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【完結】流星の星霊術士  作者: 折尾リク
二章 北極星【ポラリス】
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実戦訓練再び!

 ギルドカードシステムが導入され、王都の風景も様変わりした。朝になり、教会の鐘が鳴る。人々は天にカードを掲げ、『ログインボーナス』を受け取る。ログインボーナスは大方の予想通り、経験値だった。


 ステータスが数値化された以上、学園もそれに応じた対応をした。実戦訓練にて魔物討伐を行い、経験値を得る。つまりは『レベリング』だ。今日はそのために、王都近郊の森に来ていた。


「まあ、王命じゃ学園長も従わざるを得ないよね」


 僕は肩をすくめた。この『システム』からは僕は、爪弾きにされているからだ。


「なに? アスターったら、自分だけ仲間外れだから拗ねてるの? うりうり」


 ステラがからかうように、僕の脇腹を突っついてくる。システムのおかげでテンションが上がっているのか、心なしかいつもより距離が近い気がする。


「ステラ様。爪弾きにされているのはアスター様だけではなく、私もですわ」


 なぜか少しムッとした様子で、アマツさんが僕とステラの間にすっと割って入った。


 ……アマツさん。いや、本当の名前は『ミカボシ』、だったか。


 昨日のエラー画面に表示された文字が脳裏をよぎる。彼女の正体や目的など、考え出せばキリがない。僕は小さく頭を振って、思考を無理やり日常のやり取りへと引き戻した。


「そこ、イチャイチャしない。もう、目を離したらすぐにイチャつくんだから」


 メグの鋭い指摘に、クラスメイト達が笑いだす。僕たちは顔を真っ赤にして俯いた。 


「えー、今日は魔物を相手に実戦訓練をしてもらうよ。最近はここの魔物も狂暴化してきているから、十分注意するように。もしピンチになったら光の星霊術で私を呼ぶようにね」


 前回の実戦訓練では、この森では弱い魔物しか出なかった。もっとも、魔人に襲われて散々だったが。


「じゃあ、三人一組で班になってねー」


 周囲を見回すと、「もちろん私と組むわよね」と言わんばかりのステラがいた。


「ステラ、また頼むよ」


「もちろんよ!」


 あと一人は……、アランがいればなぁ……


 そんなことを思っていると、僕の目の前にアマツさんがドヤ顔で立った。いかにも「私と組みましょう」という顔をして、瞳をキラキラさせている。


「アマツさんも一緒にどう?」


「アスター様、ありがとうございます。光栄ですわ」


 こうして、僕、ステラ、アマツさんで班ができた。


 それにしても……。僕は周囲を見回す。もちろん今日も聖騎士の姿はない。危険が伴う実戦訓練だというのにだ。


「じゃあ、実戦訓練開始だよ!」


 メグの号令でクラスメイト達が森の奥へと進んでいく。みんなは『経験値』のために血眼になっていた。


 ***


 しばらくして、僕たちは魔物と遭遇した。僕が索敵して見つけた魔物だ。今回も変異ホーンラビットが三匹。あの時と一緒だなと苦笑しつつも、僕は二人に問いかけた。


「どうする?」


 ステラが何か言おうとした瞬間、それを遮るようにアマツさんが自信満々に答えた。


「私の力をお見せしますわ!」


 アマツさんは前方に右手を掲げた。


 直後、彼女の手元から放たれたのは――なんと火の上位星霊術だった。しかも、まるで中位星霊術並みの驚異的な速度で展開されている。


 ……聖女様だから、てっきり光の星霊術を使うものとばかり思ってたけど!?


 呆気にとられる僕たちの前で、巨大な大火球がホーンラビットたちを直撃し、凄まじい火柱となって天空へと吹き上がった。三匹の魔物は悲鳴を上げる暇すらなく、一瞬で灰へと変わる。


だが、恐ろしいのはそこからだった。威力が規格外すぎて周囲の木々に火が燃え移り、一瞬にして辺りは赤々と燃え盛る地獄絵図と化してしまった。


「はわわわわ……」


 動揺して固まるアマツさん。そんな彼女を横目に、僕とステラは水の星霊術で必死に消化する。その甲斐あって、火は完全に消し止められた。


「本当にすみません!」


 深々と頭を下げるアマツさん。そんな彼女にステラはやれやれといった風で、肩をすくめた。


「森の中で火の星霊術なんて使ったら、火事になるに決まっているでしょ!」


「うぅ……ごめんなさい、格好いいところをみせたくて、つい……」


「それに、私の経験値がー!」


 そうだった。僕とアマツさんが倒しても、経験値にはならないはずだ。


「ごめんなさい、ごめんなさい」


 アマツさんは平謝りだ。「まあまあ、その辺で」と僕が助け船を出す。


「はあ、しょうがないわね。アマツさんのドジは今に始まったことじゃないし……」


 ステラは少々呆れ気味だったが、許してくれたようだ。


 その後、僕たちは森の中を探索したが、魔物に出会うことはなかった。クラスメイトたちに狩りつくされてしまったのだろう。


 時間になったので、メグのいる場所に戻った。そこは、クラスメイトたちの活気で溢れていた。


「お前いくつレベルアップした?」

「俺は2も上がったぜ」

「おい、俺のATKの数値見てくれよ、めちゃくちゃ上がってる!」


 クラスメイトたちは、血眼になって自分のカードを見つめ、各々の『レベリング』の成果に狂喜乱舞していた。


 謎の『数値』に一喜一憂し、ゲームのように命を狩る彼らの姿は、僕の目にはどうしようもなく異様な光景に映った。熱病に浮かされているかのような、薄気味悪さすら感じる。


「くぅー! 私も早くレベルアップしたいわ!」


 隣でステラが悔しそうに拳を握りしめる。彼女にとっても、自分の強さが視覚化されるシステムは魅力的なのだろう。


 このまま、本当に何も起きなければいいんだけれど……


 胸ポケットにある、メグから貰ったお守りにそっと触れる。


 人々の歓声の裏で、何かが確実に壊れ始めていた。僕たちの、そしてこの王国の『日常』は、帝国の手によって急激に書き換えられつつあった。

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