ。それに、誰の物か分からないものを勝手に持っていくのはいけないわ!」


 カレンの正論が突き刺さる。僕は心の中で、(すみません……)と密かに反省した。


「ふーむ。おや? これはなんだい?」


 いつの間にか財宝の山に飛び込んでいたメグが、ある物を取り出した。


「本……?」


 みんなが一斉に首を傾げる。確かに、この財宝の山の中では不自然な存在だ。


「なになに……!? これ、魔法書だね! しかも、かなり高度な魔法が記されている!」


 魔法か……。僕たちには使えないからな……。


 みんながやれやれと肩を落としたが、メグだけは魔法書を食い入るように見つめていた。


「なるほど、なるほど……」


 メグは手持ちの紙を取り出すと、スラスラと何かを書き始めた。


「よし! 要点はまとめたよ! これなら持ち帰るわけじゃないから、泥棒じゃないよね、カレンくん!」


 そういうことか。カレンもやや呆れ気味に苦笑している。


「メグ、本当に凄いわね……」


「それほどでも、あるかなー!」


 メグは自信満々に胸を張った。


「こほん。それじゃ、出発しよう!」


 こうして、一騒動ありつつも、僕の号令で、改めて魔人国への道を進み出すのだった。


 ――この魔法書が、僕たちの今後を大きく左右することになるとは、この時の僕は知る由もなかった。

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