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【完結】流星の星霊術士  作者: 折尾リク
二章 北極星【ポラリス】
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ポラリスの導き

 アマツさんの肉体を乗っ取り、歪な笑みを浮かべる邪神デミウルゴス。その邪悪な視線は僕ではなく、ミカボシさんやステラたちに向けられた。


「よく見たら、美少女ばっかじゃねーか。みんなまとめて俺の所有物ハーレムに加えてやるよ。どうだ、嬉しいだろう?」


 デミウルゴスは舐め回すように、ステラたちを視線で蹂躙する。


「ふざけないで! 嬉しいわけないでしょ!」


 ステラがデミウルゴスを毅然と拒絶する。


「あーあ、傷つくわー。たかがNPCの分際でさ」


 デミウルゴスはため息をつきながら、背後にあるサーバーを見つめた。


「しょうもな。――人格書き換えプログラム、発動」


 デミウルゴスの冷たい声が響く。その瞬間、ステラとメグの瞳から光が消え、人形のように虚ろになった。 


「ステラ! メグ! どうしたんだ!?」


 大声で呼びかけるが、返事はない。


 人格書き換えプログラムのサーバーを破壊せねば。


 ――僕は星霊術を放とうとしたが、デミウルゴスの放った見えない圧力によって遮断されてしまう。


「おいおい、邪魔すんなよ。俺好みの玩具に書き換えてるんだからさ」


 デミウルゴスの下卑た笑いに、僕は激昂した。


「ふざけるな! ステラたちはお前の玩具じゃない!」


「てか、何で動けんの? もしかして『転生者』?」


 僕の怒りの叫びなど、デミウルゴスは意にも介さない。完全に舐め腐っている。


「だったら、何だ!」


 僕は星霊術で身体を強化し、一瞬で間合いを詰めてデミウルゴスに斬りかかった。だが、ヤツはすべてを見切っていると言わんばかりに、わざとらしく紙一重で避けてみせる。


「じゃあ、転生者イレギュラーか。そっちの黒髪の女もか?」


 デミウルゴスが、後方に控えるカレンを睨む。


「なんのことかしら……!?」


 カレンはデミウルゴスの言葉の意味が分からず、警戒して身構える。


 薄々気付いていたが、やはり『イレギュラー』とは転生者のことだったのか。


「面白え。俺の力とお前のチート、どっちが強いか試してみようぜ?」


 デミウルゴスが反撃に転じる。僕はギリギリのところで猛攻を避け、カウンターで火の星霊術を放った。紅蓮の炎が直撃した――しかし、煙が晴れたヤツの身体には、傷一つ付いていなかった。


「来い、フォーマルハウト!」


 僕はフォーマルハウトを召喚し、連携でデミウルゴスを叩こうとした。だが、ヤツはそれすらも許さない。


「遅いぜ!」


 ヤツの一閃。それだけで、召喚されたばかりのフォーマルハウトが一撃で消滅した。


「くっ……!」


 僕が次の攻撃に備えて身構えると、デミウルゴスは心底ガッカリした様子でため息をついた。


「てかさ、お前弱くね? チートはどうしたんだよ。まさか使えないのか?」


 図星だった。僕にはもう、あの『奇跡の力(チート)』は使えない。デミウルゴスの指摘に、僕は苦い顔を噛み締めるしかなかった。


「ハハハ、転生者イレギュラーのくせに、チートも使えないのかよ! こいつは傑作だ!」


 デミウルゴスの蔑むような高笑い。


 ――それをかき消すように、背後で凄まじい轟音が鳴り響いた。


「隙あり、ですわ!」


 デミウルゴスが僕を嘲笑う一瞬の隙を突き、カレンがサーバーを完全に破壊したのだ。それを見たヤツの顔から余裕の色が消え、初めて明確な怒りが露わになる。


「おいおい、玩具の分際で何してくれてるの? そんなに死にたいか!」


 デミウルゴスの右手から、凶悪な光弾が放たれる。カレンの反応速度では避けられない。


「危ない!」


 僕はカレンの前に飛び込み、ヤツの攻撃を正面から受け止めた。凄まじい衝撃とともに、光弾が僕の胸を貫く。


「アスターくん!」


 カレンが悲鳴が響き、辺りは激しい砂煙に包まれた。


「馬鹿なやつだぜ。でもこれで男はデリート完了。あとはこの女たちをじっくり所有物ハーレムに加えるだけだな」


 デミウルゴスが勝ち誇ったように声を上げる。


 ――その時、一筋の清廉な光が、立ち込める砂煙を吹き飛ばした。


 メグが渡してくれたお守り。それが僕の身代わりとなって砕け散った瞬間、ある『声』が流れ込んできた。


「真の絆を持ちし者よ、我の名を呼べ。我が名は――」


「――来い! 星霊王、北極星ポラリス!」


――『真の絆を持ちし者の前に、星霊王ポラリスは顕現すると言われていてね。普通の星霊には祠があるんだけど、ポラリスの祠だけは未だに見つかってないんだ!』


 かつてメグが授業で言っていた、ポラリスが祠を持たない理由。


 今なら分かる。それは――。


 北極星ポラリスは迷える者を導く光。だからこそ、ありとあらゆる場所に存在するんだ!


 全てを飲み込むような絶対的な光が、空間を白く染め上げる。


 そして――圧倒的な威風を纏い、星霊王北極星(ポラリス)が降臨した。


「な、なんでお前がそれを……っ!?」


 デミウルゴスの顔に、明確な焦りと恐怖が浮かぶ。さっきまでの余裕は完全に消え去っていた。


「行くぞ! デミウルゴス!」


「ま、待て! この女がどうなってもいいのかよ……!」


 デミウルゴスは情けない声を上げながら、アマツさんを盾にして命乞いを始めた。どこまでも醜悪な男だ。


「大丈夫よ! 私ごとやりなさい、早く!」


 アマツさんが叫ぶ。北極星ポラリスの聖なる光を受けて、一時的に邪神の支配を退けたのだろう。


「で、でも……っ!」


 僕が躊躇していると、アマツさんは必死の形相で僕を見据えた。


「考えがある、心配ないから! ここでこいつを滅ぼすのよ!」


 アマツさんの、その目を信じるしかない。


 僕は覚悟を決めた。北極星ポラリスの力を限界まで引き出し、全力で極光を纏った剣を振り下ろす。


「くっ、正気かよ! 障壁展開!」


 デミウルゴスが展開した障壁を、極光の刃はいとも容易く切り裂いた。ヤツの肉体が、眩い光に包まれていく。


「ぐおおおおおおおおっ!?」


 邪神の断末魔が響き渡る。そして、光の残滓の中から、傷だらけのアマツさんの身体が崩れ落ちた。


「アマツさん!」


 僕は必死に駆け寄る。


『人格書き換えプログラム』のサーバーは破壊した。デミウルゴスも滅ぼした。だが――僕の腕の中に倒れ込んだアマツさんの傷は、想像以上に深かった。

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